コラム
2013年01月29日

アベノミクスと年金財政の見通し

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   中嶋 邦夫

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去る1月28日に、来年度の政府経済見通しが閣議了解された。例年は12月20日頃に閣議了解されているので、今回は年末の政権交代の影響で1か月あまり遅れたことになる。例年であれば、閣議了解の約1か月後に閣議決定され、それと同時期に10年間の経済見通し(中長期試算)が示されている。しかし、今年の中長期試算の公表が1か月遅れの2月下旬になるかは不透明である。昨年法案が成立した消費税率の引上げと、先日公表された政府と日銀の連携によるデフレ脱却策の影響をどのように織り込むかが、中長期試算の難しい課題になるためだ。

今年の中長期試算は、いわゆるアベノミクスの今後を示すだけでなく、公的年金の財政見通しの作成に影響するため、エコノミストではない小職も強い関心を持っている。公的年金の財政見通しは、国勢調査の実施間隔に合わせて約5年に1度作成されている。前回は2009年2月に作成されており、次は2014年2月の見込みだ。最終的な財政見通しは来年1月の中長期試算をベースに作成されるだろうが、今年佳境を迎えると予想される年金改革の議論は、今年の中長期試算をベースに進むだろう。

年金財政に関連する第1の注目点は、社会保障・税一体改革の影響である。昨年の一体改革では、消費税率の引上げのほか、会社員が加入する厚生年金と公務員等が加入する共済年金との統合(いわゆる被用者年金の一元化)などが決まったが、その際、財政見通しは作成されなかった。これらの改正や消費税率の引上げが年金財政にどのような影響を与えるのか、年金財政の推計結果が注目される。

第2の注目点は、今後の年金改革議論への影響である。現在の年金制度には、年金財政を健全化するために給付を削減する仕組み(いわゆるマクロ経済スライド)が組み込まれている。しかし、受給者の年金額を過度に減らさないために、デフレ時には削減を緩和する特例が盛り込まれている。一体改革ではデフレ時にも給付を削減する改正が検討されたが、今後の検討課題として先送りされた。政府と日銀が目標に掲げる2%の物価上昇の実現可能性や達成時期をどう考えるのかによって、改正要否の判断に影響が出る可能性がある。内閣府の発表内容や、それを受けた年金改革の議論に注目したい。

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

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