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生活習慣病リスクを高める量の飲酒をする人の生活習慣・生活環境~男女とも食生活と関連。男性は服薬や持病、女性は同居家族と関連

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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近年、企業等においては従業員の健康を維持・増進する取組みが盛んであるが、適量の飲酒を勧めることに特化した取組みは少なく、食習慣の見直しの一つとして適量の飲酒を啓蒙することに留まっていることが多い。生活習慣病リスクを高める量の飲酒をする人の特徴や生活習慣などの情報も少ない。
そこで、本稿では、ニッセイ基礎研究所が被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)を対象に行ったインターネット調査の結果を使って、リスクを高める量の飲酒を行っている人の生活習慣などの特徴を男女別に分析した。
1――はじめに
リスクを高める飲酒が健康に及ぼす悪影響については、依存症などのリスクだけでなく、アルコール性肝障害、膵炎等の臓器障害、高血圧、心血管障害、がん等とも深く関連することが知られている3。近年、企業等では健康経営の取組みが熱心に行われているが、2018年度から開始した日本健康会議による「健康スコアリングレポート」では飲酒に関する調査の実施は任意となっている。さらに、この「スコアリングレポート」や、経済産業省による「健康経営度調査」で、飲酒実態を調査する場合も女性の適量が男性よりも少ないことを踏まえたものにはなっておらず、男性の基準が使われている。
女性におけるリスクを高める飲酒増加の背景に、働く女性が増えたことが指摘されていることから4、本稿では、ニッセイ基礎研究所が被用者を対象に行っている調査を使って、リスクを高める飲酒をする人の生活習慣・生活環境の特徴を男女別に分析する。
1 村松容子「生活習慣病のリスクを高める量の飲酒者は男性で横ばい、女性で増加~適正飲酒に向けて、酒類にアルコール量の表記が進む。健康日本21(第三次)でも女性を中心に引き続き取り組み実施予定。」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2023年8月28日)(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/75917_ext_18_0.pdf?site=nli)
2 WHOのガイドラインでは、アルコール関連問題リスク上昇の閾値は男性で40g/日、女性で20g/日となっている。国による「健康日本21(第二次)」でも、がん、高血圧、脳出血、脂質異常症などの発症リスクが、1日平均飲酒量に伴いほぼ直線的に上昇することと、脳梗塞や虚血性心疾患については、飲酒量との関係が直線的に上昇しているとは言えないが、その場合でも男性では44g/日(日本酒2合/日)程度以上の飲酒(純アルコール摂取)、女性では22g/日(日本酒1合/日)程度以上の飲酒で、非飲酒者や機会飲酒者(たまにしか酒を飲まない者)に比べて危険性が高くなることから、摂取量の目安としてのわかりやすさを考慮して、「1日当たりの純アルコール摂取量が40g以上」、女性は「1日当たりの純アルコール摂取量が20g以上」としている。
3 厚生労働省「健康日本21(第二次)最終評価報告書」より(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html)
4 厚生労働省e-ヘルスネット「女性の飲酒と健康」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-04-003.html)
2――使用したデータと分析方法
本分析では、2023年にニッセイ基礎研究所が行った「被用者の働き方と健康に関する調査」の結果を使った。この調査は、全国の18~64歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象とするインターネット調査で、全国6地区、性別、年齢階層別(10歳ごと)の分布を、2020年の国勢調査の分布に合わせて回収している2023年調査は2023年3月に実施しており、回収数は5,747(男性3,458、女性2,289)だった。
本稿では、男性は「1日当たりの純アルコール摂取量が40g以上である(40gの目安:ビールロング缶2本、日本酒2合、焼酎グラス1杯、ワイングラス4杯弱、チューハイ缶2本程度)」に該当すると回答した場合、女性は「1日当たりの純アルコール摂取量が20g以上である(20gの目安:ビールロング缶1本、日本酒1合、焼酎グラス半分、ワイングラス2杯弱、チューハイ缶1本程度)」に該当すると回答した場合に「リスクを高める飲酒」をしているとした。
リスクを高める飲酒をしている割合を年齢群団でみると、男性が女性よりも高く、男女とも年齢が高いほど高い5。また、「被用者の働き方と健康に関する調査」で、2019年以降の推移をみると、男女とも低下傾向だった6(図表1)。
5 厚生労働省「国民生活基礎調査」や「国民健康・栄養調査」と、リスクを高める量の飲酒をしている人の割合に乖離がある。その理由として、厚生労働省の調査では、リスクを高める量の飲酒をしているかどうかを、飲酒頻度と、その際の飲酒量の組み合わせから推測しているが、本調査では「1日あたりの純アルコール摂取量(グラム)」で尋ねていることと、インターネット調査であることから国全体とは回答者の属性に偏りがある可能性があること等が考えられる。
6 国全体の長期トレンドでは、女性のリスクを高める量の飲酒者の割合は2019年までは上昇していたが、厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、2019年から2022年にかけてはリスクを高める量の飲酒者の割合は低下していた。コロナ禍で飲酒機会が減ったこと等が影響していると考えられる(詳細は、前稿「生活習慣病のリスクを高める量の飲酒者は男性で横ばい、女性で増加」の注4をご参照ください。)
リスクを高める飲酒をしているかどうかを被説明変数として、どういった要素がリスクを高める飲酒に関連しているか線形確率モデルで推計した。説明変数は、性、年齢、配偶関係、独居かどうか、仕事内容、生活習慣等、本人年収、体力の自己評価とした(図表2)。
今回の分析では、血圧を下げる薬の服用、インスリン注射、または血糖を下げる薬の服用、コレステロールや中性脂肪を下げる薬を服用のいずれかに当てはまる場合に「服薬あり」とした。脳卒中(脳出血、脳梗塞等)、心臓病(狭心症、心筋梗塞等)の治療を受けたことがある場合に「循環器系の持病あり」とした。その他の生活習慣等は、該当する場合を1とするダミー変数とした。体力の自己評価は、自分の体力について「体力がある方だ」~「体力がない方だ」の4段階で自己評価してもらい順に4~1点を配点した。
(2023年09月05日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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