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- 中国経済:景気指標の総点検(2023年冬季号)
2023年12月22日
1.中国経済の概況
第3四半期(7-9月期)の経済成長率は実質で前年同期比+4.9%と、前期(4-6月期)の+6.3%から伸びが減速した。他方、季節調整後の前期比では+1.3%と、前期(同+0.5%)から加速している(図表-1)。前期は、ゼロコロナ政策解除のリバウンドが早々に一服して景気の停滞感が強まったが、一段の悪化には歯止めがかかっているようだ。
もっとも、10~11月の指標をみると、不動産市場の低迷が続いているほか、消費も振るわない状況が続いており、景気が足踏み状態にあることがうかがえる。消費者信頼感指数は、雇用・所得の先行き、消費意欲ともに、マインドの強弱の境目である100を下回る状況が続いている(図表-2)。預金残高も高水準のままであり(図表-3)、先行きへの不透明感から消費意欲が盛り上がりを欠いていることが示唆される。
インフレ状況を見ると(図表-4)、工業生産者出荷価格(PPI)のマイナス幅は、7月以降縮小傾向にあったが、10月から再び拡大している。消費者物価(CPI)に関しても、0%近傍での推移を続けており、10・11月は2カ月連続でマイナス圏に入っている。うち、食品・エネルギーを除くコアコアも低水準での推移を続けている。
もっとも、10~11月の指標をみると、不動産市場の低迷が続いているほか、消費も振るわない状況が続いており、景気が足踏み状態にあることがうかがえる。消費者信頼感指数は、雇用・所得の先行き、消費意欲ともに、マインドの強弱の境目である100を下回る状況が続いている(図表-2)。預金残高も高水準のままであり(図表-3)、先行きへの不透明感から消費意欲が盛り上がりを欠いていることが示唆される。
インフレ状況を見ると(図表-4)、工業生産者出荷価格(PPI)のマイナス幅は、7月以降縮小傾向にあったが、10月から再び拡大している。消費者物価(CPI)に関しても、0%近傍での推移を続けており、10・11月は2カ月連続でマイナス圏に入っている。うち、食品・エネルギーを除くコアコアも低水準での推移を続けている。
2.供給面の3指標
鉱工業生産(実質付加価値ベース)を見ると(図表-5)、10月は前年同期比+4.6%、11月は同+6.6%と、7-9月期を上回る伸びが続いた。22年の同時期にゼロコロナ政策が強化され、経済活動が悪化した反動を割り引く必要はあるものの、前期比でも2カ月連続で加速していることから、生産は持ち直しつつあるようだ。10・11月の平均伸び率を業種別に見ると(図表-6)、鉱業は前年同期比+3.4%、製造業は同+5.9%、ユーティリティは同+7.7%と、それぞれ7-9月期平均の同+1.7%、同+4.8%、同+2.6%から加速している。特に自動車や交通運輸設備の伸びが高まっている。他方、家具は同▲1.8%と、7-9月期平均の同▲6.5%から減少幅は縮小したものの、依然マイナス圏にあり、住宅販売不振の影響が続いていることがうかがえる。
3.需要面の3指標
個人消費の代表指標である小売売上高を見ると(図表-9)、10・11月は前年同期比+8.8%と、第3四半期(同+4.1%)から高まった。もっとも、これは22年の同時期にゼロコロナ政策が強化され、経済活動が悪化した反動であり、財消費の改善ペースは実態としては鈍っている。
投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)を見ると、10・11月は前年同期比+2.1%と第3四半期(同+1.9%)から小幅に上昇した。内訳を見ると(図表-10)、10・11月の不動産開発投資について、同▲10.9%と第3四半期の同▲11.5%からマイナス幅が小幅に縮小したほか、製造業の投資について、同+6.7%と第3四半期(同+6.5%)から伸びが小幅に高まっている。他方、インフラ投資は、同+5.5%と第3四半期(同6.2%)から低下しており、先行きに対する懸念材料となっている。なお、同様に所有形態別でみると(図表11)、民間はマイナス幅が縮小(同▲1.3%→同▲0.1%)した一方、国有は伸びが減速(同+5.7%→同+3.8%)している。
輸出(ドルベース)の状況を見ると(図表-12)、10・11月期は前年同期比▲4.6%と第3四半期(同▲12.6%)からマイナス幅が縮小した。輸入については、同+0.5%と第3四半期(同▲10.6%)からプラスに転じた。
投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)を見ると、10・11月は前年同期比+2.1%と第3四半期(同+1.9%)から小幅に上昇した。内訳を見ると(図表-10)、10・11月の不動産開発投資について、同▲10.9%と第3四半期の同▲11.5%からマイナス幅が小幅に縮小したほか、製造業の投資について、同+6.7%と第3四半期(同+6.5%)から伸びが小幅に高まっている。他方、インフラ投資は、同+5.5%と第3四半期(同6.2%)から低下しており、先行きに対する懸念材料となっている。なお、同様に所有形態別でみると(図表11)、民間はマイナス幅が縮小(同▲1.3%→同▲0.1%)した一方、国有は伸びが減速(同+5.7%→同+3.8%)している。
