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- 令和の米騒動が起きた背景と農業の現状-米の価格高騰はなぜ起きた?
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2025年06月06日
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1―はじめに
近年、いわゆる「令和の米騒動」として注目された米の需給問題は、単なる一過性の問題ではなく、供給力の低下と需要の変化が複合的に重なった深刻な課題である。供給面では、長年続いた減反政策や気候変動、労働力不足などが生産に大きな影響を及ぼしている。一方、食生活の多様化や人口減少により需要は長期的に縮小している。さらに近年は、インバウンドや家庭内需要の回復により、需給バランスは一層複雑化している。また、在庫管理も課題であり、需給変動への迅速な対応が難しい。米需給問題の実態を供給・需要・在庫の3つの視点から整理する。
2―供給力の低下
また猛暑や異常気象による品質低下が近年深刻化している。特にコシヒカリのような暑さに弱い品種は打撃を受けやすく、2023年は1等米(等級の数字が小さい程、精米後に残る米の量が多い)の割合が大幅に減少した。
農業従事者の高齢化が進み、後継者不足も深刻である。小規模農家が多い中、経営規模拡大の動きも見られるが、担い手の育成と支援は急務である。
肥料・燃料などのコスト上昇は、小規模農家の経営を直撃している。小規模農家ほど生産コストが割高になり、経営の持続性に深刻な懸念が生じている。
農業従事者の高齢化が進み、後継者不足も深刻である。小規模農家が多い中、経営規模拡大の動きも見られるが、担い手の育成と支援は急務である。
肥料・燃料などのコスト上昇は、小規模農家の経営を直撃している。小規模農家ほど生産コストが割高になり、経営の持続性に深刻な懸念が生じている。
* 本稿は2025年4月17日拙稿を改変した。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=81723?site=nli
*1 総務省 家計調査
*2 農林水産省 米の基本指針(案)に関する主なデータ等
*3 玄米の取扱数量が年間500トン以上の届出事業者の在庫量に10a以上の作付生産者の在庫量推計値を加えたもの
4―在庫管理の重要性
米の安定供給・価格安定を支える在庫は民間と政府の二つの仕組みがある。
2022年以降は民間在庫の在庫量は減少傾向にあり、安定供給への懸念が高まっている。民間在庫の減少が価格の急騰や供給不足を招いたのである。
備蓄米の放出が後手に回った背景には、急激な需給変動への対応遅れと、価格下落を避けようとする慎重な姿勢がある。その結果、需給安定よりも価格維持が優先された。また、制度上の制約や関係機関との調整に時間を要し、機動的な対応が困難な構造も課題である。今回の事態を受け、備蓄米制度の見直しと、需給変動に即応できる運営体制の構築が求められている。
2022年以降は民間在庫の在庫量は減少傾向にあり、安定供給への懸念が高まっている。民間在庫の減少が価格の急騰や供給不足を招いたのである。
備蓄米の放出が後手に回った背景には、急激な需給変動への対応遅れと、価格下落を避けようとする慎重な姿勢がある。その結果、需給安定よりも価格維持が優先された。また、制度上の制約や関係機関との調整に時間を要し、機動的な対応が困難な構造も課題である。今回の事態を受け、備蓄米制度の見直しと、需給変動に即応できる運営体制の構築が求められている。
5―最後に
令和の米騒動と呼ばれる需給混乱は、減反政策の影響、気候変動や高齢化、インフレによる供給力低下、食生活の変化と人口減少による需要構造の変化、短期的な需要増による在庫逼迫が複合的に絡み合って生じたものである。今後の安定供給には、生産調整に頼らない持続可能な農業構造の再構築が不可欠であり、需要変動に応じた在庫戦略と迅速な政策判断が求められる。現場の声を反映し、消費者と生産者の信頼をつなぐ調整機能の強化が米政策の鍵となる。
(2025年06月06日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1834
経歴
- 【職歴】
2009年 日本生命保険相互会社入社
2025年 ニッセイ基礎研究所
小前田 大介のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/06 | 令和の米騒動が起きた背景と農業の現状-米の価格高騰はなぜ起きた? | 小前田 大介 | 基礎研マンスリー |
2025/05/16 | 令和の米騒動に対する包括的対策~米価格高騰を解消するために~ | 小前田 大介 | 研究員の眼 |
2025/04/17 | 令和の米騒動が起きた背景と農業の現状~米の価格高騰はなぜ起きた?~ | 小前田 大介 | 研究員の眼 |
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