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2020年度 生命保険会社決算の概要
基礎研REPORT(冊子版)9月号[vol.294]
保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1―保険業績(全社)
一方、「平均予定利率」は、過去に契約した高予定利率契約の減少により、毎年緩やかに低下し続けている。現在、新規契約は予定利率1%未満のものが主流であることから、より緩やかにはなるとしても、低下傾向は続くだろう。
以上の結果、利差益は、ほぼゼロ金利の状況にあっても、2020年度も逆ざや解消後最高水準を更新し、8,041億円、4.3%の増加となった。基礎利益の動向は、危険差益や費差益の大幅な好転が見込めない中、利差益の増加に依存している現状だが、経済環境に大きく左右されることもあり、将来にむけて楽観はできない。
3|当期利益は実質増加~内部留保重視、配当も安定的な水準
基礎利益はほぼ横ばい、キャピタル損益は大きく増加し、その合計額は25,901億円と対前年度6,337億円の増加となった。危険準備金、価格変動準備金、追加責任準備金などの調整を行った実質的な利益は、23,538億円と前年度から大幅に増加した。[図表7]
3―トピックス
生命保険では、まず新型コロナウィルス感染症で亡くなったケースでは死亡保険金が支払われる。しかもこれは「災害」に該当するとされ、もし「災害割増特約」といった割増支払いの保険に加入していた場合には、上乗せの保険金が支払われることになる。
今般の新型コロナウィルス感染症は、当初は規定がなかったため、災害割増の対象となっていなかったが、感染拡大にあわせて支払対象とするように各社の取扱いが拡大されてきた。
また、入院した場合に給付金が支払われるのは、従来通りだが、その他にも、自宅または病院と同等とみなされる施設(ホテルなど)での治療も、入院給付金支払の対象とされた。
こうして、保険金・給付金の支払い対象を急遽拡大して、契約者への便宜を図ったきたわけが、2020年度決算では軽微な影響に留まっている。国内大手社であれば、通常時でも数千億円の保険金・給付金支払いがある中で、新型コロナウィルス感染症関係の支払いは数億~数十億円と1%にも満たない規模であり、生命保険会社の収支状況をすぐに悪化させるほどではなかった。
ただし、2021年夏以降の感染者数の再拡大、特に自宅療養者の急増により、入院給付金の支払が増加してきている。そのため、今後の収支への影響を注視しておく必要がある。
2|外貨建資産の動向
2020年度においても、外貨建資産は金額、構成比とも伸びた。[図表9]
保険販売業績としては、外貨建保険販売は好調ではなかったものの、低金利などの状況下における、より高い収益性を求める意図で、外貨建資産に重点的に投資したことが推察される。
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03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2021年09月07日「基礎研マンスリー」)
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