- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- 新型コロナ5類移行後の消費者行動(1)買い物・食事編-シニアほど外食や飲み会、デパートでの買い物に再開の兆し
2023年07月13日
1――はじめに~新型コロナ5類移行で消費マインドは上向き、行動変容の状況は?
今年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類相当からインフルエンザと同じ5類へと引き下げられた。よって、これまでは陽性者や濃厚接触者は外出自粛要請が求められ、入院や治療は限られた医療機関でのみ行われていたが、外出自粛要請はなくなり、幅広い医療機関での対応が可能となった。
今年1月に政府が5類に見直すとの方針を決定してから消費者マインドは上向いている。内閣府「消費動向調査」によると、年明け以降、消費者態度指数(今後半年間の見通しをたずねたもの)は上昇傾向が続いている(図表1)。また、消費者態度指数を構成する5つの指標を見ると、雇用環境や資産価値、収入の増え方が高水準で推移している。行動制限がなくなることで、旅行やレジャー、外食などの外出関連の消費行動を積極的に行えることや関連産業の雇用環境改善への期待感、また、この春の賃上げ機運の高まりなどを背景に消費者マインドは明るくなっているようだ。
年代別に消費者マインドを見ると、若いほど明るい傾向がある(図表2)。若い世代ほど将来の経済不安が強いと見られる中では意外なようだが、過去の統計を振り返っても、コロナ禍で初めて緊急事態宣言が発出された2020年4・5月を除けば、おおむねいつの時点でも若い消費者ほど目先の見通しは明るい傾向がある。いつでも社会環境が改善されると動き出すのが早いのはフットワークの軽い若い消費者であり、消費の回復は若者からということなのかもしれない。
今年1月に政府が5類に見直すとの方針を決定してから消費者マインドは上向いている。内閣府「消費動向調査」によると、年明け以降、消費者態度指数(今後半年間の見通しをたずねたもの)は上昇傾向が続いている(図表1)。また、消費者態度指数を構成する5つの指標を見ると、雇用環境や資産価値、収入の増え方が高水準で推移している。行動制限がなくなることで、旅行やレジャー、外食などの外出関連の消費行動を積極的に行えることや関連産業の雇用環境改善への期待感、また、この春の賃上げ機運の高まりなどを背景に消費者マインドは明るくなっているようだ。
年代別に消費者マインドを見ると、若いほど明るい傾向がある(図表2)。若い世代ほど将来の経済不安が強いと見られる中では意外なようだが、過去の統計を振り返っても、コロナ禍で初めて緊急事態宣言が発出された2020年4・5月を除けば、おおむねいつの時点でも若い消費者ほど目先の見通しは明るい傾向がある。いつでも社会環境が改善されると動き出すのが早いのはフットワークの軽い若い消費者であり、消費の回復は若者からということなのかもしれない。
さて、コロナ禍で外出が自粛され、非接触志向が高まる中で、外出関連の消費行動が大幅に減る一方、ネットショッピングや動画配信サービスの視聴といった巣ごもり消費が活発化した。当社ではこの3年余りの間、3ヶ月置きに「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」を実施し、コロナ禍における行動変容の状況を報告してきた1。当調査は5類移行に伴って終了したが、その後の消費者の状況について興味を持つ方も多いだろう。よって、本稿では別の枠組みで追調査2をした結果を報告する。なお、2020年6月の調査開始以降、各調査時点におけるコロナ禍前(2020年1月頃)と比べた行動の増減をたずねていた。しかし、コロナ禍が長引くとともに、コロナ禍前との比較が回答者にとって容易ではなくなってきたと考え、2022年6月調査から、行動の増減に加えて、行動の頻度もあわせてたずねるようにしている。本稿では2022年6月以降の各種行動の頻度の変化について報告する。
1 ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査(第1回~第12回)」調査結果概要など。
2 ニッセイ基礎研究所「生活に関する調査」、調査時期は2023年6月12日~15日、調査対象は20~74歳、インターネット調査、有効回答数2,583、株式会社マクロミルのモニターを利用。
1 ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査(第1回~第12回)」調査結果概要など。
2 ニッセイ基礎研究所「生活に関する調査」、調査時期は2023年6月12日~15日、調査対象は20~74歳、インターネット調査、有効回答数2,583、株式会社マクロミルのモニターを利用。
2――買い物手段の変化~シニアでデパートなど店舗もネット利用も増加、若者は買い物よりコト消費へ?
