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- ECB政策理事会-弱いデータが連続利下げを後押し
2024年10月18日
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(リスク評価)
(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 成長率に対するリスクは引き続き下方に傾いている
- 信頼感の低さによって、消費や投資が予想通りの速度で回復しない可能性がある
- これは地政学的なリスク、例えばロシアの正当化されないウクライナとの戦争や、中東での悲劇的な紛争によって増幅される可能性があり、エネルギー供給者や世界貿易が混乱しうる
- ユーロ圏の輸出に対する需要の弱さに関しては、例えば、世界経済の弱さや主要経済間での貿易摩擦の激化がユーロ圏の成長率の重しになる可能性がある
- 金融政策引き締めの効果がラグをもって予想以上に強く生じれば成長率が低下する可能性がある
- 世界経済が予想よりもより強く成長する、もしくは資金調達環境の緩和やインフレ率の低下が迅速な消費や投資の反発を促せば、成長率が高まる可能性がある
- インフレ率は賃金や利益が予想以上に上昇すれば、上振れする可能性がある
- インフレ率の上方リスクはまた、特に中東における地政学的緊張の高まりがエネルギー価格や運送費用を短期的に上昇させ、世界貿易を混乱させることが含まれる
- 加えて、異常気象や気候変動危機の展開が、食料品価格を上昇させる可能性もある
- 対照的に、インフレ率は信頼感の低さや地政学的な事件によって消費や投資が予想通りの速さで回復しない、金融政策が予想以上に需要を低下させる、もしくは、予想外に世界経済が悪化することで低下する可能性がある
(金融・通貨環境)
- 短期の市場金利は、ユーロ圏経済の弱さを示すニュースや、インフレ率の低下を主因として、9月会合以降低下した
- 資金調達環境は依然として制限的であるが、平均の企業向けの新規貸出金利、資金住宅ローン金利は8月にやや低下して、それぞれ5.0%と3.7%となった。
- 最新の銀行貸出調査によると、企業向けの信用基準は2年超の積極的な厳格化の後、7-9月期には変化がなかった
- 加えて、企業向け貸出需要はここ2年で初めて増加した
- 総じて企業向け貸出は引き続き停滞しており、8月は前年比0.8%の成長となった
- 住宅向け信用基準は主に銀行間競争が激化した結果、7-9月期に緩和した
- 金利低下と住宅市場の改善見通しが住宅需要を強く増加させている
- これに沿って、住宅ローン貸出はやや増加し、前年比で0.6%成長した
(結論)
- (声明文冒頭に記載の決定に再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 次の段階について。9月時点の見通しより速やかに2%目標に到達すると聞こえるが、本日の利下げ決定は実際のギア変更を意味するのか。次回以降の数会合はすべて利下げするというのが可能性の高いシナリオなのか
- ディスインフレ過程は進行しており、前回会合後に受け取った情報はすべて同じ方向を示しており、下方向だったため、0.25%ポイントの利下げを決定した
- また、今後もデータ依存を続けていく
- 12月会合までのデータを受け取り、会合毎に、その時点で決定を行う
- 舵取りも、姿勢も、3要素も、会合毎のデータ依存性も、事前に確約しない金利経路もこれまでと同じである
- 米国の選挙について。貿易摩擦がリスクだと述べたが、トランプ氏がホワイトハウスに復帰し、関税を課すという計画が、ユーロ圏の成長やインフレ率にどのような影響を及ぼすと考えるか
- 障壁や関税強化、世界の他の国との貿易に対して障害が追加される可能性は、明らかにマイナスとなる
- 経済見通しについて。経済が良くなさそうで、さらなる下振れについて示唆したが、0.50%ポイントの利下げをしなかったのはなぜか。議題にあがり、議論されたのか
- 議題にあがり、議論され、チーフエコノミストのレーン氏が提案したことは、0.25%の利下げについてである
- 最終的に、0.25%ポイントの利下げが全会一致で決定された
- 制限的な金融姿勢を維持した場合、インフレ率が下振れる可能性について議論したか
- 上振れと下振れには双方の見解が見られるだろう
- インフレ見通しに対するリスクには上振れと下振れの双方があるというのは明らかで、おそらく上振れリスクよりも下振れリスクが大きいだろう
- インフレ率は来年末ではなく、来年にかけて目標に到達する見込みだ。中立金利への到達も早まるのか。今後、金融政策の再調整と利下げを行うのか
- 再調整ではなく、調整の過程にいる
- 我々の調整は、利用できるすべてのデータに基づいて3要素のアプローチを適用して行われる
- 9月会合時には本日の利下げ可能性は低かったと見られるが、姿勢が変化した主因、少なくともそれなりの理由にドイツ経済があるのか
- 明らかに経済状態や経済活動はインフレ率に影響を及ぼす
- 我々は、経済活動のインフレへの影響を考慮している
- 12月にはより多くのデータが得られると述べていた。これらが同じような方向を示すのであれば、12月利下げの扉が大きく開くと解釈して良いか
- 扉を開いたとは述べていない
- それぞれの会合毎にデータを見ると繰り返している
- データ依存であり、単一データ(data point)や他のものには依存していない
- 本日の事例は、データ依存であることの好例だと考えている
- 中東の緊張がエネルギー価格に波及する可能性について言及した。中国の国内刺激策は、巨額で、内需を通じてエネルギー価格の圧力が復活し、インフレにつながる可能性があるのではないか。中東の緊張と合わせて今後数か月注視するのか
