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2025年07月25日
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(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 市場金利は前回の会合以降、特に償還期限が長いものが上昇した
- 同時に我々の過去の利下げは引き続き企業の借入コストを低下させている
- 企業向け新規の貸出金利は4月の3.8%から5月には3.7%に低下した
- 市場ベースでの負債発行コストもまた3.6%に低下した
- 5月の企業向けの貸出は2.5%に鈍化、企業の負債発行は3.4%に上昇した
- ユーロ圏の最新の銀行貸出調査によれば、4-6月期の企業向けの貸出基準は総じて変化がなかった
- 銀行が顧客の直面する経済的リスクを懸念して信用基準を厳格化する一方、貸出機関間での競争激化がこれを概ね相殺した
- 一方、金利の低下を受けて企業の信用需要は緩やかに増加したが、依然として世界的な不確実性と貿易の緊張を背景に慎重姿勢は維持された
- 平均の新規住宅ローン金利は年初から概ね変化がなく、5月は3.3%だった
- 住宅ローン貸出伸び率は、需要が大きく上昇する一方で信用基準が4-6月期に緩やかに厳格化されるなか、5月は2.0%に上昇した
- 我々の過去の利下げは引き続き企業の借入コストを低下させている
- 企業向けの新規の貸出金利は平均で3月の3.9%から4月には3.8%に低下した
- 市場ベースでの企業の負債発行コストは3.7%で変化がなかった
- 企業向けの銀行貸出は引き続き緩やかに上昇しており、3月の2.4%から4月には2.6%に上昇する一方、社債発行は停滞した
- 新規の住宅ローン化示唆し金利は4月平均3.3%と横ばいで、住宅ローン貸出伸び率は1.9%に上昇した
(結論)
- (声明文冒頭に記載の決定に再言及)
(質疑応答(趣旨))
- ユーロの為替レートに関する質問。同僚のデギンドス副総裁は、シントラで1.20を超える水準は複雑になる可能性があるとした。あなたの評価は。いつから複雑になりユーロ高になるデフレ効果が懸念されるようになるのか
- 我々は為替レートを目標にしていない
- 為替レートはインフレ見通しに関係するため、注視している
- 副総裁は「我々はインフレ見通しに為替レートを考慮する」と最近述べており、為替レートに関するメッセージは完全に一致している
- 関税について。米国との15%の取引はベースラインとして考慮されているのか。この取引はユーロ圏の成長に十分となる不確実性の軽減となるのか
- 昨日の新聞で特定の終結に近づいているとの報道があったが、近づいているのであって、終結に至ったわけではない
- 本日の決定の基準となるベースラインは、我々の6月のベースラインであり変わっていない
- しかし、日々のニュースにも対応している
- 解決が早ければ早いほど、我々が対処しなければならない不確実性は軽減され、我々を含むすべての経済主体に歓迎されるだろう
- 反応関数について。将来の決定に関してインフレ見通しを取り巻くリスクに基づくことを追加した。この追加の必要性について説明して欲しい
- 戦略見直しを実施した結果、リスク評価を拡充、強化し、おそらくさらに焦点をあてる必要があると判断された
- 不確実性が高い時期のため、強化されたリスク評価に焦点をあてる非常に良いタイミングであった
- 声明に関する質問。今までの経済の強靭性を強調している。この強靭性は、6月のベースラインシナリオに織り込まれている秋の追加利下げの必要性を軽減するのか
- 1-3月期の驚くべき0.6%成長は、部分的にはアイルランドが貢献している
- しかし、外れ値の多いアイルランドを除いても、消費や投資が増加している
- 今後数か月で明らかになる要素が多いため、経済に与える影響を評価するために、我々の現在の仕事は、今後何が起こるか見て、第一にまず待つことである
- 目標を下回るリスクについて。あなたの同僚やエコノミストの見解では、下振れの議論が強まっているように思われる。今回の議論で、これに関するものはあったか。目標を下回るリスクはここ6週間で増加したか
- 我々は最新データで2%の中期目標にあることを思い出してほしい
- 実際の見通しでは、26年にはベース効果などの結果によって下振れするとされている
- しかし、言及された同僚の発言と同様、我々はわずかな乖離で動くつもりはない
- 下振れを特に懸念する総裁は、2・3人いる
- 重要なのは中期の目標である
- 6週間前に公表されたシナリオ、特により悲観的なものについて、これは報復措置が講じられた場合でも全体ではディスインフレであると示唆されていたと見られる。この点について理事会でコンセンサスがあるか、あるいはディスインフレではなくインフレになりそうだという議論が依然としてあるか
- インフレ圧力かディスインフレ圧力かという最終的なネットの結果は現時点では確定できない
- 分析し、考慮すべき影響の非常に複雑な組み合わせになるためである
- 不確実性が多くあり、それらは認識している
- 我々は注視し、考慮し、できる限りモデル化するが、現時点ではどの要因が優勢になるのか、結論はでていない
