2024年11月06日

EUのAI規則(4/4-最終回)-イノベーション支援、ガバナンス、市販後モニタリング等

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

前回までのレポートでも述べた通り、EUのAI規則(以下、本規則)は2024年8月1日に発効した。本稿は、本規則解説の4回目(最終回)である。今回のレポートの取り扱う範囲はイノベーション支援、ガバナンス、市販後モニタリング、法の執行・罰則である。
 
イノベーション支援策として、本規則ではAI規制のサンドボックスを用意している。サンドボックスでは、個人情報の取り扱いなどに特例がある。
 
ガバナンスとしては、欧州委員会の機能を有するAIオフィスの設置、各国からの代表で構成される欧州人工知能理事会、産業界や消費者などのステークホルダーで構成されるアドバイザリー・フォーラム、独立専門家により構成される科学パネルがEUレベルで設置される。各国ベースでは市場監視当局が管轄当局に指定され、AIシステムの監視にあたる。
 
提供者は市場投入後も市販後モニタリングシステムを通じて、AIシステムの稼働状況を監視する必要があり、もし重大事故が発生した場合には速やかに市場監視当局に報告をしなければならない。

また、市場監視当局は市場を監視し、AIシステムが「リスクをもたらす」と判断した場合は評価を行い、必要に応じて是正措置を講ずることを命じ、命令不遵守の場合は製品の市場からの撤去等を行うことができる。
 
これらに加え、本規則に違反した場合には、前会計年度の全世界売り上げの7%または3500万ユーロを上限とする罰金を科すことができるなどの規定がある。

■目次

1――はじめに
2――これまでの振り返り
3――イノベーション支援策
  1|AI規制のサンドボックス
  2|AI規制のサンドボックスの取り決め
  3|AI規制のサンドボックスの個人情報の処理
  4|AI規制のサンドボックス外での実環境でのテスト
4――ガバナンスとデータベース
  1|AIオフィス
  2|欧州人工知能理事会
  3|アドバイザリー・フォーラム
  4|科学パネル
  5|各国の所管官庁
  6|高リスクAIシステムのデータベース
5――市販後モニタリング、情報共有、市場監視
  1|市販後モニタリング
  2|重大インシデントに関する情報の共有
  3|市場監視当局の市場監視
  4|リスクをもたらすAIシステム
  5|高リスクと評価されるAIシステム
  6|違反の是正
  7|苦情の処理
  8|汎用AIモデルの提供者に関する監督、調査、執行、監視
6――法律の執行
  1|行動規範とガイドライン
  2|権限の委譲と委員会の手続
  3|罰則
7――おわりに

(2024年11月06日「基礎研レポート」)

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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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