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コラム
2025年10月08日

国内株式投信の売り一巡か?~2025年9月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式ファンドへの流入が2カ月連続増加

2025年9月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入を見ると、9月は外国株式ファンドに9,600億円の資金流入があった【図表1】。2カ月連続の増加となり、1兆円には届かなかったが5月以来の9,000億円越えとなった。
 
なお、9月はラップ口座の販売が好調だったとみられ、SMA専用ファンド(紺棒)への資金流入が目立った。外国株式ファンドもSMA専用のものに800億円の資金流入があり、押し上げた。ただ、一般販売されているものに限っても、外国株式ファンドの資金流入は8月から1,700億円増加しており、販売が好調であった。
【図表1】 2025年9月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
一般販売されている外国株式ファンドでは、インデックス型に5,800億円、アクティブ型に2,900億円と、ともに8月の5,300億円、1,700億円から増加した。特に8月からの増加額がインデックス型は500億円だったのに対し、アクティブ型は1,200億円と顕著であった。9月はインデックス型、アクティブ型ともに全体的に増加したというより、一部のファンドへの資金流入増加が顕著であった。

一部の外国株式ファンドの資金流入が加速

インデックス型では、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」いわゆるオルカンが2,000億円超の資金流入があり、8月から300億円以上も増加した【図表2】。オルカンの純流入が2,000億円を超えたのは、1月の3,800億円以来のことであった。加えて「iFreeNEXT FANG+インデックス」も増加が顕著で、この2ファンド(青太字)だけで8月から500億円以上の増加と、ほぼインデックス型の増加分に達した【図表2】。アクティブ型も9月新設の2ファンドを含む4ファンド(赤太字)合計で8月から1,100億円増加しており、アクティブ型の増加分の大半はこの4ファンドで説明ができる。
 
外国株式の投資環境に目を向けると、9月も米国を中心に世界的に株価が上昇し、さらに8月と異なり月初に1ドル147円前後だったのが月末には149円に迫るなど円安が進んだ。インデックス型、アクティブ型問わず基準価額が大きく上昇する外国株式ファンドが8月以上に多かった。
 
つまり、9月は外国株式ファンドの売却が8月よりも増加してもおかしくない状況であったといえる。それでも資金流入が加速していたことを踏まえると、流入増加こそ一部のファンドに限られたが、資金の動きを見る限りでは外国株式ファンドの売却増加は限定的かつ販売も引き続き堅調だった様子である。
【図表2】 2025年9月の推計純流入ランキング

米国株式ファンドに限ると資金流入は鈍く

ただし、9月も米国株式ファンドに限ると販売が復調している様子が乏しかった。インデックス型では、米国株式ものである「iFreeNEXT FANG+インデックス」が9月に売れたものの、「eMAXIS Slimシリーズ」ではオルカンと比べて米国株式(S&P500)の勢いは乏しい。

また、一般販売されているアクティブ型の外国株式ファンドは、9月も新設された「モルガン・スタンレー 米国株式インサイト戦略ファンド(為替ヘッジなし)」を除外すると流出額が200億円弱と少額ではあるが、3カ月連続の売却超過となっている。米国株式については、高パフォーマンスが続いているものの過熱感も懸念されている。そのため、一部で買い付けを控えるもしくは売却する動きが続いていることがうかがえる。

国内株式ファンドも長期保有の兆しか?

国内株式ファンドについても売却超過となっていたが、5月以降1,000億円を超えていた流出額が一般販売されているものに限っても9月は200億円と大幅に鈍化した。一般販売されている国内株式の中では、アクティブ型が200億円の資金流出と8月の900億円から減少し、インデックス型は資金流出が20億円未満と8月の400億円からほぼ止まった。
 
9月は月初、月末に国内株式がやや調整しており、そのタイミングで国内株式ファンドに押し目買いに伴う資金流入があった。それに加えて、9月中頃に株価が大きく上昇する中、売却超過となっていたが、株価の上昇が大きかった割には流出額が膨らまなかった。元々、インデックス型は6月、アクティブ型は7月をピークに流出額が鈍化してきていたこともあり、国内株式ファンドの売却がそろそろ一巡しつつあるのかもしれない。
 
ここで、一般販売されている国内株式ファンドの資金流出入を新NISAが始まった2024年から累積すると、これだけ国内株式が上昇したにも関わらず、インデックス型は6,700億円、アクティブ型は1,700億円と、ともに流入超過になっている。特にインデックス型は、2025年からで見ても9月末でも1,000億円と小規模ではあるが流入超過が続いている。

インデックス型の国内株式ファンドは2024年以降でも単月でみると、国内株式が上昇すれば流出超過に、下落すれば流入超過になりやすく、相変わらず逆張り投資の傾向が強い。ただ、累積でみると流入超過となっていることを踏まえると、下落した時の買付ほどは上昇時の売却が膨らんでないことが分かる。新NISAの影響もあってか、インデックス型の国内株式ファンドでも長期投資する人が増えている可能性がある。8月、9月と日経平均株価やTOPIXが史上最高値を連日更新する中での資金流出の鈍化は、そのことを象徴するような出来事だったといえよう。
【図表3】 一般販売されている国内株式ファンドの2024年からの累積資金流出入

ファンド全体だと3月以来の規模に

これまで見てきた株式ファンド以外に目を向けても、バランス型ファンドや最近、高パフォーマンスな金関連ファンド(【図表2】【図表4】黄太字、なお【図表1】だと「その他」に分類)の一部なども9月は資金流入が増加した。外国債券ファンドでも、300億円の資金を集めた転換社債ファンドが新設されたこともあり、一般販売されているものに限っても9月に資金流入に転じた。
 
さらに、冒頭でも触れたように9月はラップ口座の販売が好調だったとみられ、SMA専用ファンド全体に2,500億円の資金流入があり、8月の100億円から急増した。9月はSMA専用ファンドの底上げもあり、内外REITファンドこそ販売が冴えなかったが、ファンド全体で見ても1兆3,200億円の資金流入と8月から6,000億円増加し、3月以来の規模にまで膨らんだ。
【図表4】 2025年9月の高パフォーマンス・ランキング

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月08日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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