コラム
2013年01月04日

日銀物価目標2%の壁、損失補てん、新たな緩和フレームが課題

経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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安倍総理は就任前から日銀に対して、消費者物価2%の物価目標を設定するように求めてきた。日銀は1月21,22日に行われる決定会合でおそらく物価目標導入の方向で結論を出すと予想されている。

日銀の物価目標設定への評価は割れる。デフレがこれだけ長期化している現状を踏まえれば、物価目標を掲げただけで人々のインフレ期待を起こすのは難しい、家電製品や自動車など国際競争にさらされている財の価格が下落している中でCPI2%上昇は現実的ではない、賃金上昇がない中で物価上昇が起これば家計の購買力がなくなってしまう、など疑問・不安が生じるのもやむをえない。

ただ筆者自身は、財政と金融の両輪を同時に発動すればデフレからの脱却の可能性は高まると思う。政府は中身のある補正・来年度予算の編成を行い、参議院選挙をにらみつつもTPPなど進めるべき構造改革や規制緩和を実施し成長力を高める必要があり、日銀も今一歩金融緩和を推進する必要がある。
   物価目標はすでに日銀は1%を掲げており、何人かの委員の中には2%くらいを目指したい気持ちはあるはずで政府と日銀にそれほど大きな差はないと感じている(目標の達成時期など金融政策の柔軟性確保には「かなり」こだわってくるだろうが)。

強力に金融緩和を進めるためには、年末から騒がれている総裁・副総裁人事に加え以下の2つの動きがどうなるのかがかぎとなる。

(1)損失補てんの問題
   日銀は物価目標と同時に、民主党と結んだアコードの再締結を行う可能性がある。その際政府・日銀のデフレ脱却に向けたアコードの本気度を測る目安として「損失補てん」がどのような取り扱いになるのか。
   日銀は財務上、独立している。すなわち日本銀行は政府から財務的に独立しており,金融政策による国債買いオペは政策委員会の主体的判断によって実施され,結果として収益は国庫に納付するものの,損失は日銀の自己責任で処理される。
   日銀が今後踏み込んだ緩和を実施するためにも、手段の独立性をより確保するためにも損失補てんについては、政府・財務省とのつめが必要だろう。
   大規模緩和を行うならば、市場が心配しないように、また日銀が損失を恐れて追加緩和に消極的になるようなことがないように、損失がでた場合はどうするのか、きちんとアコードを結んでおいたほうがいい。

(2)包括緩和の賞味期限切れ?新しい緩和の枠組み
   4月以降の新日銀総裁・副総裁体制下での議論となるだろうが、白川総裁が進めた包括緩和の次の手(緩和策)を模索するだろう。
   おそらく日銀執行部は2010年に導入した包括緩和の賞味期限がこれだけ短いものとは予想していなかったはずだろう。
   世界の中央銀行が一気に日銀を追い越すスピードで緩和を行い「無制限緩和」が当たり前の世界に突入してしまった。現在のフレームワークで基金増額を5兆円にしようが、10兆円にしようが、残念ながら世界との対比でみる金融市場においては緩和のメッセージ性が乏しくなってしまった。
   それではどのようなフレームワークが効果的なのだろうか?付利の引き下げは一回程度しか使えない手段だ。頭の整理としては、例えば、海外で行っているオープンエンド、またはマイナス金利政策、長期金利ターゲットなどが挙がる。
   オープンエンドを採用したとしても従来の国債中心のオペにするのか、またはよりリスク資産の購入に傾斜していくのかによって金融市場に与える影響は大きく異なってくるだろう。

日銀は90年後半以降ゼロ金利、量的金融緩和、包括緩和など新しい緩和の枠組みを次々と導入し続けてきた。次なる緩和策がより踏み込んだものになるかどうかも、先にあげた損失補てんの問題も制約になりそうだ。

今年の日銀の金融政策は注目点が満載だ。

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矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融、日本経済

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