- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- REIT(リート) >
- 2025年上期のJリート市場は7.6%上昇。需給やファンダメンタルズの改善が上昇を後押し~売却益計上による還元強化の取組みが継続
NEW
コラム
2025年07月07日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
2025年上期(1~6月)のJリート(不動産投資信託)市場を振り返ると、市場全体の値動きを表わす東証REIT指数(配当除き)は+7.6%、配当込みで+10.3%の上昇となった。セクター別では、保有資産の約4割を占めるオフィスセクターが上昇を牽引した1。また、トランプ米大統領の関税政策をめぐり4月に一時急落した株式市場と比較しても、Jリート市場は期を通じて堅調に推移し、TOPIX(東証株価指数)の上昇率(+2.4%)を5.2ポイント上回った(図表1)。
Jリート市場は昨年まで3年連続で下落していたが、2025年に入り底打ちの機運が広がっている。ファンダメンタルズの改善に加えて、Jリート投信からの資金流出が一巡し、海外投資家が買い越しに転じるなど、需給懸念が後退したことも価格上昇を後押しした。6月末時点のバリュエーションは、分配金利回りが4.9%(昨年末比▲0.2ポイント低下)、10年国債利回りに対するイールドスプレッドが3.5%(同▲0.5ポイント低下)、NAV倍率が0.85倍(同+0.05倍)となっており、利回り指標やNAV指標でみて依然として割安な水準にある。
Jリート市場は昨年まで3年連続で下落していたが、2025年に入り底打ちの機運が広がっている。ファンダメンタルズの改善に加えて、Jリート投信からの資金流出が一巡し、海外投資家が買い越しに転じるなど、需給懸念が後退したことも価格上昇を後押しした。6月末時点のバリュエーションは、分配金利回りが4.9%(昨年末比▲0.2ポイント低下)、10年国債利回りに対するイールドスプレッドが3.5%(同▲0.5ポイント低下)、NAV倍率が0.85倍(同+0.05倍)となっており、利回り指標やNAV指標でみて依然として割安な水準にある。
続いて、6月末時点の市場規模を確認すると、上場銘柄数は57社で昨年末から変わらず、市場時価総額は15.3兆円(昨年末比+7%増)、運用資産額(取得額ベース)は23.7兆円(同+1%増)となった(図表2)。また、Jリートによる物件取得額は5,310億円となり、前年同期比▲29%減少した。アセットタイプ別の取得割合は、オフィス(35%)・ホテル(28%)・住宅(14%)・物流施設(13%)・商業施設・(7%)・底地ほか(3%)の順となっており、今後の収益拡大が期待できるセクターとして、オフィスやホテルの取得意欲が旺盛で、両セクターで全体の6割強を占めている。
業績面では、堅調な不動産賃貸市況や不動産売却益の計上が寄与し、市場全体の予想1口当たり分配金は昨年末比+3%増、1口当たりNAV(Net Asset Value)は同+2%増と過去最高を更新し、市場ファンダメンタルズは引き続き改善傾向にある。
業績面では、堅調な不動産賃貸市況や不動産売却益の計上が寄与し、市場全体の予想1口当たり分配金は昨年末比+3%増、1口当たりNAV(Net Asset Value)は同+2%増と過去最高を更新し、市場ファンダメンタルズは引き続き改善傾向にある。
Jリート市場ではNAV倍率が1倍を下回る状況が長期化するなか、Jリート各社は投資口価格の割安是正に向けた取り組みを強化している。こうした取り組みの1つが、不動産ポートフォリオの見直しによる物件売却の増加と、それに伴う売却益の投資主への還元である。
Jリートによる不動産売却額(発表日ベース)は、2024年に7,689億円(前年比+102%)と過去最高を記録し、2025年上期も4,634億円(前年同期比+10%)と高水準を維持している(図表3)。また、不動産売却損益は2024年に1,263億円(前年比+79%)と過去最高を記録し、2025年上期も1,153億円(前年同期比+99%)と、既に前年に迫る規模に達している。この不動産売却損益について、「含み益の顕在化(鑑定評価額-帳簿価額)」と「投資主価値の向上(売却価額-鑑定評価額)」の2つに分けてみると、単に含み益を顕在化させるにとどまらず、より高い価格での売却を通じて、投資主価値の向上を実現していることがわかる(図表4)。こうしたJリート各社のプロアクティブな運用姿勢が投資家に評価されて、現在の割安なバリュエーションの見直しが進むことを期待したい。
Jリートによる不動産売却額(発表日ベース)は、2024年に7,689億円(前年比+102%)と過去最高を記録し、2025年上期も4,634億円(前年同期比+10%)と高水準を維持している(図表3)。また、不動産売却損益は2024年に1,263億円(前年比+79%)と過去最高を記録し、2025年上期も1,153億円(前年同期比+99%)と、既に前年に迫る規模に達している。この不動産売却損益について、「含み益の顕在化(鑑定評価額-帳簿価額)」と「投資主価値の向上(売却価額-鑑定評価額)」の2つに分けてみると、単に含み益を顕在化させるにとどまらず、より高い価格での売却を通じて、投資主価値の向上を実現していることがわかる(図表4)。こうしたJリート各社のプロアクティブな運用姿勢が投資家に評価されて、現在の割安なバリュエーションの見直しが進むことを期待したい。
1 東証REIT用途別指数の騰落率は、オフィスが+10.9%、住宅が+2.8%、商業・物流等が+5.9%となった。
(2025年07月07日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1858
経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
新着記事
-
2025年07月08日
今週のレポート・コラムまとめ【7/1-7/7発行分】 -
2025年07月07日
ベトナム経済:25年4-6月期の成長率は前年同期比7.96%増~駆け込み輸出により製造業が好調 -
2025年07月07日
トランプ関税前後の貿易状況 -
2025年07月07日
2025年上期のJリート市場は7.6%上昇。需給やファンダメンタルズの改善が上昇を後押し~売却益計上による還元強化の取組みが継続 -
2025年07月07日
「縮みながらも豊かに暮らす」社会への転換(1)-SDGs未来都市計画から読み解く「地方創生2.0」への打ち手
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【2025年上期のJリート市場は7.6%上昇。需給やファンダメンタルズの改善が上昇を後押し~売却益計上による還元強化の取組みが継続】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
2025年上期のJリート市場は7.6%上昇。需給やファンダメンタルズの改善が上昇を後押し~売却益計上による還元強化の取組みが継続のレポート Topへ