2024年01月04日

【地方創生・人口動態データ速報】2023年1月~11月都道府県転入超過ランキング-転入超過僅か6エリア・さらなる局所集中へ

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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1――11か月で東京都への人口集中は6.8万人へ

このレポートを執筆している12月末現在、総務省「住民基本台帳人口移動報告」では11月数値まで公開されている。残る12月で大きな変化が起こることは考えにくいため、11か月合計の数値をランキングにして速報する。
 
指摘する点としては、
 
(1) 東京都における転入超過(社会増)が6万7978人と22年年間合計の3万8023人の1.8倍の規模に急増(東京都への人口集中の急増)。
 
(2) 転入超過エリアが11エリアからわずか6エリア(1都3県+大阪府+福岡県)へ縮小し、東京圏への局所集中がさらに強化。
※滋賀県、山梨県、宮城県、長野県、茨城県が22年の転入超過エリアから脱落している。ただし、滋賀県は32名のマイナス超過であるので12月の結果で転入超過に変化する可能性はある。
 
(3) 東京一極集中完全復活:1位の東京都と2位の神奈川県の集中差拡大。
(22年1.38倍から23年11月まで2.43倍へ)
 
(4) 三大都市圏たる「中京圏」は2019年から愛知県を含めた全域が転出超過エリア(中部人口ダム決壊)状態となっていたが、愛知県が転出超過ワースト3位、三重県・静岡県がワースト6位・7位で1万8千人以上の転出超過。中京圏の人口減少が加速(22年はワースト2位、8位、10位で-1.5万人)。
図表1:2023年1月~11月計・都道府県転入超過数(人)
愛知県に関して直近のトレンドだけで、「女性より男性が減っているエリア」というイメージは正しいとは言えない。

同県は2010年~2019年のコロナ禍前の10年間で、男性を女性よりも2倍増やすという男性誘致が極めて得意という特徴を持つ大都市圏で、他の三大都市圏の東京圏、大阪圏とは「集中性差において逆張り人口戦略が際立っていた」エリアである。長期的に見ると、若年男性を集めすぎた大都市エリアから、今度は若年男性が大量に流出している、というステージにある。

2――社会減エリア41エリア中、31エリアで女性減

2――社会減エリア41エリア中、31エリアで女性減

社会減エリアでは引き続き女性>男性の社会減エリアが目立っている。41エリアの76%にあたる31エリアにおいて女性が男性よりも減少し、平均で男性の1.25倍の女性を失った。

また、社会減のワースト3位までの広島県、兵庫県、愛知県は一見、若者に人気がありそうなエリアであるが、さらなる寛容な雇用地である東京都に若年女性のみならず多くの若年男性までも失う結果となっている。
 
これは、今の若い男性の2人に1人が結婚相手の女性に経済力を求めていることからも当然の流れと見える。
図表2:結婚希望のある男性「収入などの経済力」を結婚相手に「重視する+考慮する」割合
2021年の国の大規模調査結果からは20歳男性の50%、30歳代男性の46%が結婚相手に求める条件に経済力をあげている。

11か月間で東京都に転入超過した人口属性は、10歳代人口と20歳代人口の10.0万人のみとなっているが、この10万人のうち、20歳代前半の男女の転入超過が6.2万人を占めており(22歳が圧倒的)、就職による転居増(住民票移動)であることが明確となっている。
 
今や急速な少子化による若者のマイノリティ化1によって、若者にとっては「採用されて当たり前」「育ててくれて当たり前」であったが、これまでのレポートでも何度も解説してきたが、理想とする家族像の大きな変化によって「雇用はジェンダーレスで当たり前」「共家事・共働き可能で当たり前」、つまりそのようなパートナーと出逢えるエリアこそが就職先エリアとして最強、という状態となっている。
図表3:2023年1月~11月 東京都の転入超過人口の男女×5歳階級属性割合(%)
若者が自分のライフデザインにあった就業先を探すときに、2016年に施行された女性活躍推進法の果たす役割は人口動態の推移を見守る者として、非常に大きいことを指摘したい。

法は当初、常時雇用する労働者が301人以上の事業主を対象として行動計画の提出を求めていた2が、2022年の4月には101人以上となり、さらには301人以上の事業主を対象として、「男女の賃金の差異」が公表情報における必須項目として追加されている。
 
今後、大企業が集まるエリアを中心に「ジェンダーレス雇用かどうかという厳しい若者の目に比較検討される企業」が増加する中で、東京圏外の企業、もっというと、一見、大都市圏として転入超過エリアに見えているものの、実は東京圏に多くの人口を流出させて「広域社会減」(人口ダム決壊)を生み出している大阪府、福岡県等の地方大都市圏とエリア企業が人口動態の実態に気付き、早急に手を打つことができるかどうかが、地方存続の未来を握っているといえるだろう。
 
1 2020年国勢調査結果において40歳代人口の20歳代人口は67%。
2 300人以下は提出が努力義務。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

(2024年01月04日「基礎研レター」)

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