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- 貸出・マネタリー統計(24年6月)~都銀の貸出が記録的な伸びに、日銀の資金供給量は前年割れが視野に
2024年07月16日
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1.貸出動向:都銀の貸出が記録的な伸びに
(貸出残高)
7月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、6月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.64%と前月(同3.31%)から大きく上昇した(図表1)。伸び率は2023年5月以来の高水準にあたる。経済活動再開や原材料価格の高止まりに伴う資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが複合的に寄与する形で堅調な推移が続いているとみられる。
業態別では、都銀の伸びが前年比4.45%(前月は3.89%)と急拡大した(図表2)。都銀の伸び率はコロナ禍という特殊要因による急伸局面(2020年5月~2021年3月)を除けば、データを遡れる1992年7月以降で最大となっている。また、地銀(第2地銀を含む)の伸びも前年比2.95%(前月は2.81%)とやや上昇している。地銀ではゼロゼロ融資(コロナ対応の実質無利子・無担保融資)の返済が重荷になっている面もあるとみられ、都銀ほどの増勢の勢いはみられない。
7月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、6月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.64%と前月(同3.31%)から大きく上昇した(図表1)。伸び率は2023年5月以来の高水準にあたる。経済活動再開や原材料価格の高止まりに伴う資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが複合的に寄与する形で堅調な推移が続いているとみられる。
業態別では、都銀の伸びが前年比4.45%(前月は3.89%)と急拡大した(図表2)。都銀の伸び率はコロナ禍という特殊要因による急伸局面(2020年5月~2021年3月)を除けば、データを遡れる1992年7月以降で最大となっている。また、地銀(第2地銀を含む)の伸びも前年比2.95%(前月は2.81%)とやや上昇している。地銀ではゼロゼロ融資(コロナ対応の実質無利子・無担保融資)の返済が重荷になっている面もあるとみられ、都銀ほどの増勢の勢いはみられない。
(貸出金利)
5月の新規短期貸出金利は0.237%と前月(0.37%)から低下した(図表5)。当統計は月々の振れが大きいため、移動平均で均してトレンドを見ると、新規短期貸出金利は2020年以降低位で底這う展開が続いている。日銀が3月にマイナス金利政策を解除したことを受けて、短期市場金利は明確に上昇しているものの、殆どの銀行で短期プライムレートが据え置かれたことで、全体への影響は限定的に留まっているとみられる。
5月の新規長期貸出金利は0.914%と伸びが急伸していた前月(1.27%)から低下したものの、移動平均で見ると、2021年以降、国債利回りの上昇を背景として緩やかな上昇基調にある(図表6)。
日銀が3月にYCC(長短金利操作)を撤廃したほか、追加利上げや長期国債買入れ減額に対する観測の高まりを受けて10年国債利回りは上昇基調にあり、足元では1%の節目を超えている。7月末の日銀MPMでは長期国債買入れの具体的な減額方針が決まり、速やかに開始される予定であるため、長期金利との連動性の高い新規長期貸出金利は引き続き緩やかな上昇トレンドを示す可能性が高いだろう。
5月の新規短期貸出金利は0.237%と前月(0.37%)から低下した(図表5)。当統計は月々の振れが大きいため、移動平均で均してトレンドを見ると、新規短期貸出金利は2020年以降低位で底這う展開が続いている。日銀が3月にマイナス金利政策を解除したことを受けて、短期市場金利は明確に上昇しているものの、殆どの銀行で短期プライムレートが据え置かれたことで、全体への影響は限定的に留まっているとみられる。
5月の新規長期貸出金利は0.914%と伸びが急伸していた前月(1.27%)から低下したものの、移動平均で見ると、2021年以降、国債利回りの上昇を背景として緩やかな上昇基調にある(図表6)。
日銀が3月にYCC(長短金利操作)を撤廃したほか、追加利上げや長期国債買入れ減額に対する観測の高まりを受けて10年国債利回りは上昇基調にあり、足元では1%の節目を超えている。7月末の日銀MPMでは長期国債買入れの具体的な減額方針が決まり、速やかに開始される予定であるため、長期金利との連動性の高い新規長期貸出金利は引き続き緩やかな上昇トレンドを示す可能性が高いだろう。
2.マネタリーベース:前年割れが視野に
7月2日に発表された6月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比0.6%と、前月(同0.9%)から低下した(図表7)。伸び率はコロナオペの回収という特殊要因によって伸びが大きく押し下げられていた昨年7月以来の低水準にあたる。
伸び率低下の主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の伸び率低下である。昨年終盤以降、資金供給要因である国債買入ペースが落ち着いていることで伸びが抑制された(図表8)。
