2024年05月07日

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2024年は年明けから世界的に株価が上昇したが、中でも日本株の上昇が目立つ。23年末と比べた3月末時点の上昇率は欧米の主要株価指数が10%程度以下なのに対して、日経平均20.6%、TOPIX17.0%と、日本株が飛び抜けている(図表1)。
 
日本株上昇の原動力は1.9兆円(1月~2月累計)におよぶ海外投資家の買い越しだ。海外の投資マネーが日本株市場に流れ込んできた主な背景は、(1)日本企業の業績が極めて好調なこと、(2)米国株と比べて割高でない(相対的に買いやすい)こと、(3)2年連続の大幅賃上げがほぼ確実視されたこと、(4)日銀が緩和姿勢継続を示唆したこと、(5)中国景気の早期回復が見込めないこと等、複数の好条件が重なったことが挙げられる。
 
さらに、新NISA経由の資金流入も日本株の上昇に寄与したようだ。日本証券業協会によると、新NISA成長投資枠での1月~2月の買付額(約1.5兆円)のおよそ6割(約9,000億円)が日本の個別株を購入したという。つみたて投資枠を合わせた全体でも新NISAでの投資資金の約46%が日本の個別株に投資しており、「大部分が外国株に向かう」といった事前の予想を大きく覆した。
図表1:日本株の上昇が目立つ
今後を見通すうえで重要な日本企業の業績動向を確認しておこう。日経平均採用225社の純利益合計は23年度14.7%増、24年度8.9%増で(図表2、市場予想ベース)、ファンダメンタルズ的には好調持続が想定されている。
 
図表2:24年度も最高益更新が見込まれる
この前提で日経平均の上昇余地を探ってみよう。3月末時点(4万369円)の予想PERは23年度予想ベースでは17.1倍で、適正水準とされる14倍~16倍を大きく超えている。これだけだと割高に見えるが、24年度の増益を加味すると15.3倍程度だ(図表3)。
 
決して割高ではないが、ストライクゾーン高めの水準にあり、割安感は乏しい。16倍相当の4万2,228円までの上昇余地は4.6%程度と大きくない。実際、3月下旬に一時4万1,000円を超えたものの、その後は上値が重い。
 
図表3:日経平均の上値余地は大きくない
一方、下値メドはPER14倍相当の3万7,000円程度と考えられる。仮に市場の想定を超える大きなリスクが顕在化することがあれば、一時的に3万5,000円割れの可能性もある。「3万5,000円を割るだろう」という意味ではない。あくまで「市場が大きめのショックを受けた場合」という仮定の話だ。
 
つまり、当面の日経平均が取りうるレンジの幅は8,000円程度が想定できる。値幅が大きいと感じるかもしれないが、日経平均が1万円や2万円だった時代に8,000円も動いたら大騒ぎだが、今や4万円の時代だ。そもそも株価指数のボラティリティが年率20%弱であることを考えると、この程度の値幅は普通だ。
 
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金融研究部   主席研究員 チーフ株式ストラテジスト

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本ファイナンス学会理事
     ・日本証券アナリスト協会認定アナリスト

(2024年05月07日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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