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- ECB政策理事会-予想通り政策金利の据え置きを決定
2023年10月27日
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(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 長期金利は、他の先進国の長期金利上昇を反映して、前回の会合以降、大幅に上昇している
- 我々の金融引き締めは引き続き、広範囲の資金調達環境に強く伝達されている
- 企業の資金調達コストはより上昇し、企業向け貸出金利と住宅ローン金利は8月には再び上昇してそれぞれ5.0%および3.9%となった
- 最新の銀行貸出調査によれば、高い借入金利は設備投資計画や住宅購入の削減に関連して、7-9月期の信用需要を大きく落ち込ませた
- さらに、企業および家計に対する信用基準がより厳格化した
- 銀行はより顧客の直面するリスクに対して懸念を高めており、自身の受け入れるリスクを消極化させている
- こうした背景により、信用動向はさらに軟化した
- 企業向け貸出伸び率は前年比で7月の2.2%から8月には0.7%、9月には0.2%まで大幅に低下した
- 家計向け貸出伸び率は引き続き低迷しており、8月には1.0%、9月には0.8%に減速している
- 貸出が低迷し、ユーロシステムのバランシートが縮小するなか、M3の前年比伸び率は8月には▲1.3%となりユーロ発足以来の最低を記録、9月には▲1.2%となった
(結論)
- (声明文冒頭に記載の利上げと、金融政策スタンスへの再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 最近の経済の弱さや、ガザ地区での戦争は今日の議論でどのような役割を果たしたか
- 状況を注視している
- エネルギー価格や経済主体の景況感への間接的・直接的な影響など、経済的な結論に関心を払っている
- PEPPの再投資終了や最低準備の引き上げに関する議論はあったか
- PEPPも、最低準備への付利も今回の会合では議論していない
- 「十分に長い期間」とはどのくらいの長さなのか、利下げを考えるきっかけは何か、インフレ率が2%なのか2.5%なのか3%なのか。これは市場の関心でもあると思う
- データ次第である
- 利下げを考える時期については議論していないし、議論は完全に時期尚早である
- 利回りについて、ユーロ圏や他地域で上昇していると述べているが、これはおそらく米国のことだろう。金利上昇や、潜在的な分断化リスクについて懸念しているか
- ある種の外部の引き締めはユーロ圏経済のファンダメンタルズとは直接的な関係はないが、長期金利に影響が及ぶため引き締め要因となる
- 我々も考慮している波及効果であり、他の要因とともにインフレを低下させる
- 過去の利上げが資金調達環境に強く伝達されていると述べたが、どの程度の影響が実体経済やインフレ率に及んでいるのか
- 金融政策の特に銀行部門への影響を目にしている
- 金融政策には通常、伝達のラグが存在する
- スタッフの評価では実体経済への影響は今後も続き、前提では23年末から24年1-3月期まで続く
- エネルギーコストについて。例えば中東の紛争の結果、エネルギーコストの更なる上昇が起きた場合に、どのように反応するのか理解したい。最近のインフレの教訓としてすぐに反応するのか、2次的効果(second round effect)を待つ余裕があるのか
- 現在の経済状況は、高インフレに見舞われた時とは完全に異なり、政策金利は4%の水準で雇用は強いが軟化しつつある
- これらの要因をすべて考慮した上でエネルギーコストの上昇がGDPとインフレに及ぼす影響を見る必要がある
- スプレッドの拡大について。スプレッドの拡大、特にイタリアについて議論したか。イタリアのスプレッドは現在2%ポイントを超えている。また、これはECBにとって問題ない水準なのか、大幅な拡大なのか
- インフレ率を2%に戻すための裁量の手段は金利であり、これを使用している
- また、我々は金融政策がユーロ圏全体に適切に伝達するようにしなければならない
- そのための適切な手段はすべて用意している
- ギリシャについて。ギリシャ国債はECBでは正常に戻ったのか。すべての購入政策で、それが再稼働された際には適格になるのか。また、ギリシャ経済が正常に戻るという確信はあるか。つまり、債務問題が発生する以前のAやA+という格付に戻るのか
- 現在、稼働している購入政策はPEPP下の再投資のみである
- APPは再投資を実施していないので、どの国が適格でどの国が非適格かは問題にならない
- ギリシャはPEPPの下で、当時決定された特別免除により適格とされた
- 良いニュースはこの免除が無意味になったことであり、例外を設けずにPEPPのもとで適格となる
- ギリシャ経済はコロナ禍前よりも高い位置にある
- 比較は低俗だが、ギリシャにいるので例外的に述べると、ギリシャは他の国と比較して非常に優れている
