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■見出し
1. 全国主要都市の賃貸オフィス市場動向
2. 地方投資市場の現状と評価のポイント
■要旨
全国主要都市の賃貸オフィス市場では、順調な景気回復を背景に需要が増加し、空室率の低下が著しい。東京、名古屋などを中心に賃料の上昇傾向も強まってきた。都市や地域によって回復度合いに差があるものの、景気拡大の持続や新規供給の抑制から、2006年度末にかけて、札幌を除き、全国的に市況回復がより鮮明になると予想される。ただし、交通利便性、床利用効率、安全性などビルに対するテナントの要求は高度化しており、どの都市においても、立地や規模、築年数などによる空室率や賃料水準の差は厳然と残るであろう。
また、日本の経済活動の中心で安定性と成長性を兼ね備えた東京に対し、支店経済性の強い地方都市は市況の改善や市場の成長に限界があるため、今後も、東京都心のAクラスビルを頂点とする市場の階層構造に大きな変化はない。より長期的にみれば、少子・高齢化によるオフィス人口減少度合いが都市により異なるため、東京の優位は揺るがないとしても、他の大都市間の優劣が変化する可能性がある。
J-REITや私募ファンドによる不動産投資は、東京圏が圧倒的に多いものの全国主要都市にも拡大しており、2兆円以上の内外の資金が地方の不動産に投下されたと推測される。このような不動産投資市場の拡大が大都市中心商業地の地価を上昇させているが、東京よりはるかに市場規模の小さい地方都市に集中的な資金流入が続けば、都市の経済成長力や物件の収益価値を無視した取引が増加し、局地的なバブルの様相を呈する可能性がある点に注意が必要であろう。
地方都市のオフィスビルへの長期投資を考える場合、今後の景気後退局面も視野に入れつつ、(1)不動産投資市場が小規模で流動性が低く、出口戦略の難度が高い、(2)市場の成長性が低い、(3)市場や物件に関する情報量が少ない、(4)収益の変動リスクが大きい、(5)投資適格物件が少ないなど、地方市場の特徴をよく理解した上で慎重に検討すべきである。
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松村 徹
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