2024年07月08日

【人口戦略会議レポート解説】消滅可能性自治体割合都道府県ランキング-勝者に学ぶ。そして勝者は世界を目指せ-

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

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1――消滅可能性自治体とはどのような自治体を指すのか

4月に人口戦略会議から「令和6年・地方自治体『持続可能性』分析レポート」―新たな地域別将来推計人口から分かる自治体の実情と課題― が公表された。

10年前にも同様の発表がされているが、残念ながら、パワーワードの「消滅可能性自治体」という言葉だけが扇動的に取り上げられ、「どうして、わが自治体は消滅可能性自治体指定なのか?」については、非エビデンス的な感情論ともいえる報道や議論に終始して、結果的には警鐘が奏功することはなかった。

今回の『持続可能性』分析レポートに関して、封鎖人口については、その取り扱いに計算構造上の問題があるものの、消滅可能性自治体の指定については一定の評価ができる。
 
そこで、消滅可能性自治体が意味することを正確に読者に伝えることで

「どうして、わが自治体は消滅可能性自治体なのか?」

を『持続可能性』分析レポートの論旨に沿う形で解説しておきたい。
 
まず、消滅可能性自治体の定義であるが、2020年の国勢調査に基づく自治体の20~30代の女性人口(実績値)と、その30年後にあたる2050年の自治体の20~30代の女性人口(推計値)を比較して、30年間で自治体の20~30代の女性人口が50%未満の水準にまで減少すると見込まれる自治体を「消滅可能性自治体」としている。
 
この30年間という時間には、統計的に考えて非常に深い意味がある。

女児が誕生し、その子が結婚・出産して次世代人口を生み出すまでの時間がほぼ30年である。日本では婚外子が2%で推移しており、「婚姻なくして出生なし」が統計的なライフコースとなっている。その婚姻であるが、初婚同士の女性の結婚の7割が、30歳までの女性の結婚となっている1。また、女性の第2子・第3子平均出産年齢も、ともに34歳まで2となっている。

30年という時間は、女性の赤ちゃんが次世代人口の親となるまでの時間であり、そして、そもそも20代・30代女性のいないエリアには赤ちゃんは生まれない、ということもいえるだろう。

つまり、わずか1世代、親子間の時間で、統計的婚姻・出産適齢期にある地元の20代・30代女性が半分未満になっているようでは、その自治体が存続できる可能性は極めて低い、ということである。
 
1 厚生労働省「出生動向基本調査」2022年より筆者分析。32歳までの女性で8割、34歳までの女性で9割に到達する。
2 第2子平均母親年齢32.9歳、第3子平均母親年齢34.1歳(厚生労働省「出生動向基本調査」2022年)

2――迫られる自治体の整理

2――迫られる自治体の整理-終末医療から予防医療へ-

では、どのような自治体が、わずか1世代、親世代と子世代間の時間で、統計的に婚姻・出産適齢期にある地元女性が半分未満となってしまうとの指定を受けたのだろうか。

『持続可能性』分析レポートの公表値をもとに、都道府県単位でみて今ある自治体のうち、何パーセントの自治体が消滅可能性自治体に指定されたかを計算した結果をワーストランキング形式で示した(図表1、図表2)。
 
秋田県は秋田市以外、すべての自治体が若年女性大激減、といった状況である。計算の結果、7割以上の数の自治体が消滅可能性の指定を受けたのは7県で、秋田県、青森県、山形県、岩手県、和歌山県、高知県、福島県となった。東北地方が宮城県以外すべて入るという状態である。

また、5割以上の自治体が消滅可能性自治体とされたエリアは8位から16位の9道県で、合計特殊出生率で見れば上位勢の大分県、長崎県などもランクインしている。合計特殊出生率は適齢期の未婚女性が転出超過しただけで上昇する女性人流の影響を強く受ける指標であるため、自治体比較に使うことがないように注意されたい。
図表1:消滅可能性自治体割合ワーストランキング(全国平均より悪い自治体、%)
図表2:消滅可能性自治体割合ワーストランキング(全国平均よりはよい自治体、%)
全国平均より消滅可能性自治体割合が低いエリアは29都府県となった。中でも、消滅可能性自治体割合が2割未満のエリアは沖縄県の0%を筆頭に、東京都(3%)、滋賀県(11%)、愛知県と福岡県(13%)の5エリアとなった。ただし、愛知県は、長く続いていた転入超過(社会増)から、2019年以降は転出超過(社会減)に転じている。このため、2050年推計に使用した社会減測定期間の問題で、2050年推計女性人口数が甘く判断されている可能性が高いことを申し添えておきたい。
 
今回掲載した「消滅可能性自治体割合ランキング」は、今ある自治体数の消滅可能性割合を都道府県単位で計算していることから「合併等、自治体としての自立可能性に基づき、今後整理する必要がある自治体を多く抱える都道府県ランキング」ともいえる。

医療でいうならば自治体の整理は「終末医療」に近い守りの戦略である。

その一方で、消滅可能性自治体指定の主因となる「若年女性の雇用による流出」3にしっかりと向き合い、「予防医療」に近い攻めの戦略に転じる自治体こそが勝ち残ることは自明である。

くれぐれも勝者を叩くのではなく、勝者に学び、そして勝者は世界水準のジェンダーレス雇用をこの日本で実現して欲しい。
 
3 中央公論2023年6月号「女性がリードする地方からの人口流出―正規雇用の拡大が課題」参照

(2024年07月08日「基礎研レター」)

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天野 馨南子 (あまの かなこ)

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