2025年03月07日

長期金利の上昇は続くのか?~16年ぶり1.5%到達後の金利見通し

経済研究部 主席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 今年に入って長期金利の上昇が鮮明になり、約16年ぶりとなる1.5%台に到達している。その最大の原動力となってきたのが、「利上げの前倒し」観測と「ターミナルレートの引き上げ」観測という2つの意味での「日銀利上げ観測の高まり」だ。予想を上回る経済指標が増え、経済と物価の好循環への市場の期待が高まったうえ、タカ派の審議委員による情報発信が続いたことがその背景にある。また、直近では、トランプ米大統領による円安けん制や防衛費増額圧力による国債増発懸念も金利上昇に働いた可能性がある。
     
  2. 今後も当面は長期金利がさらに上昇する余地がある。投資家の金利上昇への警戒感が燻ると見られるうえ、春闘集中回答日に昨年と遜色ない高めの賃上げでの妥結が相次ぎ、日銀利上げ観測がさらに刺激される可能性があるためだ。当面の上昇余地の目途としては、1.6%台を見ておきたい。一方、メインシナリオとしては、4月頃には一旦1.3%台へやや低下すると見ている。利上げ観測はやや行き過ぎていると見られ、その修正が入ると見込まれるためだ。その後、6月頃以降は、改めて日銀の段階的な利上げや国債買入れ減額を堅実に織り込む形で、緩やかに上昇していく姿を想定している。来年末までの具体的な水準としては、今年末時点で1.5%、来年末時点で1.6%台と見込んでいる。
     
  3. なお、上振れリスクシナリオとしては、賃上げが予想を大きく上回るケースや、円安が加速するケース、インフレ予想が顕著に高まるケース、米政権による円安是正圧力が強まるケースなどが考えられる。これらの場合は、2%に達する可能性も否定できない。下振れリスクシナリオとしては、賃上げが期待外れに終わるケース、円高が加速するケース、トランプ政権が日本に対して大幅な関税をかけてくるケースなどが考えられる。実現可能性のイメージとしては、メインが5割、上振れが3割、下振れが2割と見ている。

 
日本の政策金利と長期金利
■目次

1.トピック:長期金利の上昇は続くのか?
  ・長期金利は1.5%を突破
  ・最大の原動力は日銀の利上げ観測
  ・今後の長期金利見通し
2.日銀金融政策(2月)
  ・(日銀)現状維持(会合開催なし)
  ・今後の予想
3.金融市場(2月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

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(2025年03月07日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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