- 関税と金利において、FRBでは関税が無ければ利下げしただろう点について。パウエル議長はシントラで「関税のために据え置いた」と発言した。ECBの本日の決定は関税があるから据え置いているのか説明して欲しい
- 私の同僚であり友人であり、尊敬するセントラルバンカーが据え置きのために用いた表現は適切だと考える
- ECBも金利を据え置き、様子見(wait-and-watch)の状況にある
- 現在の状況下でどの程度早期に不確実性が解消されるのかの判断は分かれている
- 不確実性の大部分は貿易、関税、非関税障壁により引き起こされている
- トランプ大統領はドルペッグの決済用ステーブルコインに関するGENIUS法の成立について、米国の国際金融での優位性を確固たるものにし、金融技術の偉大な革命であり、ドルの地位を強固にするものとした。しかし、金融政策の面では、ステーブルコインが成長して数兆にもなると、ステーブルコインをペッグするために米国の財務省短期証券(Tビル)が多く使われるために、短期金利に影響するのではないかという懸念もある。そのため、金融政策や中銀に及ぼす影響への大きな議論となる。金融政策手段のこうした革新について、これらの懸念を共有しているか教えて欲しい
- 第一のポイントは、法的枠組みにより、これらの手段のリスク、恩恵、見込みを理解する手助けになるということ
- 第二のポイントは、結果がどうなるかについて明確で良い理解を引き出すにはまだ早いということ
- 第三のポイントは、我々は欧州でどうするかに焦点をあてなければいけないということ
- 我々は域内において、我々の通貨を保護、保持するために必要な措置をすべて講じる必要がある
- 我々はデジタルユーロの開発に焦点をあてており、できる限り短期間でデジタル形態の主権通貨を提供できるようできることを行っている
- シュナーベル氏の数週間前のインタビューについて。彼女はさらなる利下げのハードルが高いと述べた。この見解に同意するか、異なる見解を持っているか
- それぞれの参加者が自身の好みと見解を持っている
- この機関の美点は多様な見解を許容し、その見解の表現も許容することにある
- 私の総裁としての仕事は理事会メンバーのすべての見解を集約し、職員の仕事、見通し、提案をもとに可能な限り多数派の見解として引き出すことである
- 今回の金利据え置き決定は全会一致で決定された
- また、声明文におけるリスク評価についてもメンバー間で広く共有された
- アナリストが指摘するように、早期に貿易の緊張が解消された場合、ユーロ圏で問題となるのは次の利下げの時期よりも、次の利上げの時期になるということについて。現在、この見方は適切だと考えるか、それとも不適切か
- 貿易の緊張が早期に解消されれば、消費者、投資家、企業の意思決定の重しになっていた不確実性が一部解消される
- それは関税の結果をモデル化し、予想する助けにもなる
- 異なる動きにつながるかは、未来が示すことであり、我々は何も排除しない
- 準備預金が過剰な状況から十分な状況に低下するまで1年を切っている。銀行が準備預金の減少に対処できる状況を喜ばしく思っているか。ECBは銀行間市場にストレスの兆しが生じた際の手段を備えていることを喜ばしく思っているか
- 流動性に関しては、まず、システム内に依然として十分な量がある
- 2兆ユーロを超えており、流動性が限定的という表現は適切ではないと考えている
- 戦略見直しについて。何人かのアナリストは量的緩和策(QE)のハードルが増したと述べている。これに同意するか。これは来年の運用枠組み(operational framework)の評価に影響するか
- 質問が先走りすぎているので、答えられない
- 運用枠組みの見直しは26年であり、その時に対応する
- 欧州議会でデジタルユーロを担当する欧州人民党(EPP)の法律家であるナバロッテ氏は今週のポリティコ紙へのインタビューでデジタルユーロは銀行に行動を迫る核の脅威だと述べた。この意見に同意するか
- 私のかなり単純なデジタルユーロの理解は、デジタルの現金であるということだ
- 完全に一致している訳ではないが、それが本質である
- デジタルの現金が核爆弾だと主張するのは、少し大げさだと思う
- 時期は異なるが市場はさらに1回の利下げを予想しており、特に6月の見通しでも前提になっている点についてどう考えるか
- 市場は市場がすべきことをし、我々は我々がすべきことを行う
- 我々は今後数か月で発生する荒波やリスクに対処するための良い位置にいる
- 我々の共通の決意は、インフレの2%の中期目標を維持すること、会合ごとに決定すること、データに依存することであり、前もって決まった経路はない
- 市場が可能性のある金利経路の見通しを望んでいることは理解するが、現在の状況下ではそれは不可能である
- 我々は様子見をする良い位置にいる
(2025年07月25日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
高山 武士のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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