2024年08月16日

2024・2025年度経済見通し(24年8月)

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2023年1月に前年比4.2%と1981年9月以来41年4ヵ月ぶりの高い伸びとなった後、政府による電気・都市ガス代の負担緩和策の影響などから鈍化傾向が続き、2023年9月以降は2%台で推移している。
為替変動による消費者物価への影響 2021年以降、ほぼ一貫して物価の押し上げ要因となってきた円安には歯止めがかかりつつある。今回の見通しでは、米国が2024年9月から利下げに転じることを前提に円高・ドル安が進み、2025年度末には1ドル=130円台半ばとなることを想定している。このため、為替変動による消費者物価の押し上げ幅(前年比)は、2024年4-6月期をピークに2025年度末にかけて縮小することが見込まれる。ただし、これまでの円安による累積的な効果は残るため、前年比でみた押し上げ幅がマイナスとなることはないだろう。
エネルギー価格は、2024年4月に1年3ヵ月ぶりに上昇に転じた後、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の引き上げ、電気・ガス価格の激変緩和策の値引き額半減によって、5月、6月と大きく上昇した。エネルギー価格は、激変緩和策がいったん終了する7月には前年比で二桁の高い伸びとなることが見込まれる。その後、9~11月(8~10月使用分)は「酷暑乗り切り支援策」によって、電気・都市ガス代が大きく押し下げられるため、エネルギー価格の上昇率は鈍化するが、支援策が終了する12月には再び上昇率が高まるだろう。

政府は、ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和策を2024年末までとしているが、足もとのガソリン店頭価格は、補助金がなければ1リットル当たり190円台となっており、円高、原油安が大きく進まない限り、2024年末でも政府が目標としている175円を大きく上回る。ガソリン、灯油等に対する激変緩和策は2025年入り後も継続される公算が大きい。

現時点では、電気・都市ガスの支援策は2024年11月まで、ガソリン、灯油等の激変緩和策は2024年度末まで現行通り、2025年度は補助率を縮小した上で継続することを想定している。
激変緩和策による消費者物価(除く生鮮)への影響 激変緩和策による消費者物価上昇率への影響は、2023年10-12月期まではコアCPI上昇率の押し下げ要因となっていた。しかし、2024年1-3月期に押し上げ要因に転じた後、電気・都市ガス代の激変緩和策終了の影響で2024年7-9月期には押し上げ幅が0.7%程度まで拡大する。2024年9~11月は「酷暑乗り切り支援策」によって電気・都市ガス代の価格は低下するが、前年の価格水準が支援策によって押し下げられているため、前年比でみた影響はプラスが続くだろう。

激変緩和策によるコアCPI上昇率への影響を年度ベースでみると、2022年度が▲0.7%程度、2023年度が▲0.3%程度、2024年度が0.5%程度、2025年度が0.5%程度となることが見込まれる。
 
コアCPI上昇率は、「酷暑乗り切り支援策」によって電気・都市ガス代の伸びが鈍化する2024年10月にはいったん2%を割り込むが、支援策終了後には再び2%台となるだろう。その後は、賃上げに伴うサービス価格の上昇を円高による財価格の上昇率鈍化が打ち消す形で、コアCPIの伸びは鈍化傾向が続き、2025年度には日銀の物価目標である2%を割り込むことが予想される。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測 財・サービス別には、2022年度は物価上昇のほとんどがエネルギー、食料(除く生鮮食品、外食)を中心とした財の上昇によるものだったが、2023年度はサービス価格の上昇率が高まり、物価上昇の中心は財からサービスにシフトしつつある。2024年度後半から2025年度にかけては消費者物価上昇率への寄与度はサービスが財を上回るだろう。

コアCPIは、2023年度の前年比2.8%の後、2024年度が2.3%、2025年度が1.8%、コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は2023年度の前年比3.9%の後、2024年度が同2.0%、2025年度が1.7%と予想する。

 
日本経済の見通し(2024年4-6月期1次QE(8/15発表)反映後)
米国経済の見通し
欧州(ユーロ圏)経済の見通し
 
 

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(2024年08月16日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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