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- 身近に潜む子どもの事故(1)-2021年日本では「不慮の事故」による死亡者数が3万8千人、男性は要注意!0歳~19歳の死因4位以内に「不慮の事故」-
身近に潜む子どもの事故(1)-2021年日本では「不慮の事故」による死亡者数が3万8千人、男性は要注意!0歳~19歳の死因4位以内に「不慮の事故」-
生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
1――はじめに
実は、子どもの死亡原因の上位は「不慮の事故」が占めており、子どもの発達段階が大きな影響を与える。
子どもの事故死亡リスクを上げるも下げるも、その環境を整える保護者に責務が生じると言って差し支えない。子どもの発達段階を知識として習得し、その予防策を講じることは重要な保護者の役目なのである。
そこで、本稿では、保護者や子どもを取り巻く大人たちに事故予防の重要性を認識してもらうことを目的に、厚生労働省の人口動態統計データを用いて、日本の子どもの不慮の事故の特徴を捉え概観する。
尚、第2稿ではCDCが公表する傷病レポートより、米国における不慮の事故の統計データの特徴を概観し、第3稿では「不慮の事故(傷害)」に関する年齢階級別の詳細を分析した日米比較の結果を示す予定である。
1 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 母子保健課「「子どもの事故に関する母子健康手帳への記載について/子どもの事故予防に関する取り組みについて」 (平成24年6月1日)
https://www.cao.go.jp/consumer/history/02/kabusoshiki/anzen/doc/013_120601_shiryou4-1.pdf
2――厚生労働省人口動態統計から捉える、日本の「不慮の事故」の特徴
不慮の事故による死亡者数は、1950年には32,850人、1995年には45,323人とピークを迎え、減少したのちほぼ横ばいに推移し、直近の2021年には38,355人であった。
1950年から2021年までの71年間で5,505人の微増、1995年のピーク時から2021年までの26年間で6,968人の微増という結果となっている。
また、男女別の年齢調整死亡率(人口10万人当たり)2では、1950年に女性が29.6人、男性が76.6人であり、男女ともピークである1970年に、女性44.8人、男性105.3人、直近の2021年には、女性17.8人、男性40.2人であった。1950年から2021年までの71年間で女性は11.8人ptの減少、男性は36.4人ptの減少、1970年のピーク時から2021年までの51年間で、女性は27人ptの減少、男性は65.1人ptの減少となっている。
全体的に女性よりも男性の不慮の事故による死亡率が高く、その傾向は2021年現在でも同様に認められている。
男性の脳機能の構造において、危険な行動を選択するリスクが高いことを認識することは、不慮の事故の予防回避においても重要であろう。
2 年齢調整死亡率は、人口構成の異なる集団間での死亡率を比較するために、年齢階級別死亡率を一定の基準人口(平成27年モデル人口)にあてはめて算出した指標である。今回用いた死因別の年齢調整死亡率は人口10万人当たり何人死亡で表記される。令和3年人口動態統計「調査の概要」参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei21/dl/01_cho.pdf
次に、不慮の事故による死亡者数について、0歳から19歳までの子どもの年齢層を含む年次別の死亡数データを抽出し、積み上げ棒グラフにて図表2へ示した。
その結果、1950年には、0歳から4歳までの死亡者数が9,604人、5歳から9歳までが3,321人、10歳から14歳が1,176人、15歳から19歳が1,904人、計16,005人であった。
50年後の2000年には、0歳から4歳までの死亡者数が525人、5歳から9歳までが242人、10歳から14歳が166人、15歳から19歳が1052人、計1,985人へ減少していた。
さらに、直近の2021年では、0歳から4歳までの死亡者数が111人、5歳から9歳までが45人、10歳から14歳が52人、15歳から19歳が162人、計370人と大幅に減少している。
全体的に、0歳から19歳までの子どもにおける不慮の事故を死因とする死亡者総数は大幅に減少をしていることが明らかとなった。
3 消費者庁「平成30年版消費者白書/ 第1部第2章第1節「子どもの事故を社会全体で防ぐ」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2018/white_paper_124.html#m02
続いて、0歳から19歳までの子どもの年齢区分における死因別順位を整理したものを図表3へ示した。
その結果、2021年時点における「不慮の事故」の死因順位をみると、0歳では第4位、1歳から4歳では第3位、5歳から9歳では第2位、10歳から14歳では第3位、15歳から19歳では第2位という結果となった。
全年齢の死因順位では、トップ4に不慮の事故は入っておらず、0歳から19歳の子どもにおける死因として特徴的であるということが分かる。
上記(2-2|)で不慮の事故による子どもの死亡者数は大幅に減少していることが明らかとなったが、現に死亡している者の死因において、不慮の事故はトップ4に留まっている。
特に、未就学児などの、保護者や周りの環境に依存する形で生存している子どもにおいて、自身だけの注意で事故リスクを回避することは難しく、やはり周りの環境を整えることや安全に徹底を担う責務が大人にあると言える。
3――まとめ
その結果、不慮の事故による(人口10万対)死亡者数は、1950年の32,850人から71年経過した2021年には38,355人と5,505人の微増、男女別の年齢調整死亡率(人口10万当たり)では、1950年に女性が29.6人、男性が76.6人、直近の2021年には、女性17.8人、男性40.2人と、71年経過して女性は11.8人ptの減少、男性は36.4人ptの減少であった。
全体的に女性よりも男性の不慮の事故による年齢調整死亡率が高く、生物学的な脳機能の構造上の違いから男性は特に不慮の事故に注意が必要であることが示唆された。
また、0歳から19歳までの子どもの年齢層を含む年次別の死亡数データを1950年と2021年で比較分析すると、0歳-4歳では、9,604人から111人へ、5歳-9歳は3,321人から45人へ、10-14歳では1,176人から52人へ、15-19歳では1,904人から162人へ、全ての年齢階級において大幅な減少が認められた。
しかし、年齢区分別の不慮の事故による死因順位をみると、0歳では第4位、1歳-4歳では第3位、5歳-9歳では第2位、10歳-14歳では第3位、15歳-19歳では第2位と、全ての年齢区分において、不慮の事故は上位を占める死因となっていることが明らかとなった。
これらの結果より、子どもの発達段階や社会活動の拡大に伴う不慮の事故のリスクに留意する必要があることが示唆された。
第2稿では、CDCが公表する傷病統計レポートから、米国の不慮の事故(傷病)による特徴を分析する予定である。
03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市 入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了
(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
2019年~大阪市立大学大学院 看護学研究科 研究員(現:大阪公立大学 研究員)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
(2023年06月06日「基礎研レポート」)
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