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2025年06月27日

雇用関連統計25年5月-新規求人倍率は3年6ヵ月ぶりの低水準も、労働市場全体の需給を反映せず

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.就業者数(季節調整値)が過去最高を更新

完全失業率と就業者の推移 総務省が6月27日に公表した労働力調査によると、25年5月の完全失業率は前月から横ばいの2.5%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想は2.6%)となった。

労働力人口が前月から29万人の増加となる中、就業者数が前月から33万人増加し、失業者数は前月から4万人減少の172万人(いずれも季節調整値)となった。労働力人口、就業者数は4月までの3ヵ月でそれぞれ22万人、23万人減少したが、5月はそれらを一気に取り戻す形となった。就業者数(季節調整値)は6837万人と過去最高を更新した。
就業者数は前年差72万人増(4月:同46万人増)と34ヵ月連続で増加した。男女別には、男性が前年差23万人増と3ヵ月連続で増加、女性が前年差50万人増と39ヵ月連続で増加した。

産業別には、建設業(前年差11万人減)、製造業(同11万人減)、卸売・小売業(同23万人減)は減少が続いたが、宿泊・飲食サービス業(4月:前年差7万人減→5月:同3万人増)が増加に転じたほか、医療・福祉(4月:前年差27万人増→5月:同37万人増)の増加幅が前月から拡大した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ79万人増(4月:同60万人増)と39ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差48万人増(4月:43万人増)と19ヵ連続、非正規の職員・従業員数が前年差31万人増(4月:同17万人増)と5ヵ月連続で増加した。

2.新規求人倍率は3年6ヵ月ぶりの低水準に

有効求人倍率の推移 厚生労働省が6月27日に公表した一般職業紹介状況によると、25年5月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下)の1.24倍(QUICK集計・事前予想:1.26倍、当社予想は1.27倍)となった。有効求人数は前月比0.3%と3ヵ月連続で増加したが、有効求職者数が同1.5%とそれを大きく上回る伸びとなったことが、有効求人倍率の低下につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.10ポイント低下の2.14倍となった。新規求職申込件数が前月比0.5%の増加となる一方、新規求人数が同▲4.2%と大幅に減少した。新規求人倍率は21年11月(2.05倍)以来、3年6ヵ月ぶりの低水準となった。

新規求人数(原数値)は前年比▲5.2%(4月:同2.2%)と2ヵ月ぶりに減少した。産業別には、卸売・小売業(4月:前年比0.7%→5月:同▲11.1%)、情報通信業(4月:前年比9.0%→5月:同▲2.2%)が減少に転じたほか、宿泊・飲食サービス業(4月:前年比▲1.8%→5月:同▲19.3%)、生活関連サービス・娯楽業(4月:前年比▲4.4%→5月:同▲5.7%)の減少幅が拡大した。また、4月に2年2ヵ月ぶりの増加となった建設業(4月:前年比2.2%→5月:同▲2.7%)、製造業(4月:前年比3.4%→5月:同▲4.0%)は再び減少に転じた。
充足率と就職件数 労働力調査の就業者数が過去最高を更新するなど、雇用情勢は改善しているが、求人数は低迷が続いている。この背景には就職件数、充足率(新規求人数に対する就職件数の割合)が過去最低水準で推移するなど、ハローワークの求人が採用につながりにくくなっていることなど理由として、企業の求人がハローワークから民間職業紹介所、広告等の他のチャネルにシフトしていることがあると考えられる。

ハローワークにおける求人・求職動向が労働市場全体の需給関係を反映しにくくなっている。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月27日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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