2025年04月02日

ユーロ圏消費者物価(25年3月)-コア指数は前年比で2%台前半まで低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数、コア指数ともに低下しそれぞれ2.2%、2.4%に

4月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)は3月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は2.2%、市場予想1(2.2%)と一致、前月(2.3%)から低下した(図表1)
前月比は0.6%、予想(0.6%)と一致、前月(0.4%)から加速した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は2.4%、予想(2.5%)より下振れ、前月(2.6%)から低下した(図表2)
前月比は1.0%、前月(0.5%)から加速した

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:サービスインフレは3.4%まで減速

3月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で2.2%となり、2月(2.3%)からやや低下した。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」も2.4%とやや低下した。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が1月0.5%→2月0.6%→3月0.6%となった。「財」はここのところ0%台半ばでの横ばい圏で推移している。「サービス」(エネルギーを除く)は1月3.9%→2月3.7%→3月3.4%となり、これまで4%近い水準を維持していたが大幅に減速し、22年6月以来の低さ(3.7%)に低下した。前年同月比寄与度は、「財」が0.15%ポイント程度、「サービス」が1.47%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で1月1.8%→2月0.2%→3月▲0.7%とマイナスに転じた。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.09%ポイント程度(2月は0.01%ポイント)と見られる(前掲図表2)。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/(図表4)ユーロ圏のインフレ率(季節調整値)
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で2.9%(2月2.7%)と上昇(図表3)、内訳を見ると、飲食料のうち加工食品の伸び率は2.6%(2月2.6%)で未加工食品は4.1%(2月3.0%)だった。飲食料の前年同月比寄与度は0.62%ポイント程度(2月は0.52%ポイント)と見られる。

総じて見ると、3月のインフレ率はこれまで粘着性の強かったサービスインフレの減速が押し下げ要因となり、総合・コア指数ともに低下、ディスインフレの進行が確認できる結果だった。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が3.2%(2月3.2%)、コアが2.3%(2月2.2%)、エネルギーを除く財が0.7%(2月0.7%)、サービスが3.2%(2月3.0%)、飲食料が2.0%(2月2.1%)となった。3月は2月に続き総合指数やサービスの物価上昇の勢いが3%を超えた。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは7か国、残りの13か国は低下した(図表5)。また、物価目標の2%を下回ったのは6か国だった。なお、前月比では20か国中17か国がプラス、3か国がマイナスの伸び率となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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