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訪日外国人消費の動向(2024年4-6月期)-円安効果で四半期で初の2兆円超え、2024年は8兆円台が視野に

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――はじめに~2024年は過去最高の2023年(5兆3,065億円)を優に超える見込み
本稿では、観光庁「訪日外国人消費動向調査(2024年4-6月期)」を中心にインバウンド消費の状況を捉える。
1 久我尚子「訪日外国人消費の動向(2024年1-3月期)~円安効果で消費額はコロナ禍前の1.5倍、2倍の国も」、ニッセイ基礎研レポート(2024/7/4)
2――訪日外客数~2024年6月は313.6万人で2019年より+1割、首位は韓国、中国は2位で改善傾向
国籍・地域別に見ると、コロナ禍前の2019年4-6月(857万9,817人)で最も多いのは中国(27.5%)で、次いで韓国(20.8%)、台湾(15.0%)、香港(6.9%)までが5%以上で続き、東アジアが7割を占める(図表2)。一方、2024年4-6月(921万8,703人で2019年同期+63万8,886人、増減率+7.4%)で最多は韓国(22.8%、同+2.0%pt)で、次いで中国(18.9%、同▲8.6%pt)、台湾(16.3%、同+1.3%pt)、米国(8.4%、同+2.5%pt)、香港(7.1%、同+0.2%pt)までが5%以上で続き、東アジアが7割弱を占めるが、中国の比率が低下する一方、他の上位国の比率が伸びている。
また、訪日外客数の上位国を中心に2019年4-6月に対する2024年同期の増減率を見ると、米国(+53.6%)で外客数が1.5倍に増えているほか、韓国(+18.0%)や台湾(+16.2%)、香港(+10.1%)でも1割以上、増加している。
また、米国や豪州等の訪日外客数も増えているが、前稿でも述べた通り、円安による日本旅行に対する割安感が継続している影響と見られる。
2 訪日外客とは、外国人正規入国者から日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者のこと。駐在員やその家族、留学生等の入国者・再入国者は訪日外客に含まれる。
3――訪日外国人旅行消費額~コロナ禍前の1.7倍、円安効果で1人当たり消費額が2倍超の国も
ところで、この消費額の増減率(+68.6%)は訪日外客数の増減率(+7.4%)と比べて大幅に高いため、訪日客1人当たりの消費額が増えていることになる。一般客31人当たりの旅行支出額を見ると、2019年4-6月では平均15万4,967円だが、2024年同期では平均23万8,722円(2019年同期+8万3,755円、増減率+54.0%)へと大幅に増えている。
訪日客1人当たりの消費額の増加は、平均宿泊日数が若干増えた影響もあるが(2019年4-6月:8.0日、2024年同期:8.5日で+0.5日、増加率+6.3%)、何より1人・1日当たりの旅行支出額が1.5倍に増えたことが影響している(同:1万9,371円、同:2万8,085円で+8,714円、増減率+45.0%)。2019年6月末と2024年6月末を比べると、1米ドル107.79円から161.07円、1ユーロ122.49円から172.33円へと大きく円安が進行したことによる割安感から、宿泊料や買い物代などの消費額が増えたのだろう。また、国内の消費者物価上昇の影響もあげられる。総務省「消費者物価指数」によると、総合指数は2019年6月では99.8だったが2024年6月108.2(+8.4%)へと上昇している。
また、消費額の上位国を中心に2019年4-6月に対する2024年同期の増減率を見ると、米国(+194.6%)で約3倍、香港(+94.3%pt)や台湾(+86.6%pt)、韓国(+81.6%pt)で2倍前後に大幅に増えている。なお、いずれも消費額の増減率は外客数の増減率をはるかに上回って増加しているが、やはり1人当たりの旅行支出額や平均宿泊日数(台湾以外)が増えている。
一方で中国(▲16.0%)は減少しているが、外客数と同様に改善傾向にある(2019年同期と比べた増減率は2023年4-6月▲66.8%→同年7-9月▲43.8%→同年10-12月▲40.2%→2024年1-3月▲16.9%→同年4-6月16.0%)。
なお、各国籍・地域の全体に占める訪日外客数と消費額の割合の関係を見ると、訪日外客数が多い国籍・地域ほど消費額が多い傾向はあるが、宿泊日数や購買意欲の違いなどの影響が大きいようだ。
また、国籍・地域別に1人当たりの旅行支出額を見ると、2019年4-6月で最多はフランス(24万2,437円)で、次いで英国(23万7,353円)、豪州(23万3,424円)、中国(22万4,174円)、スペイン(21万7,993円)、イタリア(20万7,203円)と20万円以上で続く(図表略)。
一方、2024年4-6月で最多はフランス(41万7,536円、2019年同期+17万5,099円、増減率+72.2%)で、次いで英国(41万6,647円、同+17万9,294円、同+75.5%)、豪州(39万9,862円、同+16万6,438円、同+71.3%)、イタリア(38万2,448円、同+17万5,245円、同+ 84.6%)、スペイン(36万1,187円、同+14万3,194円、+65.7%)、米国(36万1,117円、同+17万2,053円、同+91.0%)、カナダ(35万9,217円、同+17万1,242円、同+91.1%)、ドイツ(34万5,696円、同+14万6,936円、同+73.9%)、ロシア(34万4,393円、同+18万1,930円、同+112.0%)、シンガポール(32万3,781円、同+15万3,357円、同+90.0%)までが30万円を超えて続き、2019年同期と比べて各国とも2倍前後に大幅に増えている(図表略)。
3 訪日外客からクルーズ客の人数(法務省の船舶観光上陸許可数に基づき観光庁推計)を除いたもの
(2024年08月21日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/22 | 家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年2月)-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 「トキ消費」の広がりとこれから-体験が進化、共有が自然な消費スタイル、10年後は? | 久我 尚子 | 研究員の眼 |
2025/04/08 | 2025年の消費動向-節約一服、コスパ消費から推し活・こだわり消費の広がり | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
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