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日本の医療サービスは、世界でも数少ない、国民皆保険制度というシステムを通じて提供されている。初診から治療の完了にいたる一連の診療のなかで、保険診療と保険外診療(自由診療)を併用する、いわゆる混合診療は、わが国では原則として認められていない。混合診療を行った場合には、保険診療に該当する部分も含めすべてが自由診療扱いになり、全額自己負担となる(注1)。また、厚生労働省が発表する「国民医療費」に含まれるのは、保険診療のみで、自由診療の数字は含まれていない。他方、世界に目を向けると、混合診療を認めている国が存在する。例えば、医療費大国アメリカでは、国民医療費という場合、自由診療のみならず、病院建設費・研究費などを含む幅広い概念となっている。
こうした中、OECDは、国ごとの違いを一定程度補正した上で、毎年、各国の「保健医療費」を公表している。わが国の「国民医療費」と比較すると、自由診療部分を含むほか、非処方薬、公衆衛生費、施設管理運営費、研究開発費なども計上している。
下図は、OECDデータにより先進主要国とフィンランド・韓国の保健医療費の財源負担の内訳をみたものである。保健医療費を誰が負担するかは、最終的には、家計(個人負担に民間保険を加えたもの)・企業・国(公的財源)の3者の分担でしかない。わが国は、福祉大国であるフィンランド並みに、民間保険の負担割合が低く、また家計負担という観点でみると、フィンランドよりも更に低く、取り上げた国の中でも最も低い水準にある。
必要な医療を医療費負担を気にすることなく受診できることは望ましい。一方で、家計負担が低いことで、飲まない薬を受け取ったり、安易に医者にかかり、結果医療現場の負荷や財政負担を増大させていることも否定できない。現役世代の保険料負担引き上げ、国税(消費税)の医療費への充当は避けられない状況にあるが、若い時から健康の維持・向上に努め、本当に必要な場合に医療を受診するといった、医療に対する国民のモラル向上も必要ではないか。
公的財源確保の議論だけでなく、今後、個人負担や民間保険の役割増加など、冷静に考えてみる必要がありそうである。
丸尾 美奈子
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