2024年04月08日

2023年20代人口流出率にみる「都道府県人口減の未来図」(1)-大半が深刻な若年女性人口不足へ-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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1――20代人口を失うことは人口の地元再生産の機能を失うこと

地方の大幅な人口減が止まらない。

エリアの人口の未来を考える場合は、過去の人口遺産(統計的に見て人口再生産にこれ以上寄与しない)である中高年人口を含む「総数」で見ていても何もわからない。にもかかわらず「県の人口が△00万をきることをどう思いますか」といった従来型の取材が後を絶たない。
 
移民1比率が2%程度の日本におけるエリア人口の未来は人口の総数などではなく、
 
(1) 出生数(増減)
(2) 人口移動による増減(転入-転出:転入超過)、特にその大半を占める20代人口の社会増減
 
によって、決まる。
 
統計的には30代後半以降の男女の婚姻力や出生力は著しく低い。男女ともに初婚同士の婚姻の大半(男性8割、女性9割)が34歳までの人口である。また、第3子の母親・父親の平均授かり年齢であっても35歳までである。このような統計的実態がある中で、2023年に東京一極集中によって東京都に純増した人口は、世代別人口で見ると2つの世代のみで、20代人口が86%(88,635人)と圧倒的で、残りが10代(14,856人)の14%である2。さらに、20代人口(88,635人)の内訳をみると、20代前半人口が63,444人で72%を占めている。そのうち22歳が4割超となり、いわゆる浪人・留年や院卒と思われる23歳・24歳を含めると、4年制大卒の就職による移動人口が8割弱に達する(図表1)。
 
つまり東京における若年者の一極集中は、東京都と地方との雇用綱引きがもたらす「4年制大卒男女の就職による民族大移動現象」といってもいいだろう。
【図表1】 2023年・東京都20代前半転入超過人口 各歳内訳(男女計、人、%)
東京一極集中の主役である20代前半人口は、国勢調査でみるとその9割以上が未婚者である。そして彼ら、特に女性を失うことは、失ったエリアにおける婚姻減をもたらし、必然的に出生数減の未来をもたらす。2021年に実施された第16回出生動向基本調査3でみると、18歳から34歳の未婚男女のそれぞれ8割以上が結婚を希望している。日本は婚外子が2%程度で推移しており、初婚同士の男女が最終的にもつことになる子ども(完結出生児数)の平均値も1.9と高水準を続けている(特に地方部ほどこれを超えている)。

初婚同士の夫婦のもつ子どもの数がほとんど変わらない中で、地元の出生数が減少する主因は夫婦の間の子ども数が減ったことが原因ではなく、その上流の「婚姻減」にあり4、そして、その婚姻数はエリアから消えた20代未婚女性(すなわち就職で大きく転出超過してしまう女性人口)の数の影響をダイレクトに受ける。

そこで本稿では、2023年における都道府県の「20代人口の社会減(転出超過)がそのエリアの20代人口に占める割合」(以下、20代人口社会減割合)の分析結果をランキング形式で紹介し、地方の人口の未来がいかに危機的状況にあるかを伝えたい。
 
1 移民なら誰でもいいわけではない。国内の男女バランスを崩さないような男女割合や国内定着・家族形成・納税増加につながる移民でなければ単なる「企業の足元の人手不足自転車操業要員」にすぎず人口の未来にはつながらない。
2 30代人口について、前半人口は415人純増したものの、後半人口は3979人純減しているため、30代人口としては3564人純減している。
3 国立社会保障・人口問題研究所が国勢調査後に実施する定期の大規模調査。
4 ゆえに、「子育て支援」「妊活支援」といった諸々の「既婚者支援」策の出生数への効果がみられないのは統計的に見れば当然の結果である。

2――男性に比べて女性の20代人口流出が顕著に高い

2――男性に比べて女性の20代人口流出が顕著に高い-ワースト1は4%/年

図表2から4はそれぞれ、2023年の都道府県別の20代人口転入超過数を前年2022年の都道府県別20代推計人口で割った「20代人口社会減割合」ランキングとなっている。図表2が男女合計、図表3が男性、図表4が女性のランキングとなっている。

男女合計では、前年の20代人口の3%以上を社会減させたエリアが9エリアとなる。「なんだ3%か」という読み方をしてしまう読者もいるかもしれないが、これは20歳から29歳の10歳階級分の人口の3%をたった1年で失っているため、10年間同じ状態が続くと、実に10年前にそのエリアに存在した20代人口の30%分を失うことになる計算である。2%以上3%未満の県も17エリア存在する。これらのエリアは10年間で10年前の20代人口の20%以上を社会減させることになる。

一方で、東京都は2022年の20代人口の48%の20代人口を10年で得ることとなる(186.6万×0.48=90万人)という、凄まじい20代人口増が予想される。

バブル崩壊後、男女ともに東京への転入超過が発生した1997年5から2022年(26年間)で、東京都に男性77万人・女性90万人が社会増だけで増加している(女性/男性=1.2倍)。ちなみに2023年10月の都道府県人口をみると、秋田県91万、和歌山県89万、山梨県80万、佐賀県79万であることから、実に四半世紀で地方2県分の人口(ほぼ20代人口)が東京都に移住増しているのである。

さらに「20代人口社会減割合」ランキングを男女別でみると、大きな差があることが明確となる。

20代男性では、3%を超えるエリアが奈良県、香川県、愛媛県の3県にとどまるが、女性では13県にものぼり、ワースト1位の青森県は4%を超える。青森県、長崎県、徳島県、高知県、福井県、岩手県、秋田県、山口県、愛媛県、福島県、山形県、鳥取県、大分県が3%を超えており、これを広域で見ると、東北地方、四国地方、中国エリアに近い山陰地方の3エリアとなっている。これらの県は、このままのペースであれば、ここから10年間で20代人口の3割以上の女性を失うことを覚悟しなければならない。当然ながら、これらの女性の大半が20代前半人口であるため、この約10年間で今の20代人口数の最大3割程度の婚姻減、そして15年間程度で(出生が発生する30代前半を彼女たちが超える期間)今の20代人口の最大6割(婚姻減×2)程度の出生減も覚悟しなければならない。

男性ランキングで2%を超えるエリアは24県であるが、女性ランキングでは29県にのぼる。このように、これから婚姻、さらには男性人口と異なり出生数を地元にもたらす20代未婚女性人口を継続的に流出させるなかで、「子育て支援優先」「婚姻率が高い」「幸福度が高い」と地方が主張したとしても、統計的に見るならば「20代女性が未婚でどんどん地元から出ていくから上昇しているに他ならない」という見方をしなければならない6。こうなると、地域少子化対策や地方創生対策で「地元定着女性に意見を聞けば聞くほど、未婚女性の流出増加が止まらない」という結果になってしまっている可能性も考えるべきだろう。「地元に残った男女」アンケート調査を実施して、「地元を去った男女」の気持ちを知ることができるとは到底思えないからである。
【図表2】2023年・対前年20代人口社会増減ワーストランキング(男女計、人、%)
【図表3】2023年・対前年20代人口社会増減ワーストランキング(男性、人、%)
【図表4】2023年・対前年20代人口社会増減ワーストランキング(女性、人、%)
 
5 1996年に女性から転入超過が起こっている。
6 すでに日本では都道府県間の出生率高低と出生増減には相関関係がなく、県単位で見ると市町村において出生率が高いエリアほど出生減が激しいといった分析結果も出てきている。

(2024年04月08日「基礎研レポート」)

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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は年度最新順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年年度)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年年度)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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