2012年05月31日

自転車はどこを走るのか?~自動車優先から歩行者・自転車を優先する交通政策への転換~

社会研究部 土地・住宅政策室長   篠原 二三夫

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■見出し

1――自転車走行路の変化にみる自動車優先政策の推移
2――欧米との比較~突出した日本の自転車と歩行者の交通事故死傷者比率
3――自転車走行に関する最近の取り組みと期待
4――自転車はどこを走るのか~安全で快適な歩行と自転車利用の実現に向けた課題

■introduction

道路交通法により自転車は車道の左側を通行することになっているが、50~60年代にかけて自転車乗用中の交通事故死者数が急増したことを受け、歩道でも一定条件の下、自転車の通行が認められ、それが定着してきた感がある。しかし、最近、自転車による歩行者への事故が増加したため、児童や幼児、障害者などを除き、再び自転車は車道を走ることを原則とし、今後、歩道を走る違反自転車は、徹底した取り締まりを受けることとなる。しかし、日本の自転車乗用中死者数の交通事故総死者数に占める割合は現状でも16.2%と世界で突出した状況にあり、走る場所を車道から歩道、歩道から車道に一時的に移しても、抜本的な改善は望めない。
自転車は人々の様々な目的に利用され、保有台数は年々増加している。車道や歩道を整備するのと同様に、自転車専用道路や自転車レーンを設けるなどの抜本的な取り組みを行い、交通事故による死傷リスクを軽減させる必要がある。人口は減少に転じていることから、中長期的には、既成の市街地においても、従来では考えられなかった車道を狭めるなどの方策がとれるようになるだろう。
こうした展開につながる、注目すべき動きとして、今後の自転車通行環境整備の模範となる自転車通行環境整備のモデル地区が、2008年に全国98カ所で指定された(計画延長344.6km)。これらのモデル地区では、実際に車道を狭めて自転車専用道路や自転車専用通行帯(レーン)を整備した地区も多い。今後の整備推進に向けた様々な課題や、自転車による地域ネットワークづくりの必要性など、豊かなまちづくりに向けた貴重なデータが得られつつある。整備前後を比較すると、モデル地区内の事故件数は減少しており、特に自転車専用道路や自転車レーン整備の効果は高い。
国や地方公共団体は、これまでのモデル地区における成果や課題をフィードバックしつつ、新たなモデル地域を増やし、物理的な整備を着実に推進すべきである。加えて、自転車利用者のルールの遵守に向けた教育や違反による罰則のあり方など、ソフト面での整備をモデル地区の運用経験に基づいて行い、今こそ安全で快適な自転車利用や歩行に向けた交通政策への転換を実現すべきである。




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社会研究部   土地・住宅政策室長

篠原 二三夫 (しのはら ふみお)

研究・専門分野
土地・住宅政策、都市・地域計画、不動産市場

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