コラム
2013年04月01日

ジェロントロジーの教科書 ~確かな未来視点を持つために~

生活研究部 主任研究員   前田 展弘

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昨年の政権交代以降、アベノミクスに対する市場の反応や国民の政治に対する信頼度の回復傾向等をみても、日本社会全体に好転の兆しが見える。このまま堅調に経済が回復し、国民一人ひとりが生活レベルでその回復を実感できることが待たれるところである。このような期待と裏腹で、個人と社会のそれぞれに未だに払拭し切れない「将来不安」が根強くあることも確かであろう。個人にとっての長い人生の先行き、本格的な超高齢社会が訪れる未来社会の行方、いずれも「不安」ばかりを想起してしまうのは筆者だけではないと想像する。

この不安を払拭する、言い換えれば、課題の解決を誘う学問として「ジェロントロジー(高齢社会総合研究)」がある。ジェロントロジーは、長寿時代における個人の人生設計課題の解決をはかること、超高齢社会における高齢化諸課題の解決をはかることを目的とした学問である。さらに解決を実行する「実学」でもある。日本における認知は低いところであるが、近年、年を増すごとに確実にジェロントロジーに対する社会の関心と期待は高まりを見せている。筆者はジェロントロジーを専攻しているが、「ジェロントロジーを学びたい」という声を数多く耳にするようになった。

ジェロントロジーを学ぶためにはこれまで、米国の教科書を学ぶか、ジェロントロジーを扱っている一部の大学に通うかしかなかったが、ついに誰もが手軽に学べる機会ができた。日本版のジェロントロジーの教科書が完成したのである。筆者も参加する東京大学高齢社会総合研究機構が、多くの人からの要請に応える形で教科書を作成した。教科書(書籍)のタイトルは「東大がつくった高齢社会の教科書」である。

教科書は、「総論」「個人編」「社会編」の3つで構成され、総論にあたる1~3章は、個人と社会に共通して理解すべき、超高齢未来の姿、課題、そして可能性(課題解決に向けた方向性)について示されている。個人編は4~12章にわたるが、長寿時代における人生設計課題の解決に役立つ知識として、長寿時代の理想の生き方・老い方から、高齢期の活躍の仕方、住まい、移動、お金、社会資源、予防と医療、ケアと終末期の対応のことまで盛り込まれている。高齢になると自分はどうなるのか、どんなことを心がけておけばよいのか、課題にどう向き合えばよいのか等、人生設計を手助けする情報が満載である。社会編は13~20章にわたるが、超高齢社会における高齢化諸課題の解決に役立つ知識として、社会保障全般のことから、医療制度、介護・高齢者福祉、年金政策、住宅政策・まちづくり、交通・移動システム、ジェロンテクノロジー(高齢者の生活や自立を支援する技術)、高齢者と法に関することまで盛り込まれている。これからの本格的な超高齢社会に求められる社会制度・システムのあり方が示されており、行政関係者にはこれからの超高齢社会における政策立案場面で、企業関係者にはこれからの事業展開、商品サービス開発場面で、また医療・福祉等の専門職及び一般の方々にも今後の社会の方向性(可能性)を理解する意味で役立つに違いない。

個人にとって“真に長寿を喜べる人生”を設計するために、また社会にとって“安心で活力ある豊かな超高齢社会”を築いていくために、この教科書が役立つことを切に願う次第である。



ジェロントロジー教科書の構成・目次

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生活研究部   主任研究員

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

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