コラム
2010年03月18日

オバマ大統領に今求められること~「繰り返されるバブル」への挑戦

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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近頃は欧州や新興国経済に注目が集まっており、米国の存在感がやや薄れている感がある。ただし、今も米国は世界経済の1/4を占める最大の経済大国である。その指揮をとるのが大統領だが、現在、オバマ大統領は支持率の低下に苦しんでいる。大統領の任期は4年で2期まで務めることが出来るため、これまで多くの大統領が2期目の再選を目指してきた。米国経済の現状は未だ金融危機からの回復途上にあり、経済情勢に対する国民の目も厳しい。次期大統領選は2012年に行われるが、政策立案や成立までの仕込みの期間を考えると、オバマ大統領に残された時間はあるようでそれほどない。

米国大統領にとって経済問題は最重要課題と言える。なぜなら、経済情勢と大統領選の結果には密接な繋がりがあることを歴史が物語っているからだ。

第二次世界大戦後、米国では16回の大統領選挙が行われた。このうち、前大統領が再選を目指して敗れたケースは、フォード氏(1976年)、カーター氏(1980年)、ブッシュ(父)氏(1992年)の3回である。この3名に共通して言えることは、経済政策がうまくいかなかったことだろう。3名とも、大統領選の年またはその前年に実質経済成長率がマイナスに陥っており、国民の支持を失ってしまった。逆に、再選を果たした大統領は全員この期間にプラス成長を実現していた(大戦直後の混乱期を担ったトルーマン氏を除く)。それほど、再選には好調な経済が必要ということだ。

一方、再選された大統領については別の共通点がみられる。戦後再選を果たした大統領は、任期中に辞任したニクソン氏を除いて6名いるが、1970年代以降の3名(レーガン氏、クリントン氏、ブッシュ(子)氏)は、意図的であるかは別として、結果的にそれぞれバブル的な状況を招いてきた。

レーガン氏は減税と積極財政で経済を回復させたが、2期目には双子の赤字がプラザ合意とその後のブラックマンデーに繋がった。クリントン氏もITの発展により経済成長を実現したが、同じく2期目の終わりにITバブルが崩壊した。ブッシュ(子)氏については言うまでもないが、サブプライム・ローンと住宅バブルによって2000年代を好況に導いた後、やはり2期目にバブルが崩壊した。

「バブル崩壊に対して最も有効な対策は新たなバブルの創造である」という説があるが、70年代以降の米国の状況はこれを体現したものとも捉えられる。

就任時に約7割を誇ったオバマ大統領の支持率も最近では5割を割りこむまでに低下している。次期選挙は2012年なので、これまでの法則からすると、再選を果たすには2011年、12年をプラス成長に導かなければならない。

「歴史は繰り返す」と言われるが、バブル崩壊の負の衝撃はあまりにも大きい。バブルの発生に最大限の注意を払いつつ、景気回復策を綿密に積み上げることが必要だと思われる。オバマ大統領が、バブルとその崩壊の歴史を「Change」することに期待したい。
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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