2024年10月24日

24年9月末時点の経過措置適用企業の進捗状況~経過措置の適用は2025年3月から順次終了~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

東京証券取引所は、2022年4月4日の新市場区分への移行に伴い設置した経過措置について、当初は「当面の間」として終了時期を明確にしていなかった。しかし、2023年4月1日に改正規則を施行し、2025年3月以降に順次終了することが決定された。

2024年10月15日に東証が公表した経過措置適用企業の進捗状況を確認したところ、経過措置適用企業が全体に占める割合は7%だった。上場維持基準の項目別では、流通株式時価総額や時価総額の基準に未達の企業が多い。多くの企業は期限を2025年から2027年の間に設定しており、残された時間は長くない。基準達成に向けた取り組みを継続しつつ、期限内に基準を満たせなかった場合の対応について検討することも現実的に必要である。

■上場会社数に占める経過措置適用企業の割合は約7%

■ 上場会社数に占める経過措置適用企業の割合は約7%

図表1は、東証の公表資料から市場別の上場会社数と上場維持基準への適合計画を開示した企業数をまとめたものである。直近の2024年9月末時点ではプライム市場上場1,641社のうち67社(全体の4.1%)、3市場合計では3,823社のうち269社(全体の7.0%)が経過措置の適用を受けている。
図表1 各市場に占める経過措置適用企業の割合 

■流通株式時価総額

■ 流通株式時価総額、時価総額の基準未達企業が多い

図表2は各市場の上場維持基準に未達の企業を市場別、項目別に集計した結果である。
図表2 流通株式時価総額、時価総額未達の企業が多い
プライム市場とスタンダード市場では、流通株式時価総額が未達の企業が最も多かった。2024年1月の東証公表資料と比較すると、基準未達の企業はプライム市場で26社(77社→51社)、スタンダード市場で35社(133社→98社)減少した1。グロース市場では、時価総額が未達の企業が24社と最も多く、2024年1月東証公表資料と比較すると1社(25社→24社)減少した。グロース市場の時価総額40億円以上という上場維持基準は、上場後10年が経過した企業が対象である。基準未達の24社について、2024年1月から9月末の間の平均時価総額を確認したところ、時価総額40億円以上の企業は0社であった。図表3は新市場区分が開始された2022年4月から2024年9月までの各指数の推移をまとめたものである。同期間にプライム市場指数は39.3%上昇したのに対し、グロース市場指数は▲5.4%下落した。海外投資家を中心にプライム市場上場の大型株に買いが集中しており、グロース市場上場の小型株には厳しい環境であったようだ。
図表3 グロース市場指数はアンダーパフォーム
図表4は、2024年9月末時点までに基準未達企業が開示している最新の「適合計画書」をもとに、プライム・スタンダード・グロース市場の主な上場維持基準に対する進捗状況と計画期間を集計したものである。縦軸を赤枠で囲った数字は、各項目の上場維持基準である。オレンジ色で囲っているものは、各市場ごとに最も未達企業が多かった上場維持基準である。
図表4 経過措置適用企業の進捗状況
 
1 森下千鶴『23年12月末時点の経過措置適用企業の進捗状況~東証の要請に対応した経過措置適用企業は~』ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2024年01月29日)

■経過措置は2025年3月以降順次終了

■ 経過措置は2025年3月以降順次終了

各市場の上場維持基準に満たなくても暫定的に上場を認める経過措置は、2025年3月以降順次終了する2。2025年3月以降に到来する基準日から、全ての上場企業に対して本来の上場維持基準が適用されることになり、基準に抵触した企業は1年間(売買高基準は6カ月間)の改善期間が設けられた後、監理・整理銘柄に指定され、その後原則6ケ月間で上場廃止となる。
 
しかしながら、救済措置として現在、経過措置の適用を受けている企業は、企業が自主的に定めている計画期間まで監理銘柄として市場に残ることができる。経過措置適用企業の数は減少しているものの、いまだ269社が基準を満たしていない状態である。さらに、未達企業が特に多い流通株式時価総額または時価総額を大きくするためには、基本的に企業業績の拡大とともに、当期利益を継続的に増加させていくこと等が不可欠である。多くの企業は計画期間の期限を2025年から2027年に設定しており、残された時間は長くない。基準達成に向けた取り組みを継続しつつ、期限内に適合できなかった場合には、上場廃止に備え既存株主の利益を守る対応について検討することも現実的に必要である。
 
2 森下千鶴『経過措置の適用を2025 年3月から順次終了~東証市場再編後の課題~』ニッセイ基礎研レポート(2023年02月16日)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年10月24日「基礎研レター」)

このレポートの関連カテゴリ

Xでシェアする Facebookでシェアする

金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【24年9月末時点の経過措置適用企業の進捗状況~経過措置の適用は2025年3月から順次終了~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

24年9月末時点の経過措置適用企業の進捗状況~経過措置の適用は2025年3月から順次終了~のレポート Topへ