2009年05月25日

我が国企業の「資源生産性」に関する考察 -資源・環境制約下における経営管理目標と政策ターゲットとしての活用に向けて-

社会研究部 上席研究員   百嶋 徹

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最近における資源価格の乱高下や地球環境問題の深刻化など資源・環境制約下で経済成長を図るには、資源・エネルギー投入量単位当たりあるいは環境負荷量単位当たりの経済価値(付加価値など)創出を示す「資源生産性」の向上が必要条件となる。
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企業の資源生産性を算出する際に分子の経済価値には付加価値を採るのが本来望ましいが、データの制約から本稿の分析ではEBITDA(償却前営業利益)を用いた。また分母にはエネルギー使用量及びCO2排出量を取り上げた。EBITDAをエネルギー使用量あるいはCO2排出量で除して算出される資源生産性(EBITDAベースの資源生産性)は、環境性(売上高÷エネルギー使用量あるいはCO2排出量=売上高ベースの資源生産性)と経済性(EBITDA÷売上高=EBITDAマージン)の掛け算に分解でき、その両立度の状況を考察することができる。
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資源生産性の分析においては、業種・業態特性によるエネルギー集約度の格差が資源生産性に構造的格差をもたらす可能性があることに留意すべきである。例えば、エネルギー多消費型の素材産業のエネルギー集約度は加工組立産業より構造的に高く、この格差は売上高ベースの資源生産性の構造的な低さにつながる。同一業種内でも、化学セクター、電気機械セクター、自動車関連セクターなどでは、業態特性によってエネルギー集約度の構造的格差がもたらされることがある。
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本稿では、製造業を中心に産業14業種91社を分析対象として、我が国企業の資源生産性を算出・考察することを試みたが、これだけ幅広い母集団を対象とした先行研究はこれまでほとんどなかった。本稿では業種別の分析結果例として、化学セクターと電気機械セクターを取り上げた。各業種内での企業間比較を行うと、業態間の資源生産性の格差が明らかとなった。両者ともに川上に位置するほどエネルギー多消費型となる業態特性を有し、資源生産性は化学セクターでは川上に位置する総合化学企業、川中に位置する誘導品企業、川下に位置する特殊化学企業の順で低く、電気機械セクターでは電子部品企業、総合家電企業、総合電機企業の順で低かった。
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業種横断的な企業間比較では資源生産性の水準及び伸び率について考察を行った。資源生産性の水準の比較では、業種・業態特性によるエネルギー集約度の構造的格差を反映し、エネルギー集約度の相対的に低い加工組立型業種・川下業態に属する企業群が高い一方、エネルギー集約度が相対的に高い基礎素材型業種・川上業態に属する企業群が低くなっている。資源生産性の伸び率の比較では、経済性を示すEBITDAマージン伸び率が相対的に高い企業群が概ね上位に位置する一方、EBITDAマージンが大幅に低下した企業群が下位に位置する傾向がみられた。このことから、収益性など経済性を向上させることができる企業ほど、資源・環境問題への対応力も高まる傾向があることが示唆される。
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企業の資源生産性向上に向けた取組を政策的に支援する法案が4月22日に国会で可決・成立し、同月30日に公布された。この施策は、企業が製品の製造段階や輸送段階等において資源生産性の向上を図る取組と、企業が社会の資源生産性を向上する製品の市場開拓を図る取組を支援するものである。世界的な金融・経済危機を契機に、環境・エネルギー対策を景気・雇用対策の柱と位置付けたいわゆる「グリーン・ニューディール」の検討・提案が主要先進国で行われているが、我が国の資源生産性向上策は、「グリーン・ニューディール」の先駆けとなる我が国独自の政策であると言えよう。
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資源・環境制約下で我が国企業が打たれ強い経営体質を構築し、かつ「低炭素革命」を主導していくためには、企業経営の実践レベルにおいて資源生産性を経営管理のコア指標の1つとしてコントロールすることが求められる。資源投入量や環境負荷量の総量削減のみをやみくもに追求すると、経済性を犠牲にした単純な事業規模の縮小に陥りやすい。そうではなく、資源投入量や環境負荷量を抑制しつつ、経済価値を増加させる道を探るべきであり、そのための抜本的なイノベーションの創出を主導していくことが求められる。我が国企業は、資源生産性を経営管理指標としてコントロールしつつ、資源生産性を抜本的に向上させる経営戦略を推進するために、資源生産性の向上支援に関わる制度インフラを積極的に活用していくことが望まれる。

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社会研究部   上席研究員

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、産業立地、地域クラスター、イノベーション、企業不動産(CRE)、環境経営・CSR

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