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- 中国、「多死社会」の足音
2023年09月07日
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国連の「World Population Prospects 2022」(中位推計)によると、今後、2034年には超高齢社会に、2085年には高齢者の割合が42.2%と最大に達し、2100年には40.9%になると推計されている。高齢者数は2050年代の後半には最大4.3億人に達する。加えて、平均寿命・平均余命が延び続け、長寿化も進行することになる。
その一方で、人口の多くを占める高齢者が寿命に達することで総人口は急速に減少し続け、2100年時点で7.7億人と2021年のピーク時のおよそ半分にまで減少すると見込まれている。2100年に高齢化率は40.9%に達し、国や社会のあり様は大きく変容することになる。
中国は現在、こういった人口減少社会の入口に立っていると言えよう。今後待ち受けるのは更なる少子化、高齢化、長寿化に加えて、多死化である。年間の死亡数は現在の1000万人から、2030年には1200万人、2040年には1500万人と急増し、2061年・2062年には最大1880万人まで増加すると推計されている。
また、今後、多死社会は高齢化率の高い地域を中心に進行すると考えられる。高齢化率と死亡率には正の相関性があり、高齢化率が上昇すると死亡率も上昇する傾向がある。特に、高齢化率の高い遼寧省・黒龍江省・吉林省の東北三省の動向には注意が必要だ。
その理由は2022年の地域別の出生・死亡状況を確認すると、高齢化率の高い東北三省を中心に多死化の様相が顕著となっているからである。2022年は高齢化の進展、新型コロナウイルス禍による死亡率の上昇、更に出生数の減少など複合的な要因が考えられる。
しかし、全国平均では出生数1名に対して死亡数は1.09名であるのに対して、黒龍江省、遼寧省、吉林省はそれが2.72名、2.22名、1.94名と突出して高い[図表2]。
その一方で、人口の多くを占める高齢者が寿命に達することで総人口は急速に減少し続け、2100年時点で7.7億人と2021年のピーク時のおよそ半分にまで減少すると見込まれている。2100年に高齢化率は40.9%に達し、国や社会のあり様は大きく変容することになる。
中国は現在、こういった人口減少社会の入口に立っていると言えよう。今後待ち受けるのは更なる少子化、高齢化、長寿化に加えて、多死化である。年間の死亡数は現在の1000万人から、2030年には1200万人、2040年には1500万人と急増し、2061年・2062年には最大1880万人まで増加すると推計されている。
また、今後、多死社会は高齢化率の高い地域を中心に進行すると考えられる。高齢化率と死亡率には正の相関性があり、高齢化率が上昇すると死亡率も上昇する傾向がある。特に、高齢化率の高い遼寧省・黒龍江省・吉林省の東北三省の動向には注意が必要だ。
その理由は2022年の地域別の出生・死亡状況を確認すると、高齢化率の高い東北三省を中心に多死化の様相が顕著となっているからである。2022年は高齢化の進展、新型コロナウイルス禍による死亡率の上昇、更に出生数の減少など複合的な要因が考えられる。
しかし、全国平均では出生数1名に対して死亡数は1.09名であるのに対して、黒龍江省、遼寧省、吉林省はそれが2.72名、2.22名、1.94名と突出して高い[図表2]。
また、黒龍江省、遼寧省の自然増減率は▲5.75、▲4.96と、これは1960年の大飢饉(▲4.57/全国平均)よりも大きい状況にある。
一方、多死社会に移行したとしても高齢化率は高いレベルで維持され、現役世代が抱える負担は更に重くなると考えられる。図表3は中国の高齢者扶養率の推移であるが、ここでは中国における生産年齢人口(15-59歳・現役世代)に対して高齢者(60歳以上)の比率を示したものになる。それによると、超高齢社会への移行が推計されている2034年には高齢者扶養率が50.2%と、1名の高齢者を1.99名の現役世代で支えることになる。加えて、死亡数がピークを迎える2062年の高齢者扶養率は88.6%で、1名の高齢者を1.13名の現役世代が支えることになる。中国の社会保険制度は政治的・時代的な背景から、高齢者に多くを配慮した制度設計となっている。しかし、人口推計から、それほど遠くない将来において現行の制度を現役層のみで支えるのは難しくなる点がうかがえる。今後の多死社会における状況を視野に入れつつ、それに適応できる制度とはどのようなものなのか。特に、他地域に先行する東北三省の状況は今後の中国の縮図でもあり、重点的な検討や対策が必要となるであろう。
一方、多死社会に移行したとしても高齢化率は高いレベルで維持され、現役世代が抱える負担は更に重くなると考えられる。図表3は中国の高齢者扶養率の推移であるが、ここでは中国における生産年齢人口(15-59歳・現役世代)に対して高齢者(60歳以上)の比率を示したものになる。それによると、超高齢社会への移行が推計されている2034年には高齢者扶養率が50.2%と、1名の高齢者を1.99名の現役世代で支えることになる。加えて、死亡数がピークを迎える2062年の高齢者扶養率は88.6%で、1名の高齢者を1.13名の現役世代が支えることになる。中国の社会保険制度は政治的・時代的な背景から、高齢者に多くを配慮した制度設計となっている。しかし、人口推計から、それほど遠くない将来において現行の制度を現役層のみで支えるのは難しくなる点がうかがえる。今後の多死社会における状況を視野に入れつつ、それに適応できる制度とはどのようなものなのか。特に、他地域に先行する東北三省の状況は今後の中国の縮図でもあり、重点的な検討や対策が必要となるであろう。
(2023年09月07日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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