輸出(ドルベース)の状況を見ると(図表-12)、10・11月期は前年同期比▲4.6%と第3四半期(同▲12.6%)からマイナス幅が縮小した。輸入については、同+0.5%と第3四半期(同▲10.6%)からプラスに転じた。
4.その他の4指標と景気の総括
まず評価点(〇の数)を見ると、第3四半期は7月が4点、8月が4点、9月が6点と、分岐点(5点)に対して上昇傾向がみられ、GDP成長率(前期比)は加速していた。第4四半期については、10・11月がそれぞれ8点、4点と、振れ幅が大きいものの足元では悪化しており、GDP成長率(前期比)は若干減速する可能性がある。
需要面に焦点を当てると、輸出については、9月以降“〇”が続いており、改善傾向にある。他方、小売売上高および固定資産投資は、7月以降、 概ね交互に“✖” と“〇”が繰り返されており、内需は一進一退の状況にあることが示唆される。
供給面を見ると、鉱工業生産は、第3四半期には7月が“〇”、8・9月が“✖”であった。その後、第4四半期に入ると、10・11月は “〇”が続いている。ただし、製造業PMIは、第3四半期には3ヵ月ともに“〇”であったが、第4四半期に入り、11月には“✖” となり悪化した。生産が持続的に回復するか、今しばらく様子を見る必要がありそうだ。非製造業PMIについては、5月以降、11月にかけて“✖”が続いており、趨勢として悪化している。
その他の指標を見ると、昨年の反動には留意が必要なものの、電力消費量は、直近3カ月連続で“〇”となっているほか(図表-14)、道路貨物輸送量も直近4カ月連続で“○”となっている(図表-15)。工業生産者出荷価格(PPI)については、第3四半期は全て“〇”であったが、第4四半期に入ると、11月に “✖”へと転じた。 通貨供給量(M2)は、4月以降11月にかけて“✖”が続いている(図表-16)。総じてまだら模様の状況であり、景気の方向感はまだ判然としない。
最後に、鉱工業生産、サービス業生産、建築業PMIの3つを説明変数として、GDP成長率(前年同月比)を推計した「景気インデックス」を確認しておこう。推計結果は10月が前年同月比+4.9%、11月が同+6.3%で、10-11月期は前年同期比+5.6%である(図表-17)。前四半期(7-9月期)のGDP成長率は前年同期比+4.9%であり、それを上回っている。したがって、24年1月中旬に公表される23年10-12月期のGDP成長率(前年同期比)は、12月の景気次第で振れるとは言え、同+5%台となる可能性が高いだろう。なお、現在の市場コンセンサスは+5.2%前後となっている。1-9月期累計の成長率は同+5.2%だったので、通年の成長率目標である「+5%前後」は達成される見込みだ。
需要面に焦点を当てると、輸出については、9月以降“〇”が続いており、改善傾向にある。他方、小売売上高および固定資産投資は、7月以降、 概ね交互に“✖” と“〇”が繰り返されており、内需は一進一退の状況にあることが示唆される。
供給面を見ると、鉱工業生産は、第3四半期には7月が“〇”、8・9月が“✖”であった。その後、第4四半期に入ると、10・11月は “〇”が続いている。ただし、製造業PMIは、第3四半期には3ヵ月ともに“〇”であったが、第4四半期に入り、11月には“✖” となり悪化した。生産が持続的に回復するか、今しばらく様子を見る必要がありそうだ。非製造業PMIについては、5月以降、11月にかけて“✖”が続いており、趨勢として悪化している。
その他の指標を見ると、昨年の反動には留意が必要なものの、電力消費量は、直近3カ月連続で“〇”となっているほか(図表-14)、道路貨物輸送量も直近4カ月連続で“○”となっている(図表-15)。工業生産者出荷価格(PPI)については、第3四半期は全て“〇”であったが、第4四半期に入ると、11月に “✖”へと転じた。 通貨供給量(M2)は、4月以降11月にかけて“✖”が続いている(図表-16)。総じてまだら模様の状況であり、景気の方向感はまだ判然としない。
最後に、鉱工業生産、サービス業生産、建築業PMIの3つを説明変数として、GDP成長率(前年同月比)を推計した「景気インデックス」を確認しておこう。推計結果は10月が前年同月比+4.9%、11月が同+6.3%で、10-11月期は前年同期比+5.6%である(図表-17)。前四半期(7-9月期)のGDP成長率は前年同期比+4.9%であり、それを上回っている。したがって、24年1月中旬に公表される23年10-12月期のGDP成長率(前年同期比)は、12月の景気次第で振れるとは言え、同+5%台となる可能性が高いだろう。なお、現在の市場コンセンサスは+5.2%前後となっている。1-9月期累計の成長率は同+5.2%だったので、通年の成長率目標である「+5%前後」は達成される見込みだ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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三尾 幸吉郎
(2023年12月22日「Weekly エコノミスト・レター」)
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