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2025年07月08日
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2.日銀金融政策(6月)
(日銀)現状維持+国債買入れ減額の継続を決定
日銀は6月16日~17日に開催した金融政策決定会合(MPM)において、金融政策の現状維持を決定した。これまで同様、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%程度で推移するように促すこととした(全員一致での決定)。
また、当初の予定通り、長期国債買入れ減額についての中間評価を実施し、(1)2026 年1~3月までは原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ、(2)2026 年4~6月以降は原則として毎四半期 2,000 億円程度ずつ減額し、2027年1~3月に2兆円程度とする計画を決定した(賛成8反対1:田村委員は毎四半期4000億円程度ずつ減額する議案を提出し、反対多数で否決された)。ちなみに、(1)は昨年7月に決定された計画通りの内容、(2)は今回新たに決定された内容ということになる。
この結果、長期国債買入れ減額は、来年4月以降減額ペースを半分に落としたうえで継続されることとなる。
会合後の総裁会見では、植田総裁が今後の金融政策運営について、「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような(日銀の想定する)経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」、「そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要」と、従来同様、利上げを模索しつつ、慎重に判断していく姿勢を示唆した。
焦点であるトランプ関税を巡っては、「米中だけをとっても通商政策の先行きの不確実性は高いし、他の国については引き続き不確実性が高い」、「更に通商政策がどこかのレベル内容で落ち着いたとしても、それが経済にどういう影響を及ぼしていくかということについての不確実性もきわめて高い」と、警戒を緩めなかった。
関連して、日米の通商交渉については、「通商交渉自体は私どもとしては見守るしかない」としたうえで、「これが後ずれすればするほど、通商政策を巡る状況が不確実であるという判断は続いていくということにならざるを得ない」と述べ、不確実性判断の時間軸に大きく影響するとの認識を示した。
利上げの判断材料に関しては、「ハードデータが今後どうなっていくかということはみてみたい」、「今高い、しかし減速していくというふうに思われる消費者物価総合のインフレ率が、基調物価に影響を与えるというようなことに至るかどうかということもみていきたい」と述べた。
長期国債買入れ減額については、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」と従来のスタンスを踏襲し、「金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましい」と述べた。一方で、「今後の減額ペースが速過ぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もある」と指摘し、「この両方の考え方のバランスを勘案し、国債市場の安定に配慮したかたちで市場機能の改善を進めていけるよう」今回の計画を決定した説明。さらに、減額ペースの緩和の背景について「財政への配慮」との見方を否定し、「あまり早めに減額を進めて、国債金利が異常なボラティリティを示す、それが経済にマイナスの影響を与える、そういうことが起こらないようにという配慮」と言及した。
27年1~3月期に2.1兆円になった段階で減額を打ち止めにするのかとの問いに対しては、「来年の中間評価の段階で改めて考えを示せればというふうに思っている」と言質を与えなかった。
日銀は6月16日~17日に開催した金融政策決定会合(MPM)において、金融政策の現状維持を決定した。これまで同様、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%程度で推移するように促すこととした(全員一致での決定)。
また、当初の予定通り、長期国債買入れ減額についての中間評価を実施し、(1)2026 年1~3月までは原則として毎四半期 4,000 億円程度ずつ、(2)2026 年4~6月以降は原則として毎四半期 2,000 億円程度ずつ減額し、2027年1~3月に2兆円程度とする計画を決定した(賛成8反対1:田村委員は毎四半期4000億円程度ずつ減額する議案を提出し、反対多数で否決された)。ちなみに、(1)は昨年7月に決定された計画通りの内容、(2)は今回新たに決定された内容ということになる。
この結果、長期国債買入れ減額は、来年4月以降減額ペースを半分に落としたうえで継続されることとなる。
会合後の総裁会見では、植田総裁が今後の金融政策運営について、「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような(日銀の想定する)経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」、「そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要」と、従来同様、利上げを模索しつつ、慎重に判断していく姿勢を示唆した。
焦点であるトランプ関税を巡っては、「米中だけをとっても通商政策の先行きの不確実性は高いし、他の国については引き続き不確実性が高い」、「更に通商政策がどこかのレベル内容で落ち着いたとしても、それが経済にどういう影響を及ぼしていくかということについての不確実性もきわめて高い」と、警戒を緩めなかった。