- (ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁)ギリシャ経済はコロナ禍前よりも約10%高く、成長率はユーロ圏平均より大幅に高く、スプレッドは通常の範囲にある
- 総じて、総裁の述べたように成功談と言える
- A+の格付に戻るまでにやるべきことが多くあることは否定しない
- 中央銀行の損失について。今週、リクスバンクがバランスシートを修復するために800億クローネが必要になると警告した。ユーロ圏の中央銀行も同じような資本注入が必要となるのか
- 中央銀行ごとに置かれている状況は異なるので、具体的なことには立ち入らない
- ユーロシステムとして、ECBとして我々の使命は1つで、それは物価の安定であり、我々は損失を補填し利益を計上することを目的とはしておらず、損益計算書によって導かれるような決定は間違っていると言える
- PEPPの再投資について。理事会のメンバーから再投資の終了を前倒しする可能性があると述べられたことに対する見解は
- 今回の会合ではPEPPについて議論していない
- 金融政策の伝達の勢いに、ハマスとイスラエルの戦争という不確実性が加わったため、ECBの見通しは楽観的すぎると考えられるのではないか
- 次回12月の会合で新しい見通しを作成し、完全にデータに基づいて数値を改定し、上方あるいは下方修正する予定である
- 銀行貸出調査について、何度か言及されたように、経済は基本的には停滞している。これはリスクなのか。伝達は遅いが、行き過ぎたと心配しているか
- 3つの政策金利が十分に長い期間維持されれば、中期的に2%の目標に戻るのに必要となる重要な貢献をすると考えている
- 金利の上昇について。金利上昇は、金融調達環境が引き締まるので金融政策の伝達を助けるという見方がある。一方で、金融安定へのリスクとなるという議論もされている。どちらの意見にも賛成するか。また将来的に正しいバランスを見つけることが難しくなると考えられるか
- (デギンドス副総裁)2週間程度で金融安定レビュー(FSR)を公表する予定であり、ユーロ圏の金融安定リスクについて記載している
- 金利上昇についてはかなり注視している
- 過去に指摘し、近い将来にも引き続き指摘できるリスクは、様々な種類の資産価格がかなり高いということである
- これらの資産評価額は、金融資産だけではなくて、不動産市場についても、金利上昇により重要な調整をもたらす可能性がある
- 同時に、高金利は主にノンバンクの金融仲介機関に影響を及ぼす要因になる可能性がある
- 言及ギリシャ国債が適格となった現在、APPに含まれるのか。再投資を再開すると仮定したらどうか
- 仮定の話はしたくない
- かつては貯蓄が重要な概念だったが、ギリシャのようなユーロ圏の多くで預金金利はほとんどゼロでありインフレ率よりも低い一方、貸出金利は急激に上昇している。これに対するコメント、および状況を変えるためにできることは何か
- 我々の仕事は銀行やその他の機関自身が資金調達をする際の金利を設定することである
- ユーロ圏のいくつかの国で発生しているこの課題は、各国当局や消費者自身の力、競争当局によって解決策がもたらされるものであり、ECBや各国中銀が行動できる分野ではない
- 任期の前半を終えようとしていることについて。この4年間で後悔していることはあるか、また特に誇りにしていることはあるか
- 後悔していることはない
- 時には意見が異なるが、使命を達成しようとする共通の思いがあり、質の高い議論や意見交換、異なる見解を提示して、互いに納得させようとし、なんとか結論を出す
- これは大切にすべきことで、反対意見のために人々が無意識に不合理な方向に進む世界においては、至宝である
- スペインでは、政権を樹立しようとしている政党が銀行に対する課税延長について提案したが、この税が公表された際、ECBは反対意見を発表している。この論点に対する意見は
- (デギンドス副総裁)この種の課税は、貸出や信用増加や銀行の支払能力を損ねるものであってはならない、というのが我々の良く知られた評価である
- リトアニア、スペイン、イタリアの承認されたケースにはそのような処方箋が含まれていた
- 一部の人は、現在の利上げサイクルがピークに達したと推測している。今日の決定はそのように解釈できるのか、それとも扉は開かれているのか
- ピークに達したと判断するつもりはない
- データ次第であり、会合ごとに3つの基準、インフレ見通し、基調的なインフレ率、金融政策の伝達の強さを評価する
- 本日の議論について教えて欲しい。前回会合の議論からは理事会の異なるグループ間の相違が、過去と比較して拡大している印象を受ける。この解釈は正しいか
- 全会一致で決定がなされており、一般的には相違が拡大したとは言えないだろう
- 金利据え置きという重要な決定においては、すべての中銀総裁と理事会メンバーで全般的な合意がされた
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年10月27日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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