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今時の専業主婦世帯のプロファイル-夫婦のいる勤労者世帯の3割へ減少、約半数が55歳以上
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
6――おわりに~多様化する世帯構造、個人の選択に中立な税制・社会保障制度の実現を
また、妻の年齢階級に注目したところ、これまで出産・育児期における仕事と家庭の両立に悩んできた若い年代ほど働く妻が増えて専業主婦が減っていること(足元では30歳前後の世帯の約4分の1が専業主婦で7割以上が共働き)、少子高齢化や未婚化の進行、男性の就業期間の延長等によって、専業主婦世帯は共働き世帯と比べて高齢化が進み、専業主婦世帯の約半数は55歳以上が占めるようになっていた。
なお、両立環境の整備が進み、就業希望を叶える妻が増えたことで、専業主婦の就業希望率は全ての年代で低下していた。一方で、未だ若いほど就業希望率は高く(30歳前後では約4分の1)、希望がありながらも求職していない理由の大半は「出産・育児のため」であり、依然として両立の困難さから就業をあきらめている女性が少なからず存在する様子も見て取れた。また、出産・育児期にキャリアが中断されることは、中高年期に仕事を得にくい状況にもつながっている様子がうかがえた。
専業主婦世帯が減り、共働き世帯が増えていることは広く認識されているだろうが、あらためてデータで見ると、専業主婦世帯は予想以上に少なく(共働き世帯の半分に満たない)、予想以上に高齢化している(約半数が子育てを終えた年代)という事実に意外な印象を受けた方も多いのではないか。
消費市場においては、世帯構造の変化や消費者の要望をきめ細かく捉えた上で商品やサービスを提供することが企業業績に直結するため、消費者のプロファイリングは丁寧に、かつ素早く実行される。
一方で、日本の税制や社会保障制度においては、所得税の配偶者控除や第3号被保険者などに見られるように、すでに少数派となっている専業主婦世帯を前提とするものが根強く存在し、現状との乖離は広がっている。また、共働き世帯とはいっても、いわゆる「106万円の壁」(一定規模以上の企業等の雇用者で社会保険料の自己負担が生じ始める収入)などに見られるように、就業希望があっても就業時間の調整をしている女性は少なくない。
また、専業主婦世帯や共働き世帯は夫婦世帯が前提だが、近年、未婚者や高齢単身者の増加によって単身世帯は総世帯の約3割を占めて増加傾向にあり、存在感を高めている(厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」)。
このような中で内閣府「男女共同参画白書 令和5年版」では、「働きたい女性が就業調整を意識しなくて済む仕組み等を構築する観点から、税制や社会保障制度等について、総合的な取組を進める」としている。すでに働き方や家族形成に対する価値観が多様化し、世帯構造も多様化している中では、個人の選択に対して中立的な税制や社会保障制度の実現に向けて、一層スピード感を持った改革が求められるようになっている。
(2023年08月22日「基礎研レポート」)
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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