2025年04月10日

公益通報者保護法の改正案-不利益処分に刑事罰導入

保険研究部 取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

■要旨

公益通報保護法(以下、「法」)の改正案が国会に提出された。法は労働者等が、事業者における犯罪行為や過料に値する違法行為を公益目的で通報したときに、その労働者を解雇や降格処分などの不利益処分から守ることを目的としている。
 
公益通報には、社内窓口への通報、権限のある行政機関への通報、およびマスコミ等への通報があり、それぞれ保護される要件が定められている。
 
今回の法の改正の主要なポイントは以下の通りである。

(1) 解雇等の不利益処分を実施した者への罰則を科すこととした。具体的には6月以内の拘禁刑または30万までの罰金が科される。なお、実施者を雇用する法人等を罰する両罰規定がある。

(2) 上記(1)で刑事罰を科すことから、不利益処分の範囲を明確化した。具体的には、解雇処分および就業規則で定められた懲戒処分に限定された。これは制裁的な異動などを含む現行法よりも範囲が限定的となる。

(3) フリーランスを公益通報の保護対象として追加した。

(4) 公益通報対応業務従事者を指定することを怠った事業者(300名超の事業者に限る)に対する勧告や命令処分権限を行政に付与した。

(5) 公益通報を妨害する行為の禁止規定を導入した。

■目次

1――はじめに
2――公益通報の基本
  1|公益通報とは(一部改正)
  2|通報対象事実とは
3――保護される公益通報の種類
  1|役務提供先へ通報するもの
  2|権限を有する行政機関へ通報するもの
  3|その他の事業者外部へ通報するもの
4――労働者に対する不利益取り扱いの禁止
  1|現行法における不利益取扱の禁止とその評価
  2|改正法における不利益取扱の禁止
5――その他の者の保護
  1|派遣労働者
  2|役員
  3|役員の不利益取扱いに関する議論
  4|フリーランス(新設)
6――事業者がとるべき措置・行政の権限の充実
  1|公益通報対応業務(改正・新設)
  2|公益通報を阻害する要因への対処(新設)
  3|行政の権限の充実(新設・一部改正)
7――検討
8――おわりにかえて

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月10日「基礎研レポート」)

このレポートの関連カテゴリ

Xでシェアする Facebookでシェアする

保険研究部   取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2025年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【公益通報者保護法の改正案-不利益処分に刑事罰導入】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

公益通報者保護法の改正案-不利益処分に刑事罰導入のレポート Topへ