また、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.6%(前月も▲1.6%)日銀券発行高の伸び率が同▲1.6%(前月は▲1.3%)とともに前年割れが続いており(図表7)、マネタリーベースの伸び率抑制に繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、6月のマネタリーベースは前月比3.7兆円減と2カ月連続で減少を示している(図表10)。
今後は7月末の日銀MPMにおいて資金供給要因である長期国債買入れの具体的な減額方針が決まり、速やかに開始される予定であるため、マネタリーベースは前年割れに転じることが見込まれる。
伸び率低下の主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の伸び率低下である。昨年終盤以降、資金供給要因である国債買入ペースが落ち着いていることで伸びが抑制された(図表8)。
また、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.6%(前月も▲1.6%)日銀券発行高の伸び率が同▲1.6%(前月は▲1.3%)とともに前年割れが続いており(図表7)、マネタリーベースの伸び率抑制に繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、6月のマネタリーベースは前月比3.7兆円減と2カ月連続で減少を示している(図表10)。
今後は7月末の日銀MPMにおいて資金供給要因である長期国債買入れの具体的な減額方針が決まり、速やかに開始される予定であるため、マネタリーベースは前年割れに転じることが見込まれる。
3.マネーストック:定期預金等への資金流入が一服
7月9日に発表された6月分のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比1.48%(前月は1.85%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同0.99%(前月は1.29%)と、ともに3カ月連続で低下した(図表11)。
M3の内訳では、前月同様、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月3.3%→当月3.0%)の伸びが低下し、全体の伸び率低下に繋がった。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲1.2%→当月▲1.5%)のマイナス幅拡大も全体の伸びを抑制した(図表12)。
M3の内訳では、前月同様、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月3.3%→当月3.0%)の伸びが低下し、全体の伸び率低下に繋がった。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲1.2%→当月▲1.5%)のマイナス幅拡大も全体の伸びを抑制した(図表12)。
なお、定期預金などの準通貨(前月は前年比▲0.3%→当月は同▲0.4%)のマイナス幅は3ヵ月ぶりに拡大に転じた(図表13)。前月比で見ても4月以降2カ月連続で3兆円を超える増加を見せていたものが、6月は減少に転じている。
3月半ばに日銀がマイナス金利の解除など金融政策の正常化に踏み切ったことを受け、多くの銀行が預金金利の引き上げに動いたことを受けて(図表14)、4・5月は準通貨への大幅な資金流入が発生したが、6月は流入が一服したことになる。流入一服が一時的なものなのか、それとも金利感応度が高い層のシフトが一旦終了したのかは不明であり、今後の動向が注目される。
広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比2.98%(前月は3.31%)と低下した(図表11)。
内訳では、既述の通り、M3の伸びが低下したほか、規模の大きい金銭の信託(前月13.6%→当月13.1%)や投資信託(私募やREITなども含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲2.9%→当月▲4.5%)の伸び率も低下したためだ。一方、国債(前月2.6%→当月5.9%)、外債(前月4.4%→当月4.7%)の伸び率上昇は一定の支えとなった。
3月半ばに日銀がマイナス金利の解除など金融政策の正常化に踏み切ったことを受け、多くの銀行が預金金利の引き上げに動いたことを受けて(図表14)、4・5月は準通貨への大幅な資金流入が発生したが、6月は流入が一服したことになる。流入一服が一時的なものなのか、それとも金利感応度が高い層のシフトが一旦終了したのかは不明であり、今後の動向が注目される。
広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比2.98%(前月は3.31%)と低下した(図表11)。
内訳では、既述の通り、M3の伸びが低下したほか、規模の大きい金銭の信託(前月13.6%→当月13.1%)や投資信託(私募やREITなども含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲2.9%→当月▲4.5%)の伸び率も低下したためだ。一方、国債(前月2.6%→当月5.9%)、外債(前月4.4%→当月4.7%)の伸び率上昇は一定の支えとなった。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年07月16日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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