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- 株主資本コストからみた米国株式~足元の過熱感の実態は?~
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2025年10月07日
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1――はじめに
その一方で、米国株式は過熱感も懸念され続けてきた。実際に2023年以降、米国企業の業績拡大が続き、S&P500種株価指数の予想EPSも上昇基調が続いていたが、それ以上に株価が上昇していたため、予想PERの水準が切りあがっている【図表2】。
S&P500種株価指数の予想PERは、2022年に一時16倍を下回っていたが、足元では23倍を超えている。現時点では来期2026年14%、さらに再来期2027年13%の大幅増益が期待されているが、足元の2027年の予想EPSをもとに予想PERを計算しても、20倍程度までしか下がらない状況である。
コロナ・ショック後の2020年から2021年にかけても20倍台を超えていたが、当時は米長期金利が2%未満の低金利下にあり、低金利によって高PERが許容されていた面がある。そのことを踏まえると、足元では2020年から2021年以上に割高感が意識されやすいといえる。
そこで本稿では、このように過熱感が懸念されていながらも高パフォーマンスが続いている米国株式の株価に織り込まれている株主資本コスト(以後、株主を省略して単に資本コストと表記)について確認し、今後の動向を考えていく。
S&P500種株価指数の予想PERは、2022年に一時16倍を下回っていたが、足元では23倍を超えている。現時点では来期2026年14%、さらに再来期2027年13%の大幅増益が期待されているが、足元の2027年の予想EPSをもとに予想PERを計算しても、20倍程度までしか下がらない状況である。
コロナ・ショック後の2020年から2021年にかけても20倍台を超えていたが、当時は米長期金利が2%未満の低金利下にあり、低金利によって高PERが許容されていた面がある。そのことを踏まえると、足元では2020年から2021年以上に割高感が意識されやすいといえる。
そこで本稿では、このように過熱感が懸念されていながらも高パフォーマンスが続いている米国株式の株価に織り込まれている株主資本コスト(以後、株主を省略して単に資本コストと表記)について確認し、今後の動向を考えていく。
3――推計結果と考察
S&P500種株価指数に織り込まれている資本コスト(【図表5】紺線)は、やはり2022年下旬以降は先ほど確認した益回りと同様に低下基調であった。ただし、益回りは2012年以降で最も低水準になっていたが、資本コストの水準は時系列にみて足元でもそこまで低水準になっていなかった。
これは株価に織り込まれている成長率(【図表5】緑線)が、2018年以降は上昇していたためである。それまで4%程度だったのが2018年頃に5%に上昇し、さらにコロナ禍(ハイライト部分:2020年2月から2021年2月)を経て、2021年以降は6-7%ともう一段上昇している。つまり、米国株式は成長期待を考慮した資本コストで見ると、予想PERや益回りほどは過熱感がないことが分かる。
これは株価に織り込まれている成長率(【図表5】緑線)が、2018年以降は上昇していたためである。それまで4%程度だったのが2018年頃に5%に上昇し、さらにコロナ禍(ハイライト部分:2020年2月から2021年2月)を経て、2021年以降は6-7%ともう一段上昇している。つまり、米国株式は成長期待を考慮した資本コストで見ると、予想PERや益回りほどは過熱感がないことが分かる。
4――最後に
ただし、2025年に入ってから資本コストの低下が顕著で、資本コストと長期金利のスプレッドが5%を下回ってきている。米国では9月のFOMCで実際に利下げが実施されるなど、利下げ期待が高まっており、今後の利下げやそれに伴う長期金利の低下を見越して株価が上昇したため、スプレッドが縮小した面が大きいと思われる。
その一方で、米国株式に織り込まれた成長率は2025年に入ってから低下し、株価が上昇に転じた4月以降も上昇していない。成長期待が高まらない中で株価が上昇したため、米国株式の割高感が高まっているようにも見ることができる。
米国株式の利益成長期待は、S&P500種株価指数のEPS長期成長予想やサステナブル成長率の推移を見ても2018年以降、特に2021年以降に一段と高まっている傾向があることがうかがえる【図表7】。しかし、実際の予想増益率(【図表7】面グラフ)はEPS長期成長予想やサステナブル成長率より劣後している場面が多く、米国株式全体だと必ずしもその期待に応えられているとはいえない状況である。2021年以降、定常的に米国株式の利益成長力が高まっているのかは、現時点で分かりかねる。
そのため、再び2024年以前のように利益成長期待が高まるのか、それとも落ち着いてきてしまうのか注目される。このまま成長期待の低下と株価の上昇という乖離が続けば、足元の米国株式は振り返ってみたときにプチ・バブルであったといわれることになるかもしれない。
その一方で、米国株式に織り込まれた成長率は2025年に入ってから低下し、株価が上昇に転じた4月以降も上昇していない。成長期待が高まらない中で株価が上昇したため、米国株式の割高感が高まっているようにも見ることができる。
米国株式の利益成長期待は、S&P500種株価指数のEPS長期成長予想やサステナブル成長率の推移を見ても2018年以降、特に2021年以降に一段と高まっている傾向があることがうかがえる【図表7】。しかし、実際の予想増益率(【図表7】面グラフ)はEPS長期成長予想やサステナブル成長率より劣後している場面が多く、米国株式全体だと必ずしもその期待に応えられているとはいえない状況である。2021年以降、定常的に米国株式の利益成長力が高まっているのかは、現時点で分かりかねる。
そのため、再び2024年以前のように利益成長期待が高まるのか、それとも落ち着いてきてしまうのか注目される。このまま成長期待の低下と株価の上昇という乖離が続けば、足元の米国株式は振り返ってみたときにプチ・バブルであったといわれることになるかもしれない。
いずれにしても、米国株式は米国での利下げやそれに伴う長期金利の低下による下支えが、今後も続くことが見込まれる。ただ、成長期待が再び高まってこないと割高感も意識され、長期金利が低下している割には株価が上昇しない、上値の重い展開が続く可能性もあるだろう。
(2025年10月07日「基礎研レポート」)

03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
前山 裕亮のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/10/07 | 株主資本コストからみた米国株式~足元の過熱感の実態は?~ | 前山 裕亮 | 基礎研レポート |
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