また、「デパートやショッピングモール」については、利用頻度のボリュームゾーンである「2か月に1回以下」はおおむね変わらないが、次いで多い「月1~3回」がやや増えることで(同17.5%→同20.1%で+2.6%pt)、利用者(全体から「利用していない」を差し引いた割合)もやや増えている(同83.1%→同85.8%で+2.7%pt)。
一方、コロナ禍で利用が伸びた「ネットショッピング」については、利用頻度のボリュームゾーンである「週1~2回」はおおむね変わらないが、同様に多い「月1~3回」がやや増えることで(同38.0%→同40.8%で+2.8%pt)、「週1~2回」以上の比較的利用頻度の高い層がやや減っている(同13.2%→同10.7%で▲2.5%pt)。ただし、利用者はわずかに増えている(同91.2%→同92.4%で+1.2%pt)。
また、「フリマアプリ」については、コロナ禍でネットショッピング手段の1つとして利用が堅調に伸びてきたが、足元でも引き続き伸長している(同38.8%→同46.2%で+7.4%pt)。ただし、ネットショッピングと同様、比較的利用頻度の高い層はやや減っている(「週1~2回」以上は同14.2%→同12.2%で▲2.0%pt)。なお、「2カ月に1回以下」の低頻度層が大幅に増えているが(同24.6%→同34.0%で+9.4%pt)、「フリマアプリ」は普及途上段階にあるため、店舗の利用控えの反動というよりも、使い始めた利用者が増えている影響と見る方が妥当だろう。
以上より、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、行動制限がなくなったことで、著しい変化ではないにしろ、消費者は1年前と比べて店舗の利用にやや積極的になっている。一方、その反動で「ネットショッピング」の利用はやや控えられているようだが、消費者全体には十分に普及していないことなどから利用者自体はわずかながら増えている。また、普及途上段階にある「フリマアプリ」については、消費者が外へ向かうようになる中でも、利用が堅調に伸びている様子が見て取れる。
一方、コロナ禍で利用が伸びた「ネットショッピング」については、利用頻度のボリュームゾーンである「週1~2回」はおおむね変わらないが、同様に多い「月1~3回」がやや増えることで(同38.0%→同40.8%で+2.8%pt)、「週1~2回」以上の比較的利用頻度の高い層がやや減っている(同13.2%→同10.7%で▲2.5%pt)。ただし、利用者はわずかに増えている(同91.2%→同92.4%で+1.2%pt)。
また、「フリマアプリ」については、コロナ禍でネットショッピング手段の1つとして利用が堅調に伸びてきたが、足元でも引き続き伸長している(同38.8%→同46.2%で+7.4%pt)。ただし、ネットショッピングと同様、比較的利用頻度の高い層はやや減っている(「週1~2回」以上は同14.2%→同12.2%で▲2.0%pt)。なお、「2カ月に1回以下」の低頻度層が大幅に増えているが(同24.6%→同34.0%で+9.4%pt)、「フリマアプリ」は普及途上段階にあるため、店舗の利用控えの反動というよりも、使い始めた利用者が増えている影響と見る方が妥当だろう。
以上より、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、行動制限がなくなったことで、著しい変化ではないにしろ、消費者は1年前と比べて店舗の利用にやや積極的になっている。一方、その反動で「ネットショッピング」の利用はやや控えられているようだが、消費者全体には十分に普及していないことなどから利用者自体はわずかながら増えている。また、普及途上段階にある「フリマアプリ」については、消費者が外へ向かうようになる中でも、利用が堅調に伸びている様子が見て取れる。
2|年代別の状況~シニアでは店舗もネットショッピングの利用も増加、若者は買い物以外のコト消費へ?
年代別に見ると、「スーパー」については、30歳代や50歳代、60歳代では全体と同様、高頻度層がやや増えている(30歳代は2022年6月25.0%→2023年6月29.7%で+4.7%pt、50歳代は同31.0%→同34.5%で+3.5%pt、60歳代は同41.7%→同44.4%で+2.7%pt)(図表4(a))。
また、「デパートやショッピングモール」については、30歳代以上では利用頻度が上がるとともに(「月1~3回」以上がやや増加)、利用者が増える傾向が見られ、高齢層で顕著である(利用者は60歳代は同83.3%→同89.2%で+5.9%pt、70~74歳は同79.1%→同87.0%で+7.9%pt)(図表4(b))。なお、20歳代では利用者はやや減っているが(同81.1%→同78.8%で▲2.3%pt)、「月1~3回」以上はやや増えている(同28.2%→同31.1%で+2.9%pt)。
年代別に見ると、「スーパー」については、30歳代や50歳代、60歳代では全体と同様、高頻度層がやや増えている(30歳代は2022年6月25.0%→2023年6月29.7%で+4.7%pt、50歳代は同31.0%→同34.5%で+3.5%pt、60歳代は同41.7%→同44.4%で+2.7%pt)(図表4(a))。
