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2025年10月10日

若者消費の現在地(4)推し活が映し出す、複層的な消費の姿~データで読み解く20代の消費行動

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 東京圏に住む20代の6割超が推し活経験を持ち、性別やライフステージによって経験率に差はあるものの、個人年収600万円未満では大きな違いは見られない。月々の支出額は千円未満から3万円以上まで幅広く分布し、約半数が月5千円未満、約3割が月1万円以上を投じている。経済的条件に大きく左右されず、それぞれの状況に応じて柔軟に関わることができる点が特徴である。
     
  • 推し活による影響は多面的であり、出費が増える一方で、趣味の広がりや新しい友人づくり、自己肯定感の向上といったポジティブな変化が多く見られた。支出額が多いほど影響は大きく、高額層では自己表現、人間関係、時間の使い方にまで変化が及ぶ。推し活は単なる娯楽消費にとどまらず、物質的な豊かさとは異なる価値を消費行動に組み込む、若者消費の新しい局面を示している。
     
  • 本シリーズを通じて明らかになったのは、若者が状況に応じてメリハリをつけ、選択スタイルを柔軟に使い分けながら、主体的に消費対象を選んでいる姿である。推し活はこれらすべての要素を併せ持つ存在であり、自分で選ぶ主体性とコミュニティを通じた社会性の両面を持つ。若者は限られた資源の中で自分らしい生き方を見出そうとしており、推し活への支出は生活を充実させるための投資と捉える視点が重要である。


■目次

1――はじめに~推し活が映し出す、若者消費の複層性
2――推し活経験の有無~東京圏20代の6割超が経験あり、女性・未婚・20代前半で多い傾向
3――推し活費の水準~半数は月5千円未満、3割は1万円以上
4――推し活の価値観・ライフスタイルへの影響~出費増、楽しみの拡張、人間関係の変化
5――おわりに~若者消費の現在地が示すもの

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月10日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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