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- オーストラリア健全性規制庁のコーポレートプラン2024-25-オーストラリアの健全性規制の方向性-
2024年10月11日
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1――APRA コーポレートプラン2024-25について
1|APRAコーポレートプランとは
コーポレートプランとは、APRA(オーストラリア健全性規制庁)が毎年策定する、規制上の優先事項を推進する戦略的計画と、その優先事項に対処するためのアジェンダの概要を示したものである。このコーポレートプランは、金融機関が、預金者・保険契約者・年金基金のメンバーなどに対する財務的義務を果たせるようにサポートすることを目的としたものである。
またコーポレートプランでアジェンダを詳細に公表することで規制の透明性も高まり、データ収集や政策変更に関する優先事項も含まれていることで規制対象である金融機関が将来の変化に備えやすくなるという効果もある。
コーポレートプランとは、APRA(オーストラリア健全性規制庁)が毎年策定する、規制上の優先事項を推進する戦略的計画と、その優先事項に対処するためのアジェンダの概要を示したものである。このコーポレートプランは、金融機関が、預金者・保険契約者・年金基金のメンバーなどに対する財務的義務を果たせるようにサポートすることを目的としたものである。
またコーポレートプランでアジェンダを詳細に公表することで規制の透明性も高まり、データ収集や政策変更に関する優先事項も含まれていることで規制対象である金融機関が将来の変化に備えやすくなるという効果もある。
2|コーポレートプラン2024-25の概要
今回策定されたAPRAの2024-25年コーポレートプランでは、オーストラリアの金融システムの安定性を強化するため、さまざまな施策が講じられている。まず、昨年のシリコンバレーバンクの破綻やクレディ・スイスの買収を教訓として、銀行の自己資本および流動性基準の強化が優先事項として掲げられている。これにより、銀行が市場のストレスに耐える能力を高め、将来的な危機に備えるための強固な基盤が提供される。また、これに伴い資本規制の見直しも行われ、APRAは金融機関に対して、より厳格なリスク管理基準を課す方針を明確に示している。
さらに、オペレーショナル・リスクに対する規制も強化される予定であり、新たに導入されるPrudential Standard CPS 230 Operational Risk(オペレーショナル・リスク管理基準)は、金融機関がサイバー・リスクやデジタル依存による脅威に対処する能力を強化することを目的としている。APRAは、デジタル化が進む中で、金融システムにおけるオペレーショナル・リスクが急増していることを指摘し、業界全体でのリスク管理強化を求めている。
さらに今回のコーポレートプランでは、システミック・リスクに対するシステム全体のストレステストを初めて導入するという記載がある。このテストは、オーストラリアの金融システム全体にわたるリスクの相互依存性と影響の伝播を評価し、異なる業界(銀行、年金、保険)間でのリスクの拡大や潜在的な弱点を把握することを目的としている。APRAの議長ジョン・ロンズデールは、2025年にこのストレステストを展開し、大規模な金融機関を段階的に対象にする計画を発表している。これは、テクノロジー障害、商業不動産市場の崩壊、気候変動などのシステム全体に影響を及ぼすリスクシナリオを検討するための試みであり、国際的な規制機関とも連携して進められている。
また、気候変動リスクも今回のコーポレートプランで重要視されており、金融機関は長期的な経済的影響を評価し、『気候変動による財務リスクを意思決定プロセスに組み込むことを期待する』とされている。
最後に、今回のコーポレートプランではデータ収集と公開に関する優先事項も強調されており、透明性の向上が進められている。前回報告した内部的な組織再編1では、生命保険・医療保険部門と損害保険部門が別々に組織化され、それぞれに特化した監督体制が強化される。これにより、APRAの監督能力が向上し、より効果的なリスク管理が実現される見通しである。
今回策定されたAPRAの2024-25年コーポレートプランでは、オーストラリアの金融システムの安定性を強化するため、さまざまな施策が講じられている。まず、昨年のシリコンバレーバンクの破綻やクレディ・スイスの買収を教訓として、銀行の自己資本および流動性基準の強化が優先事項として掲げられている。これにより、銀行が市場のストレスに耐える能力を高め、将来的な危機に備えるための強固な基盤が提供される。また、これに伴い資本規制の見直しも行われ、APRAは金融機関に対して、より厳格なリスク管理基準を課す方針を明確に示している。
さらに、オペレーショナル・リスクに対する規制も強化される予定であり、新たに導入されるPrudential Standard CPS 230 Operational Risk(オペレーショナル・リスク管理基準)は、金融機関がサイバー・リスクやデジタル依存による脅威に対処する能力を強化することを目的としている。APRAは、デジタル化が進む中で、金融システムにおけるオペレーショナル・リスクが急増していることを指摘し、業界全体でのリスク管理強化を求めている。
