2023年10月27日

中国経済の現状と注目点~一段の悪化には歯止め。不動産低迷が続く中、政府は国債を増発へ

三尾 幸吉郎

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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■要旨
 
  1. 第3四半期(7-9月期)の経済成長率は実質で前年同期比+4.9%と、前期(4-6月期)の+6.3%から伸びが減速した。他方、季節調整後の前期比では+1.3%と、前期から加速した。景気の一段の悪化には歯止めがかかっているようであり、一部には明るい材料もみられつつある(下左図)。もっとも、総じて力強さを欠く状況にあることは変わりない。
     
  2. 需要項目別の寄与度を見ると、第3四半期の最終消費はGDP成長率に+4.6%ポイントの寄与となった。小売売上高は、低調な伸びを続けている。総資本形成(≒投資)は+1.1%ポイントの寄与となった。製造業の投資が堅調だが、不動産開発投資の低迷が重石となっている。純輸出は▲0.8%ポイントとマイナス寄与が前期から縮小した。日米欧向けを中心に、輸出の悪化が底打ちし、マイナス幅が縮小しつつある。
     
  3. 産業動向を見ると(下右表)、第3次産業がGDP全体の成長率を主に押し下げた。「宿泊飲食業」や「情報通信・ソフトウェア・IT」が、前期から減速したものの2桁の伸びを維持している一方、「不動産業」は▲2.7%と、前期からマイナス幅が拡大しており、不動産市場が依然不安定な状況にあることがうかがえる。
     
  4. 不動産市場は低迷を続けている。今後の回復ペースを見通すうえで、政府の住宅引き渡し支援(「保交楼」)政策の進捗がポイントのひとつとなる。本稿で試算した結果に基づけば、同政策は長期戦となる可能性が高く、低迷脱却には時間を要する見込みだ。そうした中、10月下旬に国債増発が決まり、財政政策強化の動きもでてきた。ただ、その効果は現時点では未知数であり、地方政府債務対策など、他の政策の方向性も踏まえて評価する必要がある。

 
GDP成長率/産業別の実質成長率(前年同期比)
■目次

1. 中国経済の概況
2. 需要の動向
3. 産業の動向
4. 注目点
  1|不動産市場は引き続き低迷。住宅の引き渡し促進策は長期戦となる見込み
  2|中国政府は国債の増発を決定。ただし、景気押し上げの効果は現時点では未知数
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三尾 幸吉郎

経済研究部

三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

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