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- タイの生命保険市場(2022年版)
2023年09月19日
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6―資産運用状況
2022年はコロナ禍からの経済活動の再開による供給網の混乱や人手不足、そしてウクライナ危機によるエネルギ価格の高騰が加わり世界的にインフレが加速するなか、米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅な利上げを継続するなど世界各国で金融引き締めが実施された。タイ経済は観光関連業の回復により持ち直しの動きが続いたが、主要国の金融引き締めが世界経済の減速懸念につながり、投資家のリスク回避姿勢が強まったため、タイの代表的な株価指数であるSET指数は横ばい圏で推移し、通年で前年比+3.6%の小幅上昇にとどまった(図表13)。
債券市場では、2021年から長期国債の金利が上昇している。タイ銀行(中央銀行)はコロナ禍で緩和的な金融政策を維持して政策金利を過去最低の0.5%で据え置いていたため、2020年は低金利環境が続いたが、2021年になると米国が量的緩和政策のテーパリングを開始するなど金融引き締め観測が高まるなかで、米国の金利上昇につられる形でタイの長期金利も上昇した。また2022年8月以降はタイ銀行がインフレ抑制と金融政策の正常化に向けて段階的な利上げを実施しており、政策金利は0.5%から2.25%まで引き上げられている。こうした内外要因からタイ10年国債金利は2022年通年で1.9%から2.6%まで上昇して、概ねコロナ前の水準まで戻った。
タイ生命保険会社の運用資産構成割合を見ると、2022年は公共債が58.7%、民間債が24.2%、株式等が10.0%、貸付が4.8%となった(図表14)。2022年は国内経済が回復したものの、世界的なインフレと金融引き締めによる投資家のリスク回避姿勢の強まりやタイ国債の金利上昇を受けて、公共債と株式等のウェイトが縮小する一方、貸付や民間債券のウェイトが拡大した。
運用費用を差引いたネットの運用収益は、国債や社債の安定した利息収入を中心に1,233億バーツと、前年から17億バーツ増加(前年比1.7%増)した。
債券市場では、2021年から長期国債の金利が上昇している。タイ銀行(中央銀行)はコロナ禍で緩和的な金融政策を維持して政策金利を過去最低の0.5%で据え置いていたため、2020年は低金利環境が続いたが、2021年になると米国が量的緩和政策のテーパリングを開始するなど金融引き締め観測が高まるなかで、米国の金利上昇につられる形でタイの長期金利も上昇した。また2022年8月以降はタイ銀行がインフレ抑制と金融政策の正常化に向けて段階的な利上げを実施しており、政策金利は0.5%から2.25%まで引き上げられている。こうした内外要因からタイ10年国債金利は2022年通年で1.9%から2.6%まで上昇して、概ねコロナ前の水準まで戻った。
タイ生命保険会社の運用資産構成割合を見ると、2022年は公共債が58.7%、民間債が24.2%、株式等が10.0%、貸付が4.8%となった(図表14)。2022年は国内経済が回復したものの、世界的なインフレと金融引き締めによる投資家のリスク回避姿勢の強まりやタイ国債の金利上昇を受けて、公共債と株式等のウェイトが縮小する一方、貸付や民間債券のウェイトが拡大した。
運用費用を差引いたネットの運用収益は、国債や社債の安定した利息収入を中心に1,233億バーツと、前年から17億バーツ増加(前年比1.7%増)した。
7―収支動向
8―おわりに
2022年のタイ生命保険市場は世界経済の減速懸念によって投資家のリスク回避姿勢が強まりユニット・リンク保険のような投資型保険の販売が不調だったため、収入保険料が2年ぶりに減少した。しかしながら、高齢化や新型コロナウイルスの流行を背景とした健康意識の高まりにより医療保険の販売が好調だったほか、債券利回り上昇に伴う予定利率の引き上げにより普通保険の販売が回復するなど今後の市場拡大が期待される面もあった。
2023年のタイ経済は外需の悪化が重石となるも、観光関連産業を中心とした緩やかな景気回復が続いており、1~7月累計のタイ生命保険料収入は前年同期比4.5%増と回復している。世界経済の減速懸念により株高が進まず、ユニット・リンク保険の販売は2年続けて低調な結果となりそうだが、低金利環境からの脱却が進んでいるため養老保険を中心に保険販売は回復しそうだ。また医療保険への関心の高まりやデジタル化により保険の申請・加入が容易になるなど新世代の保険ニーズへの対応も進んできており、2年ぶりの市場拡大が視野に入りつつある。
2023年のタイ経済は外需の悪化が重石となるも、観光関連産業を中心とした緩やかな景気回復が続いており、1~7月累計のタイ生命保険料収入は前年同期比4.5%増と回復している。世界経済の減速懸念により株高が進まず、ユニット・リンク保険の販売は2年続けて低調な結果となりそうだが、低金利環境からの脱却が進んでいるため養老保険を中心に保険販売は回復しそうだ。また医療保険への関心の高まりやデジタル化により保険の申請・加入が容易になるなど新世代の保険ニーズへの対応も進んできており、2年ぶりの市場拡大が視野に入りつつある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年09月19日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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