- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 財政・税制 >
- 日本における財政再建の効果 -公共投資削減におけるストック面の影響を中心に-
1.
2001年5月の小泉内閣成立以降、財政再建のペースは遅れているものの、一般歳出ベースでみて社会保障関係費を除く全ての費目で歳出削減が実施されている。特に、公共投資は名目GDP比(公的固定資本形成ベース)で1955年以降最低水準にまで削減されている。一方、歳入面では税収不足を公債金が補う形で進められており、形の上では「増税なき財政再建」が進められている。
2.
財政再建にかかるフローの効果については、多くの先行研究がみられるものの、ストック面への効果については、考慮されることは多くない。社会資本ストックの蓄積は、その存在自体が社会的な厚生を向上させるほか、民間資本の生産力を上昇させ、経済活動の生産性を向上させることにつながる。経済の生産性の伸びと社会資本ストックの伸びには正の相関関係が認められ、米国の1970年代における経済成長の低下の原因は、社会資本ストックの増加率が低下し、その平均年齢(Vintage)が上昇したことにあると指摘されている。
3.
公共投資の抑制が続くとすれば、日本の社会資本ストックの伸びは2010年度にかけて1%台まで低下し、Vintage は2000年度14.29年から2010年度16.40年へ上昇することが想定される。この結果、社会資本ストックは、平均耐用年数でみて40%超を経過した資産となり、各年の投資額に占める維持更新のための投資は2010年度には投資額全体の3割程度に達する見込みである。
4.新規の公共投資を増加させることは将来世代の資産を増やすと同時に、一般的に指摘される増税などの負担とは異なった負担も増加させることを意味する。既存の社会資本ストックの維持更新のための費用負担である。今後の課題として、維持可能な社会資本ストックの量について試算することが必要である。財政赤字や国債の発行額などフローの財政変数については、その維持可能性が議論されているが、社会資本ストックの維持可能性はこれまで考慮されることはほとんどない。高齢社会を迎え、維持可能な最適規模に関する社会資本ストックの分析が必要であると考えられる。
日本大学経済学部教授 小巻 泰之
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年05月07日
今週のレポート・コラムまとめ【4/30-5/2発行分】 -
2024年05月02日
為替介入再開、既に連発か?~状況の整理と今後の注目ポイント -
2024年05月02日
米FOMC(24年5月)-予想通り、6会合連続で政策金利を据え置き。量的引締めペースの減速を決定 -
2024年05月01日
ユーロ圏消費者物価(24年4月)-総合指数は横ばい、コア指数は低下 -
2024年05月01日
ユーロ圏GDP(2024年1-3月期)-前期比0.3%、プラス成長に転じる
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【日本における財政再建の効果 -公共投資削減におけるストック面の影響を中心に-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
日本における財政再建の効果 -公共投資削減におけるストック面の影響を中心に-のレポート Topへ