2023年10月11日

ASEANの貿易統計(10月号)~8月の輸出は2桁減、中国向け輸出が再び減少

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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2023年8月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比11.9%減(前月:同10.6%減)と減少幅が拡大して6カ月連続の前年割れとなった(図表1)。輸出の基調は昨年半ばまでコロナ禍からの経済活動の回復や商品市況の高止まりにより好調が続いたが、その後は欧米を中心とした外部環境の悪化や資源価格の軟化により増勢が鈍化し、昨年11月以降は前年比で減少傾向にある。前月比では増加傾向に転じており、年末にかけて前年同月を上回る可能性はあるものの、中国向け輸出の回復が遅れている上、金融引き締めの影響による欧米経済の需要鈍化が見込まれるため、当面は輸出の持ち直しの動きが緩やかなものとなりそうだ。

ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、中国向け(同8.1%減)が4カ月ぶりに減少した東アジア向けは同10.5%減(前月:同7.6%減)となり2桁減となった。また北米向けが同7.6%減(前月:同5.6%減)、EU向けが同16.9%減(前月:同11.8%減)と低迷した。一方、東南アジア向けは同15.6%減(前月:同23.3%減)と減少幅が縮小したものの、大幅な減少が続いた(図表2)。
(図表1)アセアン主要6カ国の輸出額/(図表2)アセアン主要6ヵ国仕向け地別の輸出動向
ベトナムの8月の輸出額(通関ベース、確定値)は前年同月比6.5%減(前月:同2.2%減)の327億ドルとなり減少幅が拡大して10カ月連続の前年割れとなった(図表3)。輸出の基調は昨年後半から海外需要の鈍化や一次産品価格の下落により減少傾向にあるが、足元では前月比で増加傾向が続くなど持ち直しの動きがみられる。また輸入額は前年同月比5.8%減(前月:同11.6%減)の293億ドルと減少した。結果として貿易収支は+34.4億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から3.7億ドル拡大した。

輸出を品目別にみると、輸出全体の約2割を占める電話機・同部品が前年同月比15.5%減(前月:同0.9%増)となり2ヵ月ぶりに減少すると共に、コンピュータ、電子製品・同部品が同6.4%増(前月:同28.4%増)となり増勢が鈍化した(図表4)。またアパレル関連についても履物が同25.1%減(前月:同21.3%減)、織物・衣類が同14.1%減(前月:同11.6%減)となり、大幅な減少が続いた。農林水産物を見ると、水産物(同13.0%減)と天然ゴム(同13.6%減)、コーヒー(同2.9%減)が減少した一方、野菜(同71.5%増)やコメ(同61.7%増)、カシューナッツ(同21.8%増)が増加するなど、品目によってばらつきが見られた。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同9.9%減(前月:同1.1%減)となり減少幅が拡大した。一方、地場企業は同3.7%増(前月:同5.2%減)となり6ヵ月ぶりの増加となった。
(図表3)ベトナムの貿易収支/(図表4)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
タイの8月の輸出額(通関ベース)は前年同月比2.6%増(前月:同6.2%減)の242億ドルとなり、11ヵ月ぶりの増加となった(図表5)。輸出の基調は昨年後半から海外需要の鈍化や一次産品価格の下落により減少傾向で推移しているが、足元では持ち直しの動きがみられる。また輸入額は前年同月比12.8%減(前月:同11.0%減)の239ドルとなり、3ヵ月連続の2桁減となった。結果として、貿易収支が+3.6億ドルとなり、前月の▲19.8億ドルから黒字化した。

輸出を品目別にみると、全体の約7割を占める工業製品が同4.6%増(前月:同1.7%減)と3ヵ月連続ぶりに増加した(図表6)。製造品の内訳を見ると、自動車・部品(同23.1%増)と家電製品(同5.8%増)、機械・装置(同2.8%増)、電子製品(同2.1%増)は増加したものの、石油化学製品(同6.6%減)と金属・鉄鋼(同3.6%減)はそれぞれ減少した。また鉱業・燃料は同19.3%増(前月:同37.6%減)となり、石油製品(同19.0%増)を中心に6ヵ月ぶりの増加に転じた。このほか、農産物・同加工品は同2.6%減(前月:同8.9%減)となり、4ヵ月連続で減少した。農産物・同加工品の内訳をみると、コメ(同10.8%増)とドリアン(同263.7%増)は増加したものの、天然ゴム(同32.9%減)やゴム製品(同22.2%減)、加工食品(同8.1%減)など減少した品目が多かった。
(図表5)タイの貿易収支/(図表6)タイ輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの8月の輸出額(通関ベース、ドル換算)の伸び率は前年同月比21.2%減(前月:同15.8%減)の249億ドルと低迷、6カ月連続の前年割れとなった(図表7)。輸出の基調は昨年半ばまでコロナ禍で停滞した経済活動の再開や電気電子製品、石油ガス製品の需要拡大を追い風に増加してきたが、その後は世界的な需要減退と商品価格の下落により伸び悩み、年明けから減少傾向が続いている。また輸入額も前年同月比23.7%減(前月:同18.7%減)の212億ドルと減少した。結果として、貿易収支が+37.6億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から0.3億ドル縮小した。

