2024年11月20日

貿易統計24年10月-自動車、半導体を中心に欧米向け輸出が減少

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出数量が小幅ながら9ヵ月ぶりに前年比プラスに

財務省が11月20日に公表した貿易統計によると、24年10月の貿易収支は▲4,612億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲3,452億円、当社予想は▲5,452億円)を下回る結果となった。輸出が前年比3.1%(9月:同▲1.7%)と2ヵ月ぶりの増加となる一方、輸入が前年比0.4%(9月:同1.8%)と前月から伸びが鈍化し、輸出の伸びを下回ったため、貿易収支は前年に比べ2,416億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比0.1%(9月:同▲6.9%)、輸出価格が前年比3.0%(9月:同5.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比2.5%(9月:同▲1.3%)、輸入価格が前年比▲2.0%(9月:同3.2%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲3,577億円と41ヵ月連続の赤字となり、9月の▲2,746億円からは赤字幅が若干拡大した。輸出が前月比▲0.7%と2ヵ月ぶりに減少する一方、輸入が同0.2%と3ヵ月ぶりに増加した。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 24年10月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=80.2ドル(当研究所による試算値)と、9月の82.9ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台前半まで下落しており、指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、24年11月に80ドル程度となった後、12月に70ドル台まで低下することが見込まれる。ただし、原油安の一方で円安が進んでいるため、輸入価格低下を通じた貿易収支の改善は期待できないだろう。

2.欧米向け輸出が弱い動き

24年10月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲6.1%(9月:同▲0.3%)、EU向けが前年比▲15.9%(9月:同▲11.2%)、アジア向けが前年比3.9%(9月:同▲9.0%)、うち中国向けが前年比▲4.4%(9月:同▲15.1%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 24年10月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲8.5%(9月:同9.3%)、EU向けが前月比▲3.9%(9月:同3.6%)、アジア向けが前月比1.1%(9月:同0.1%)、うち中国向けが前月比0.7%(9月:同▲2.1%)、全体では前月比▲1.0%(9月:同3.3%)となった。

10月は中国も含めたアジア向けが持ち直す一方、欧米向けが弱い動きとなった。品目別には自動車(米国向け:前年比▲8.9%、EU向け:同▲29.2%)、半導体電子部品(米国向け:前年比▲43.0%、EU向け:同▲33.7%)の落ち込み(いずれも数量ベース)が目立った。

輸出は横ばい圏の推移が続いている。先行きについても、海外経済の減速が続くことから、輸出が景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。
 
 

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(2024年11月20日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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