- 中東で起きている主要な対立と恐ろしい紛争は懸念事項のひとつである
- 我々は経済的な帰結、特に貿易への影響を見ている
- 原油価格への影響にも注意を払っており、これは中国の質問にも関連する
- 中国で何が起きるか、どのような刺激策が講じられるかは、原油価格などの消費価格への影響を示すものでもある
- 我々はこれらすべての構成要素に注目している
- 経済成長について。軟着陸(soft landing)は依然としてメインシナリオなのか、そして関心がインフレ懸念から成長懸念に移行しつつあるという見方は正しいか
- 我々が保有している情報を基にすれば、景気後退(recession)は視野に入っていない
- あなたが言及したように、依然として軟着陸(soft landing)を見ている
- 成長率については、インフレ率に影響を及ぼす範囲で懸念しており、インフレ率への影響のため、我々は双方に注意を払わなければならない
- 声明文の金利は依然として制限的、という文言について。中立金利が観測不可能なので、制限的であることも観測不可能な概念ではないかと考えた。理事会では制限的がどこで止まるのか議論をはじめたのではないか。制限的はどこで止まり、どこで緩和的がはじまるのかの見解を教えてほしい
- 我々にとって、現在が制限的であることに疑問の余地はない
- 中期的かつ持続的に2%の目標に、まだ達していないことにも疑問の余地はない
- 中期的かつ持続的な目標を確実にするためには、我々はさらに待つ必要がある
- 冒頭説明で更新されたインフレ見通しの評価に言及している。これは9月の見通しを指しているのか、理事会内で9月以降に更新されたのか。更新されたのであれば、インフレ見通しの実際の更新についてもう少し教えて欲しい
- 我々の現時点でのインフレ評価は、入手可能なすべての数字に基づいており、現在のインフレ率の見解と、今後の潜在的な影響を導いている
- 12月の予測作成の際には、厳密、厳格に実施され、公表される
- インフレ率は間違いなく、先ほど言及したようにディスインフレの軌道にのっている
- ECBはインフレ率の急激な低下に驚いて、9月にはまったく予想されていなかった利下げに踏み切ったのか
- 1.7%のインフレ率を予想していたが、予想していなかったかは定かではないが、アナリストや予想を仕事にしている人たちや市場を見ると、今回の数字には皆、少し驚いていたように思う
- ディスインフレの過程が順調に進んでいるという自信を高めたことは確かである
- ただし、我々はデータ依存であり、単一のデータ(data point)には依存していない
- HICPが1.7%でコアが2.7%だから決定した訳ではない
- 我々には一連の情報やデータが必要である
- 数か月前にインフレ率の首の骨を折るとユーロ圏の人々に約束したことに関連して。あなたは、インフレ率が再び上昇するという事実や、サービス部門や食料価格や普通の人々が懸念しているものを見た時、首の骨を折ったと言えるか
- 首の骨が完全に折れたわけではないが、折れかかっている
- 昨晩の理事会で行った、招待国であるスロベニアの経済発展に関する興味深いスピーチに関して。スロベニアの興味深い発展から他の国が学べることがあるか、再度簡単にまとめて欲しい
- スロベニアの美しい例を用いて伝えたかった主要なメッセージは不確実性の時代には2つの選択肢があるということである
- 諦めて苦しむか、落ち着いて不確実性を好機と捉えるかであり、これはスロベニアが独立し、インフレと戦い、経済的に回復した際に行ったことである
- 2つ目の教訓は、(経済が)拡大し繁栄した際には広く分配する必要であることで、特に情報格差(digital divide)のリスクがある時代においては、そうである
- 困難な時こそ、自制する必要があり、改革を推し進める必要があり、統合と確信を続ける必要がある
- 利下げをしても金融調達環境が引き続き制限的であるという点は、今回の決定や議論でどれほど重要だったか
- 中期的な2%目標を達成することへの自信を持てるまでは、引き続き制限的であることが必要だと確信している
- 最近の経済的なサプライズは、12月の成長率見通しの大幅下方改定につながるか
- 12月の見通しがどうなるかを本日伝えることはできない
- ユーロ圏の景気後退を予想していないと述べたが、少なくともドイツには懸念されるデータがある。ユーロ圏が景気後退に陥る可能性はまだあるのか
- 加盟国のひとつが大きく、困難な状況に直面しているとしても、ユーロ圏全体が同じ状況に直面するとは限らない
- 現時点で、ユーロ圏の景気後退(recession)は見ていない
- 財政健全化と、政府の財政赤字削減や公的債務削減の必要について。IMFも数日前に同じことを述べている。財政健全化に失敗した場合の市場のリスクは何か
- 我々は、必要とされる財政健全化と、成長改革の投資の適切な均衡とバランスを確認するような財政統治枠組みを保有している
- 加盟国がガードレールを守り遵守するのであれば、活動する上で適切な環境だと考えている
- 銀行統合について。ユーロ圏では大きな議論がある。均衡統合はユーロ圏にとって世界市場で競争力を強める好機になると考えているか
- こうしたプロジェクトをどのように進めるかは、銀行自身が決めることである
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年10月18日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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