コラム
2013年07月29日

一票の世代間格差 -「義務投票制」の検討を!

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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7月21日、第23回参議院選挙があった。今回は初めてのネット選挙、衆参の「ねじれ解消」がなるかという関心もあり、高い投票率を期待したが、実際には全国平均で52.61%(選挙区)と過去3番目の低い水準だった。参院選は、選挙区間の「一票の格差」について、2010年の5.00倍を「違憲状態」とする最高裁判決が出ている。今回は昨年11月に成立した改正公職選挙法の「4増4減」により最大4.77倍に縮小されたが、選挙後には弁護士グループが全選挙区の「選挙無効」を求めて一斉提訴している。

「一票の格差」というと、地域間のほかに世代間の格差がある。平成22年の参院選の年齢別投票率(5歳刻み)をみると、20~24歳の33.68%、25~29歳の38.49%と20歳台が最も低く、60~64歳の73.82%、65~69歳の78.45%と60歳台をピークに年齢とともに高くなっている。このように20歳台は60歳台に比べ投票率は半分以下、さらに少子高齢化にともなう若年人口の減少と高齢人口の増加により60歳台投票者数は20歳台投票者数の実に約3倍にも上るのである。

こうして選ばれた参議院議員は、すべての世代の有権者の代表なのだろうか。今後、少子高齢化の進展とともに社会保障をはじめとする世代間の政策課題の解決がますます重要になることが予想され、将来の人口構造変化に対応する持続可能な社会を構築するための民主的意思決定システムが必要だ。

近年では、子どもの投票権を親が代行する「ドメイン投票法」や世代別に代表を選ぶ「年齢別選挙区制度」など、投票権にウェイト付けする方法も議論されている。しかし、いずれの制度も意図的に「一票の格差」を設けるものであり、法の下での平等を逸脱しないよう十分な議論が必要である。

そこで、まずは選挙で選ばれる議員が代表性を有するために、投票者全体が有権者の人口構成と相似形であることが望ましく、投票率に世代間の大きな偏りがないことが求められる。その実現に向け、国民に、投票する権利と同時に投票を義務化する「義務投票制」の導入を検討してはどうだろう。

オーストラリアでは1925年に同制度を導入以降、90~95%の高い投票率を誇っている。投票を特別の理由なく棄権した場合は、20オーストラリアドルの罰金が科されるという。ほかにもベルギーやルクセンブルグなどで導入されており、統治する政府の代表性の確保や国民の政治参加意識の高揚など利点も大きい。もちろん投票を義務付けても白票を投じることは自由であり、選挙自体を棄権することとは大きな違いがあるだろう。地域間の一票の格差是正を求めることが国民の権利であるならば、世代間の一票の格差是正のための投票行動は、国民の義務といえるのではないだろうか。




 
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2013年07月29日「研究員の眼」)

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