関連して、日米の通商交渉については、「通商交渉自体は私どもとしては見守るしかない」としたうえで、「これが後ずれすればするほど、通商政策を巡る状況が不確実であるという判断は続いていくということにならざるを得ない」と述べ、不確実性判断の時間軸に大きく影響するとの認識を示した。
利上げの判断材料に関しては、「ハードデータが今後どうなっていくかということはみてみたい」、「今高い、しかし減速していくというふうに思われる消費者物価総合のインフレ率が、基調物価に影響を与えるというようなことに至るかどうかということもみていきたい」と述べた。
長期国債買入れ減額については、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」と従来のスタンスを踏襲し、「金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましい」と述べた。一方で、「今後の減額ペースが速過ぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もある」と指摘し、「この両方の考え方のバランスを勘案し、国債市場の安定に配慮したかたちで市場機能の改善を進めていけるよう」今回の計画を決定した説明。さらに、減額ペースの緩和の背景について「財政への配慮」との見方を否定し、「あまり早めに減額を進めて、国債金利が異常なボラティリティを示す、それが経済にマイナスの影響を与える、そういうことが起こらないようにという配慮」と言及した。
27年1~3月期に2.1兆円になった段階で減額を打ち止めにするのかとの問いに対しては、「来年の中間評価の段階で改めて考えを示せればというふうに思っている」と言質を与えなかった。
(今後の予想)
日銀は現在様子見姿勢を維持しており、次回の追加利上げのタイミングやペースについての手がかりは乏しい段階だが、次回の利上げに踏み切るための主な条件としては、(1)トランプ関税の行方(大まかな着地)とその影響がある程度判明すること、(2)賃金と物価の好循環が継続して物価目標達成の確度が高まったと言えること、の2点が挙げられると考えている。
従って、筆者の中心的な予想としては、今後トランプ関税の行方と影響の見極めに十分な時間を取った後、今年12月に0.75%へ利上げすると見込んでいる。この時期になれば、(1)今春闘での高い賃上げがサービス等の価格に一定程度転嫁されたこと、(2)トランプ関税を受けた企業の中間決算や冬の賞与が大崩れしていないこと、(3)来春闘に向けて賃上げ機運が大きく損なわれていないこと、の確認が可能になると考えられるためだ。
ただし、トランプ政権が今月7日に公表した日本向けの新税率25%が8月1日に実際に発動され、早期に取り下げられないのであれば、利上げのハードルは上がる。日銀が利上げ路線を即時に撤回することはないにせよ、高関税が緩和され、影響が許容範囲と判明するまでは利上げに動けなくなりそうだ。
日銀は現在様子見姿勢を維持しており、次回の追加利上げのタイミングやペースについての手がかりは乏しい段階だが、次回の利上げに踏み切るための主な条件としては、(1)トランプ関税の行方(大まかな着地)とその影響がある程度判明すること、(2)賃金と物価の好循環が継続して物価目標達成の確度が高まったと言えること、の2点が挙げられると考えている。
従って、筆者の中心的な予想としては、今後トランプ関税の行方と影響の見極めに十分な時間を取った後、今年12月に0.75%へ利上げすると見込んでいる。この時期になれば、(1)今春闘での高い賃上げがサービス等の価格に一定程度転嫁されたこと、(2)トランプ関税を受けた企業の中間決算や冬の賞与が大崩れしていないこと、(3)来春闘に向けて賃上げ機運が大きく損なわれていないこと、の確認が可能になると考えられるためだ。
ただし、トランプ政権が今月7日に公表した日本向けの新税率25%が8月1日に実際に発動され、早期に取り下げられないのであれば、利上げのハードルは上がる。日銀が利上げ路線を即時に撤回することはないにせよ、高関税が緩和され、影響が許容範囲と判明するまでは利上げに動けなくなりそうだ。
3.金融市場(6月)の振り返りと予測表
(ドル円レート)
6月の動き(↗) 月初143円台半ばでスタートし、月末は144円台後半に。
月初、米中摩擦への思惑が揺れ動いたほか、米経済指標がマチマチの結果となり、142円台から144円台で方向感を欠く展開に。その後は米雇用統計の堅調な結果や米中交渉の進展期待からドルがやや強含み、10日には一時145円台を付けた。13日にはイスラエルによるイラン攻撃を受けてリスク回避の円買いで143円近辺へと下落したが、その後は有事のドル買いや原油高に伴う本邦貿易赤字拡大観測から円安が進み、23日には一時148円台を付けた。ただし、直後にイスラエルとイランの停戦合意を受けて有事のドル買いの巻き戻しが起きたほか、トランプ大統領によるFRB議長の早期指名検討報道を受けてドル安が進み、26日には144円台後半に。月末も同水準で着地した。
6月の動き(↗) 月初143円台半ばでスタートし、月末は144円台後半に。
月初、米中摩擦への思惑が揺れ動いたほか、米経済指標がマチマチの結果となり、142円台から144円台で方向感を欠く展開に。その後は米雇用統計の堅調な結果や米中交渉の進展期待からドルがやや強含み、10日には一時145円台を付けた。13日にはイスラエルによるイラン攻撃を受けてリスク回避の円買いで143円近辺へと下落したが、その後は有事のドル買いや原油高に伴う本邦貿易赤字拡大観測から円安が進み、23日には一時148円台を付けた。ただし、直後にイスラエルとイランの停戦合意を受けて有事のドル買いの巻き戻しが起きたほか、トランプ大統領によるFRB議長の早期指名検討報道を受けてドル安が進み、26日には144円台後半に。月末も同水準で着地した。
(2025年07月08日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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