さらに今回のコーポレートプランでは、システミック・リスクに対するシステム全体のストレステストを初めて導入するという記載がある。このテストは、オーストラリアの金融システム全体にわたるリスクの相互依存性と影響の伝播を評価し、異なる業界(銀行、年金、保険)間でのリスクの拡大や潜在的な弱点を把握することを目的としている。APRAの議長ジョン・ロンズデールは、2025年にこのストレステストを展開し、大規模な金融機関を段階的に対象にする計画を発表している。これは、テクノロジー障害、商業不動産市場の崩壊、気候変動などのシステム全体に影響を及ぼすリスクシナリオを検討するための試みであり、国際的な規制機関とも連携して進められている。
また、気候変動リスクも今回のコーポレートプランで重要視されており、金融機関は長期的な経済的影響を評価し、『気候変動による財務リスクを意思決定プロセスに組み込むことを期待する』とされている。
最後に、今回のコーポレートプランではデータ収集と公開に関する優先事項も強調されており、透明性の向上が進められている。前回報告した内部的な組織再編1では、生命保険・医療保険部門と損害保険部門が別々に組織化され、それぞれに特化した監督体制が強化される。これにより、APRAの監督能力が向上し、より効果的なリスク管理が実現される見通しである。
3|コーポレートプラン2023-24との主な変更点
2023-24年のコーポレートプランは、インフレや金利上昇、サイバー攻撃、気候変動リスクなど、急速に変化するリスクに対応することが主な目的であった。特に、シリコンバレーバンクの破綻やクレディ・スイスの買収といった国際的な金融不安を教訓に、システム全体に対するリスク管理が強調されていた。また、気候関連リスクに対する取り組みも大きな焦点であり、保険業界における気候リスクの評価が進められていた。
これに対して、2024-25年のコーポレートプランでは、これまでのリスク管理の強化に加え、銀行の資本基準と流動性基準のさらなる見直しが行われている。加えて、データ収集の改善や、コーポレートプラン全体の透明性向上も新たな要素として盛り込まれている。また、組織再編によって各部門の特化した監督が強化され、リスク管理の効率性が向上することが期待されている。
2023-24年のコーポレートプランは、インフレや金利上昇、サイバー攻撃、気候変動リスクなど、急速に変化するリスクに対応することが主な目的であった。特に、シリコンバレーバンクの破綻やクレディ・スイスの買収といった国際的な金融不安を教訓に、システム全体に対するリスク管理が強調されていた。また、気候関連リスクに対する取り組みも大きな焦点であり、保険業界における気候リスクの評価が進められていた。
これに対して、2024-25年のコーポレートプランでは、これまでのリスク管理の強化に加え、銀行の資本基準と流動性基準のさらなる見直しが行われている。加えて、データ収集の改善や、コーポレートプラン全体の透明性向上も新たな要素として盛り込まれている。また、組織再編によって各部門の特化した監督が強化され、リスク管理の効率性が向上することが期待されている。
4|変更点から推察される、今後の規制の方向性
2024-25年のコーポレートプランにおける変更点から、APRAは今後も金融システム全体の安定性維持に向けたリスク管理を強化する方向に進むと考えられる。特に、デジタル化の進展によるサイバー・リスクや、気候変動によるリスクの増大に対して、金融機関が柔軟かつ迅速に対応できるようにすることが重要視されている。また、銀行や保険業界におけるオペレーショナル・リスク管理の厳格化により、将来的な金融危機に対する備えが強化されると推測される。
さらに、組織再編によって特化した監督体制が整備されたことにより、金融機関の監視と管理がより効率的かつ効果的に行われると期待される。
2024-25年のコーポレートプランにおける変更点から、APRAは今後も金融システム全体の安定性維持に向けたリスク管理を強化する方向に進むと考えられる。特に、デジタル化の進展によるサイバー・リスクや、気候変動によるリスクの増大に対して、金融機関が柔軟かつ迅速に対応できるようにすることが重要視されている。また、銀行や保険業界におけるオペレーショナル・リスク管理の厳格化により、将来的な金融危機に対する備えが強化されると推測される。
さらに、組織再編によって特化した監督体制が整備されたことにより、金融機関の監視と管理がより効率的かつ効果的に行われると期待される。
(2024年10月11日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1777
経歴
- 【職歴】
2007年 日本生命保険相互会社入社
2024年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・年金数理人
植竹 康夫のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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