- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険会社経営 >
- 2023年度 生命保険会社決算の概要(全社集計確報と、トピックス追加版)
2023年度 生命保険会社決算の概要(全社集計確報と、トピックス追加版)

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――保険業績(全社)
「伝統的生保」の新契約年換算保険料は、19.2%増加(前年度 19.3%増加)となった。保有契約年換算保険料は2.5%増加(前年度0.3%増加)。以下同様に保険料ベースでの増減を示す。
「外資系生保」は、新契約が6.0%増加(前年度 10.0%増加)し、保有契約は2.4%増加(前年度 ▲0.2%減少)した。
「損保系生保」は、新契約が1.0%増加(前年度 21.8%増加)で、保有契約は3.1%増加(前年度 1.5%増加)となった。
「異業種系生保等」は新契約が17.2%増加(前年度 13.8%増加)、保有契約は5.5%増加(前年度 4.5%増加)となった。
基礎利益(再び図表-1)は、全体では対前年度41.5%と大幅に増加した。主に2022年度に急増していた新型コロナウィルス関連の給付金支払いが減少したことが増加の要因である。基礎利益が増加した会社数は、41社のうち36社にのぼる。
2――大手中堅9社の収支状況
なお、大手グループにおいては、複数の保険会社があって、保険販売面で医療保険・金融機関窓販などに役割の分担がなされている面があるので、収支の方もグループ連結でみるべきと考えられるが、今のところ基礎利益など収支面のほとんどの項目においては、グループ内の保険子会社の占める割合が小さいことや、もとからある9社単体の開示情報が比較的多いこと、からここでは従来通りそれぞれ単体9社でみることにしている。
国内金利については、マイナス金利の解除など日銀の金融政策が修正される中、代表的な10年国債利回りでみると、2024.3月末には0.750%となり、依然として低金利とはいえ、徐々に戻ってきた。
為替については、欧米の金融引締め政策の中で、内外金利差が拡大したことなどにより、対米ドルでは2024.3月末には151.41円/ドル、対ユーロでは163.24円/ユーロと、引き続き円安、ドル高・ユーロ高の方向に進んだ。他の通貨では、従来から外貨建保険で比較的よく使われる豪ドルについても円安の方向に動いてきた。
多くの生保は、従来、国内債券中心の資産運用をしてきたため、国内金利が上昇する中で、9社すべてが含み損を抱える状況となっている。また外国債券も金利上昇の影響により価格が下落しているところではあるが、円安がそれを緩和する状況となっており、総合すると含み益が増加した、2022年度あたりから、米国では債券含み損を抱えた銀行の破綻も報道されており、その後それほど大きな悪影響はないようだが、引き続きわが国においても金融機関の財務状況への悪影響が懸念される。
生命保険会社の場合は、資産だけでみると含み損ではあっても、対応する長期負債(責任準備金)もそれ以上に負担が軽くなっているため、全体としては財務状況に問題はないと思われる。(そのあたりの対応状況をきちんと評価しようとするのが、経済価値ベースのソルベンシー指標である。)
費差益については、2023年度にはわずかに増加したものの、かつての規模や危険差・利差の水準からすると、費差はほぼないといっていい水準である。費差益は、簡単に言えば、収入保険料のうち事業費を賄うための付加保険料と、実際の事業費支出の差である。付加保険料については、過去予定利率の引下げ、すなわち保険料の値上げを緩和するために逆にセットで引き下げられた会社が多く、その影響で費差益が減少傾向にあると考えられる。
(2024年07月30日「基礎研レポート」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
安井 義浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/25 | 年金や貯蓄性保険の可能性を引き出す方策の推進(欧州)-貯蓄投資同盟の構想とEIOPA会長の講演録などから | 安井 義浩 | 基礎研レター |
2025/04/18 | 金融セクターにおけるリスクと脆弱性(欧州 2025春)-ESAの合同報告書より。地政学的リスクとサイバーリスクに重点。 | 安井 義浩 | 基礎研レター |
2025/04/11 | バミューダ金融当局の2025事業計画-今後再保険などで注目されるかもしれない。 | 安井 義浩 | 基礎研レター |
2025/03/21 | 宇宙天気現象に関するリスク-太陽フレアなどのピークに入っている今日この頃 | 安井 義浩 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く -
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【2023年度 生命保険会社決算の概要(全社集計確報と、トピックス追加版)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
2023年度 生命保険会社決算の概要(全社集計確報と、トピックス追加版)のレポート Topへ