輸出を品目別にみると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同17.4%減(前月:同1.1%増)となり、主力の電気・電子製品(同17.9%減)を中心に2ヵ月ぶりに減少した(図表8)。また鉱物性燃料は同36.1%減(前月:同46.4%減)となり大幅な減少が続いた。鉱物性燃料の内訳をみると、石油製品(同41.8%減)と天然ガス(同28.3%減)、原油(同24.9%減)が揃って減少した。このほか、コロナ特需が終息したゴム手袋(同27.8%減)や動植物性油脂(同34.0%減)、化学製品(同16.5%減)なども低迷した。
(図表7)マレーシア貿易収支/(図表8)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの8月の輸出額(通関ベース)は前年同月比21.2%減(前月:同18.1%減)の220億ドルとなり、3ヵ月連続で減少した(図表9)。輸出は昨年半ばまでコロナ禍からの経済活動の再開や商品市況の高止まりにより好調が続いたが、その後は海外経済の減速やパーム油、石炭などの主要商品価格の下落により増勢が鈍化し、今年3月から減少傾向にある。また輸入額も前年同月比14.8%減(前月:同8.3%減)の188億ドルとなり、3ヵ月連続で減少した。結果として、貿易収支が+31.2億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から18.3億ドル拡大した。

輸出を品目別にみると、全体の9割を占める非石油ガス輸出が同21.2%減(前月:同18.8%減)、石油ガス輸出が同20.7%減(前月:同4.7%減)となり、それぞれ低迷した(図表10)。非石油ガス輸出では鉱物性燃料(同43.9%減)のほか、動植物性油脂(同34.5%減)、銅および同製品(同25.4%減)、ニッケルおよび同製品(同18.4%減)、錫および同製品(同35.3%減)、錫および同製品(同35.3%減)、鉄・鉄鋼製品(同14.2%減)、人工繊維(同5.6%減)、船舶(同83.8%減)など減少した品目が多かった。一方、スラグ・灰(同39.8%増)とアパレル(同19.0%増)については増加した。
(図表9)インドネシア貿易収支/(図表10)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの8月の輸出額(石油と再輸出除く、通関ベース、ドル換算)は前年同月比18.2%減(前月:同16.6%減)の103億ドルとなり、12カ月連続の前年割れとなった(図表11)。輸出の基調は昨年半ばまで世界的な電子製品の需要拡大や石油製品の価格上昇により増加傾向が続いたが、その後は電子製品、非電子製品が振るわず減少している。

総輸出額は同12.6%減(前月:同14.6%減)の400億ドル、総輸入額が同13.5%減(前月:同19.9%減)の365億ドルとなり、それぞれ低迷した。結果として、貿易収支は+34.9億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から7.3億ドル縮小した。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別にみると、まず全体の約2割を占める電子製品は同16.8%減(前月:同23.6%減)と低迷した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同26.7%減)をはじめとしてPC(同23.7%減)やディスクメディア(同28.9%減)が低迷した。また全体の約3割を占める化学品も同18.8%減(前月:同10.2%減)となり4カ月連続で減少した。化学品の内訳を見ると、石油化学製品(同4.8%減)の減少幅が縮小した一方、医薬品(同36.1%減)が2ヵ月ぶりに減少した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの8月の輸出額(通関ベース)は前年同月比4.2%増(前月:同0.9%減)の67億ドルとなり2ヵ月ぶりに増加した(図表13)。輸出の基調は昨年末から世界的な需要の鈍化や一次産品の価格下落により減少傾向が続いたが、5月以降は電子製品の需要が持ち直して増加に転じつつある。の伸びに転じている。一方、輸入額は前年同月比13.1%減(前月:同15.2%減)の108億ドルとなり10カ月連続の前年割れとなった。結果として、貿易収支は▲41.3億ドルの赤字となり、赤字幅が前月から0.7億ドル縮小した。

輸出シェア上位10品目をみると、まず輸出全体の6割近くを占める電子製品が同6.1%増(前月:同7.6%増)となり、4ヵ月連続で増加した(図表14)。電気製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同30.9%減)は減少したが、主力の半導体デバイス(同14.0%増)が増加した。その他9品目については精錬銅(同414.0%増)、金(同170.3%増)、化学品(同28.5%増)、その他鉱業品(同11.6%増)、その他製造品(同6.7%増)、イグニッションワイヤーセット(同5.9%増)、電子機器・部品(同0.5%増)が増加した一方、金属部品(同11.1%減)と機械・輸送用機器(同2.1%減)が減少するなど、増加した品目が多かった。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2023年10月11日「経済・金融フラッシュ」)

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