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- APRAの組織再編について-オーストラリアの健全性規制の体制整備-
2024年09月10日
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1――APRAについて
1|APRAとは
APRA(The Australian Prudential Regulation Authority、オーストラリア健全性規制庁)とは、日本における金融庁にあたるものであり、銀行、保険、退職年金等各機関を監督し、豪州議会に説明責任を負う独立法定機関として1998年に設立された。
APRAの役割は、金融機関の安全性と健全性を維持することであり、あらゆる状況下で金融機関が金融上の責務を果たせるよう健全性を監督している。
APRA(The Australian Prudential Regulation Authority、オーストラリア健全性規制庁)とは、日本における金融庁にあたるものであり、銀行、保険、退職年金等各機関を監督し、豪州議会に説明責任を負う独立法定機関として1998年に設立された。
APRAの役割は、金融機関の安全性と健全性を維持することであり、あらゆる状況下で金融機関が金融上の責務を果たせるよう健全性を監督している。
2|APRAの組織再編について
APRAは8月28日、内部組織の変更を公表した。組織再編の概要は以下のとおりである。
〇統括部門の組み換え
最も大きな変更点は、5つの業界監督グループ(銀行・損害保険・生命保険・医療保険・退職年金)を、従来は「銀行部門」「保険部門(損害保険・生命保険・医療保険)」「退職年金部門」の3つの統括部門(「銀行」「保険(損害保険・生命保険・医療保険)」「退職年金」)で区分して管理していたが、「銀行・損害保険」「生命保険・医療保険・退職年金」の2つの統括部門に再編したところにある(図の緑マス)。
〇システミック業務の併設
業界横断的リスク部門に新たにシステミックリスク業務に特化したチームも併設した(図のオレンジマス)。APRAは「これにより、リスク専門家のための中核部門(centre of excellence)が形成され、知識の移転と相互研鑚の機会が改善されるとともに、APRAが業界横断的かつシステム全体的な視点でリスクを把握できるようになる」と説明している。
なお、政策・助言部門、テクノロジー・データ部門、スタッフ・企業サービス部門および統括メンバーには大きな変更はなかった。
当変更を受け、2024年9月2日以降は以下のような組織図となった。
APRAは8月28日、内部組織の変更を公表した。組織再編の概要は以下のとおりである。
〇統括部門の組み換え
最も大きな変更点は、5つの業界監督グループ(銀行・損害保険・生命保険・医療保険・退職年金)を、従来は「銀行部門」「保険部門(損害保険・生命保険・医療保険)」「退職年金部門」の3つの統括部門(「銀行」「保険(損害保険・生命保険・医療保険)」「退職年金」)で区分して管理していたが、「銀行・損害保険」「生命保険・医療保険・退職年金」の2つの統括部門に再編したところにある(図の緑マス)。
〇システミック業務の併設
業界横断的リスク部門に新たにシステミックリスク業務に特化したチームも併設した(図のオレンジマス)。APRAは「これにより、リスク専門家のための中核部門(centre of excellence)が形成され、知識の移転と相互研鑚の機会が改善されるとともに、APRAが業界横断的かつシステム全体的な視点でリスクを把握できるようになる」と説明している。
なお、政策・助言部門、テクノロジー・データ部門、スタッフ・企業サービス部門および統括メンバーには大きな変更はなかった。
当変更を受け、2024年9月2日以降は以下のような組織図となった。
3|組織再編の目的
APRAは、組織再編の発表をした8月28日同日に「APRAコーポレートプラン2024-2025」を発表している。これは今後4年間の規制上の優先事項を推進する戦略的目標と、その優先事項に対処するためのアジェンダの概要を示したものであるが、今回の組織再編はこのコーポレートプランの実行をサポートするものとして行われたとのことだ。
コーポレートプランの戦略目標には「金融システム全体の相互関係をより良く理解し、特定されたリスクを定量化し、評価し、対応するためのプラットフォームを提供するために、APRA初のシステムストレステストを開発する」というものも挙げられており、業界横断的リスク部門に新たにシステミックリスク業務に特化したチームが併設されたこととの整合性が見て取れる。
個人的には従来「保険」として一括りにされていた損害保険と生命保険・医療保険の統括部門をなぜ分けたのかが気になるところではあるが、著者の調査の範囲では、残念ながらその理由を説明しているものは見つけられなかった。今後の規制体制の在り方の中でその理由が見えてくる可能性があるので、引き続き注視していきたい。
最後に、組織再編についてAPRAの執行部会長であるジョン・ロンズデール氏の言葉を引用する。
『ここ数年、金融システムが大規模化・複雑化するにつれ、APRAの規模と責任は増大している。デジタル環境の相互接続の性質は、ショックが国や業界を越えてより速く伝わることを意味し、我々はAPRAが重要な問題や危機に迅速かつ効果的に対応できる体制を確保する必要がある。』
『APRAは重要な問題や危機に迅速かつ効果的に対応できる体制を整える必要がある。本日発表する変更は、この進化に対応するもので、関連する専門分野(特にリスクチーム)を統合することで、知識の移転と能力開発を促進するものである。』
『APRAは今後も進化し続け、世界の同業者の中でベスト・プラクティスを維持し、オーストラリアの金融システムの安全性と安定性を確保するという中核的な使命を果たし続ける、近代的で将来を見据えた規制当局となる。』2
APRAは、組織再編の発表をした8月28日同日に「APRAコーポレートプラン2024-2025」を発表している。これは今後4年間の規制上の優先事項を推進する戦略的目標と、その優先事項に対処するためのアジェンダの概要を示したものであるが、今回の組織再編はこのコーポレートプランの実行をサポートするものとして行われたとのことだ。
コーポレートプランの戦略目標には「金融システム全体の相互関係をより良く理解し、特定されたリスクを定量化し、評価し、対応するためのプラットフォームを提供するために、APRA初のシステムストレステストを開発する」というものも挙げられており、業界横断的リスク部門に新たにシステミックリスク業務に特化したチームが併設されたこととの整合性が見て取れる。
個人的には従来「保険」として一括りにされていた損害保険と生命保険・医療保険の統括部門をなぜ分けたのかが気になるところではあるが、著者の調査の範囲では、残念ながらその理由を説明しているものは見つけられなかった。今後の規制体制の在り方の中でその理由が見えてくる可能性があるので、引き続き注視していきたい。
最後に、組織再編についてAPRAの執行部会長であるジョン・ロンズデール氏の言葉を引用する。
『ここ数年、金融システムが大規模化・複雑化するにつれ、APRAの規模と責任は増大している。デジタル環境の相互接続の性質は、ショックが国や業界を越えてより速く伝わることを意味し、我々はAPRAが重要な問題や危機に迅速かつ効果的に対応できる体制を確保する必要がある。』
『APRAは重要な問題や危機に迅速かつ効果的に対応できる体制を整える必要がある。本日発表する変更は、この進化に対応するもので、関連する専門分野(特にリスクチーム)を統合することで、知識の移転と能力開発を促進するものである。』
『APRAは今後も進化し続け、世界の同業者の中でベスト・プラクティスを維持し、オーストラリアの金融システムの安全性と安定性を確保するという中核的な使命を果たし続ける、近代的で将来を見据えた規制当局となる。』2
(2024年09月10日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1777
経歴
- 【職歴】
2007年 日本生命保険相互会社入社
2024年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・年金数理人
植竹 康夫のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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