2009年08月26日

労働力の非正規化の日韓比較 -その要因と社会への影響-

  大沢 真知子
生活研究部 准主任研究員   金 明中

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日韓両国ともに、労働力の非正規化が進展している。90年代後半から2000年にかけて日本や韓国では非正規雇用者が急激に増加しており、彼らの雇用や生活に対するセーフティーネットの提供が社会的な問題として浮上した。もっとも、日本では韓国以上に、中核に位置する壮年男性の雇用が守られている点では違いがある。しかし、変化の方向をみると、どちらの国でも中核労働者の割合が減少し、周辺に位置する労働者が増加している。
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就業形態の変化をもたらしている主要因は、経済のグローバル化により、より柔軟に活用できる労働者の需要が高まったことや、コストを削減することで競争力をつける必要性が高まったといった需要側の要因が大きく影響しているとおもわれる。これに対してどちらの国でも新規採用において正規社員の採用を抑制する形で対応している。そのために、若い世代になるほど、非正規化の影響を強く受けるようになっている。
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日韓どちらとも男性より女性の非正規労働者の割合が高いが、日本の方が男女差が大きい。日本は労働力の非正規化が女性を中心として進行して来たことに比べて、韓国では男性にも非正規化の影響が顕著である。特に若年労働者層では、女性よりも男性の方が非正規労働者の割合が高い。すなわち、IMF経済危機によって内部労働市場が完全に形成される前に一部崩壊されてしまったのが男性の非正規化を促進した一つの理由になっていると言えるだろう。
4
本論文のファインディングスが示唆するのは、企業と従業員との関係が変質していることである。両国において、企業の従業員に対する生活保障機能が急速に低下している。
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セーフティーネットから排除される労働者が増加しつつあるなかで、国民の生活をどう保障していくのか、そのための社会的連帯は可能なのか、企業の社会的責任をどう追求していったらいいのか、わたしたちひとりひとりが真剣に考える時期にきていると考える。

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