2024年10月02日

ユーロ圏消費者物価（24年9月）－ついに総合指数が前年比2％割れに

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1．結果の概要：総合指数は2％割れ

10月1日、欧州委員会統計局（Eurostat）は9月のユーロ圏のＨＩＣＰ（Harmonized Indices of Consumer Prices：ＥＵ基準の消費者物価指数）速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
・前年同月比は1.8％、市場予想1（1.8％）と一致、前月（2.2％）から低下した（図表1）
・前月比は▲0.1％、予想（0.0％）より下振れ、前月（0.1％）からマイナスに転じた

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2】
・前年同月比は2.7％、予想（2.7％）と一致、前月（2.8％）から低下した（図表2）
・前月比は0.1％、前月（0.3％）から低下した

（図表1）ユーロ圏のＨＩＣＰ上昇率/（図表2）ユーロ圏のＨＩＣＰ上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアＣＰＩ、米国の消費者物価指数のコアＣＰＩに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアＣＰＩや米国のコアＣＰＩとは若干定義が異なる。

2．結果の詳細：エネルギーの前年比伸び率のマイナス幅が拡大

9月のＨＩＣＰ上昇率3（前年同月比）は全体で1.8％となり、8月（2.2％）から大幅に低下し、物価目標の2％を下回った。「コア部分（＝エネルギーと飲食料を除く総合）」も2.7％と8月（2.8％）からやや低下したが、低下幅は総合指数と比較して限定的だった。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料（アルコール含む）」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財（飲食料も除く）」が7月0.7％→8月0.4％→9月0.4％となった。「財」は8月にやや低下した後、横ばい推移となった。一方、「サービス」（エネルギーを除く）は7月4.0％→8月4.1％→9月4.0％と4％前後の高めの水準での横ばい推移が継続している。前年同月比寄与度は、「財」が0.10％ポイント程度、「サービス」が1.65％ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で7月1.2％→8月▲3.0％→9月▲6.0％とマイナス幅を拡大させた。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.76％ポイント程度と見られ、9月の総合指数の前年比伸び率低下の主因となった（前掲図表2）。
（図表3）ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/（図表4）ユーロ圏のインフレ率（季節調整値）
「飲食料（アルコール含む）」は、前年同月比で2.4％（8月2.3％）とやや上昇、ここのところ横ばい圏での推移となっている（図表3）。内訳を見ると、飲食料のうち加工食品の伸び率は2.7％（8月2.7％）で横ばい、未加工食品は1.5％（8月1.1％）とやや上昇だった。飲食料の前年同月比寄与度は0.52％ポイント程度（8月は0.46％ポイント）と見られる。

物価上昇の勢いをＥＣＢが公表する季節調整済系列で確認すると（図表4）、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が2.2％（8月2.2％）、コアが3.0％（8月3.2％）、エネルギーを除く財が1.1％（8月0.9％）、サービスが4.1％（8月4.4％）、飲食料が3.2％（8月2.5％）となった。サービスが高水準ながら減速を続ける一方で、財や飲食料の勢いに加速が見られる形となっている。その結果、総合指数の物価上昇の勢いは比較的安定している。
（図表5）ユーロ圏ＨＩＣＰ上昇率（前年同月比）/（図表6）ユーロ圏ＨＩＣＰ上昇率（前月比）
国別のＨＩＣＰ上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは4か国、残りの16か国は低下した（図表5）。また、過半の12か国が物価目標の2％を下回った。なお、前月比では20か国中9か国がプラス、11か国がマイナスの伸び率となった（図表6）。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ（以降も特に断りがない限り同様）。
 
 

（お願い）本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年10月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

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(取材・講演依頼)

03-3512-1818

経歴
  • 【職歴】
    　2006年　日本生命保険相互会社入社（資金証券部）
    　2009年　日本経済研究センターへ派遣
    　2010年　米国カンファレンスボードへ派遣
    　2011年　ニッセイ基礎研究所（アジア・新興国経済担当）
    　2014年　同、米国経済担当
    　2014年　日本生命保険相互会社（証券管理部）
    　2020年　ニッセイ基礎研究所
    　2023年より現職

    　・SBIR（Small Business Innovation Research）制度に係る内閣府スタートアップ
    　　アドバイザー（2024年4月～）

    【加入団体等】
    　・日本証券アナリスト協会　検定会員

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