また、「デパートやショッピングモール」については、30歳代以上では利用頻度が上がるとともに(「月1~3回」以上がやや増加)、利用者が増える傾向が見られ、高齢層で顕著である(利用者は60歳代は同83.3%→同89.2%で+5.9%pt、70~74歳は同79.1%→同87.0%で+7.9%pt)(図表4(b))。なお、20歳代では利用者はやや減っているが(同81.1%→同78.8%で▲2.3%pt)、「月1~3回」以上はやや増えている(同28.2%→同31.1%で+2.9%pt)。
一方、「ネットショッピング」については、全体的に利用頻度が下がっており、若者ほど顕著である(「週1~2回」以上が20歳代は同16.1%→同9.5%で▲6.6%pt、30歳代は同16.1%→同12.4%で▲3.7%pt)。なお、20歳代では利用者もやや減っている(同90.1%→同86.6%で▲3.5%pt)。一方、高齢層では利用者は増えている(60歳代は同90.7%→同93.7%で+3.0%pt、70~74歳は同85.4%→同91.3%で+5.9%pt)。
「フリマアプリ」についても、全体的に利用頻度が下がっており、従来から利用者の多い若者ほど、その傾向が強い(「週1~2回」以下が20歳代は同12.1%→同8.8%で▲3.3%pt、30歳代は同9.7%→同7.7%で▲2.0%pt)。また、「ネットショッピング」と同様、20歳代では利用者もやや減っている(同58.3%→同54.9%で▲3.4%pt)。一方、30歳代以上では利用者が増え、特に40~60歳代で顕著であり、それぞれ約1割増えている(40歳代で同40.7%→同50.4%で+9.7%pt、50歳代で同35.7%→同46.6%で+10.9%pt、60歳代で同26.0%→同37.9%で+11.9%pt)。
つまり、5類変更後、感染による重篤化リスクが高いために、これまで外出控え傾向の強かったシニア層を中心にリアル店舗での買い物に積極的に向かう傾向が見られるとともに、シニアではネットショッピングやフリマアプリの普及が途上段階にあるために、デジタル手段の利用も伸びている。一方、若者ではデジタル手段の利用はやや控える傾向あるものの、必ずしもリアル店舗を積極的に利用するようになっているわけではない。よって、例えば、レジャーやイベント、ライブ、旅行などの外出を伴うコト消費へ向かっていることなどが考えられる。
「フリマアプリ」についても、全体的に利用頻度が下がっており、従来から利用者の多い若者ほど、その傾向が強い(「週1~2回」以下が20歳代は同12.1%→同8.8%で▲3.3%pt、30歳代は同9.7%→同7.7%で▲2.0%pt)。また、「ネットショッピング」と同様、20歳代では利用者もやや減っている(同58.3%→同54.9%で▲3.4%pt)。一方、30歳代以上では利用者が増え、特に40~60歳代で顕著であり、それぞれ約1割増えている(40歳代で同40.7%→同50.4%で+9.7%pt、50歳代で同35.7%→同46.6%で+10.9%pt、60歳代で同26.0%→同37.9%で+11.9%pt)。
つまり、5類変更後、感染による重篤化リスクが高いために、これまで外出控え傾向の強かったシニア層を中心にリアル店舗での買い物に積極的に向かう傾向が見られるとともに、シニアではネットショッピングやフリマアプリの普及が途上段階にあるために、デジタル手段の利用も伸びている。一方、若者ではデジタル手段の利用はやや控える傾向あるものの、必ずしもリアル店舗を積極的に利用するようになっているわけではない。よって、例えば、レジャーやイベント、ライブ、旅行などの外出を伴うコト消費へ向かっていることなどが考えられる。
(2023年07月13日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/09/26 | 物価と体感-10%以上乖離、値上げに敏感な消費者、価格転嫁は可能か | 久我 尚子 | 基礎研レター |
2024/09/19 | 家計消費の動向(~2024年7月)-物価高で食料や日用品を抑え、娯楽をやや優先だが温度差も | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/09/10 | Z世代の消費志向とサステナブル意識-経済・社会的背景から見た4つの特徴 | 久我 尚子 | 研究員の眼 |
2024/08/30 | 子育て世帯の定額減税に対する意識-控除額の多い多子世帯で認知度高、使途は生活費の補填、貯蓄 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年10月03日
暑さ指数(WBGT)と熱中症による搬送者数の関係 -
2024年10月03日
公的年金の制度見直しは一日にしてならず -
2024年10月03日
市場参加者の国債保有余力に関する論点 -
2024年10月03日
先行き不透明感が晴れない中国経済 -
2024年10月03日
市場構造の見直しと企業価値向上施策による株式市場の活性化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【新型コロナ5類移行後の消費者行動(1)買い物・食事編-シニアほど外食や飲み会、デパートでの買い物に再開の兆し】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
新型コロナ5類移行後の消費者行動(1)買い物・食事編-シニアほど外食や飲み会、デパートでの買い物に再開の兆しのレポート Topへ