2023年05月24日

欧州大手保険Gの2022年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-

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Allianz
(1)全体の状況
2022年の新契約価値(NBVは、2021年に比べてほぼ横ばいの25.26億ユーロとなった。2021年には2つの大型の企業契約による影響があり、これを除けば、1)元本保証が100%未満の商品へのシフトの継続により、一般勘定貯蓄・年金の新契約シェアが10%に低下する等の商品ミックスが改善したこと、2)フランスで全ての商品のマージンが改善し、22%増加したこと、等により、8%の増加になった。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、商品ミックスの改善と金利の上昇によって、2021年に比べて0.6%ポイント上昇して、3.8%となった。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2021年に比べて1.5%ポイント上昇して、27.8%となった。

また、新契約保険料現在価値(PVNBPは、主としてドイツにおける割引率の上昇と100%未満の元本保証の一時払保険料契約の減少、2021年の2件の大型の企業契約の存在(約63憶ユーロ)、イタリアでのユニットリンク売上高の減少等により、15.7%減少して696.16億ユーロとなった。

新契約年換算保険料(APEは、5.6%減少して90.76億ユーロとなった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約保険料現在価値(PVNBP)の構成比は、保証付貯蓄・年金が9.6%(2021年は12.2%、以下同様)、高資本効率商品が47.6%(41.9%)、ユニットリンクが24.4%(25.2%)、保障&医療が18.4%(20.8%)、となっている。これにより、(保証付貯蓄・年金以外の)高資本効率商品等の会社の優先商品のシェアは、2017年の76%から2022年の90%に上昇した。

一方で、2022年の新契約マージン(対PVNBP)は、全ての商品タイプで上昇したが、特に高資本効率商品では3.2%から3.9%に、保障・医療では5.4%から6.0%に上昇した。
新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りで、保有ベースでは、保証付貯蓄・年金の構成比が低下し、高資本効率商品の構成比が上昇している。
生命保険事業の営業利益の商品タイプ別内訳
(3)新契約マージン(対PVNBP)等の地域別状況
新契約価値(NBV)、新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約マージンは、アジア・太平洋、中東欧で高く、フランス、イタリア等では相対的に低くなっている。2020年は2019年と比較して、欧米各国において主として低金利の影響を受けて低下し、2021年には2020年と比較して多くの国で水準を回復ないしは上昇させていたが、2022年には金利の上昇の影響により、アジア・太平洋を除く各国・地域で上昇している。特に、ドイツの生命保険で2.9%から3.9%に1.0%ポイント、スイスで1.7%から3.2%に1.5%ポイント、中東欧で4.8%から7.2%に2.4%ポイントと、大きく上昇している。なお、Aviva Polandの買収により、新契約価値は53百万ユーロ増加している。
新契約マージンの地域別状況
3|Generali
(1)全体の状況
2022年の新契約価値(NBVは、2021年に比べて7.2%増加(比較ベースでは、4.2%増加、以下同様)して、24.78億ユーロとなった。これは、販売量が減少したにも関わらず、収益性が改善されたことによる。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、金利の大幅な上昇、最も収益性の高い保障とユニットリンク型の商品ミックスの再調整及び新商品機能の継続的な改善により、2021年に比べて0.83%ポイント上昇(0.86%ポイント上昇)して、5.35%となった。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、5.5%ポイント上昇(6.0%ポイント上昇)して、51.7%となった。

2021年に比べて、新契約保険料現在価値(PVNBP)は、9.5%減少(12.6%減少)して463.41億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APE)は4.2%減少(7.9%減少)して47.98億ユーロとなった。これらの減少は主に新契約年間保険料の減少(▲10.8%)によるものであり、PVNBPについては、2022 年以降の金利上昇に伴う割引効果の増加によってさらに減少率が増幅された形になっている。。

なお、新契約IRR(内部収益率)は、3.8%ポイント増加して28.1%となった。これは、商品ミックスの改善、その計算の基礎となる一般的に高いリアルワールドの経済前提及び初年度経費負担の軽減による。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約の商品タイプ別、地域別の構成比
Generaliは、欧州において金利低下が進む中で、イタリアやドイツを中心に、保証利率の引き下げに加えて、無保証等の低資本集約商品のウェイトを高めてきている。

新契約の商品タイプ別、地域別の構成比については、以下の図表の通りとなっている。
グループ全体での商品タイプ別の内訳は、貯蓄が38%(2021年は41%、以下同様)、保障が25%(25%)、ユニットリンクが36%(34%)となり、2021年に比べて貯蓄のウェイトが低下し、ユニットリンクのウェイトが増加している。

地域別に見た場合、イタリアでは、貯蓄が61%と高い構成比で、ユニットリンクが33%となっているのに対して、保障はわずか6%となっている。一方で、中東欧では、保障が59%と高くなっており、ユニットリンクが31%であるのに対して、貯蓄は11%となっている。
新契約APEの地域別構成比及び地域毎のPVNBPによる商品タイプ別構成比
(3)新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
新契約保険料現在価値(PVNBP)、新契約価値(NBV)及びその比率としての新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約価値(NBV)については、貯蓄が大きく進展したが、保障とユニットリンクはほぼ横ばいだった。

新契約マージン(対PVNBP)については、保障が8.46%と高く、ユニットリンクが4.92%で続き、貯蓄は3.70%となっている。2021年との比較では、全ての商品タイプで上昇した。
PVNBP、NBV及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
(4)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンとIRR(内部収益率)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約マージン(対PVNBP)は、イタリアや(構成比は低いものの)中東欧が高くなっている。一方で、IRRは、フランスやドイツで高くなっている。
新契約マージン等の地域別状況
(参考)元受保険料の商品タイプ別内訳
元受保険料の商品タイプ別内訳は、保有ベースで、貯蓄・年金の構成比が2021年から5割を下回っているが、2022年はさらに低下した。
生命保険事業の元受保険料(Gross direct premiums)の商品タイプ別内訳
なお、低資本商品の責任準備金の比率は2018年の56.7%、2019年の60.5%、2020年の62.7%、2021年の67.7%に対して、2022年はさらに上昇して67.8%となった。
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中村 亮一

研究・専門分野

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【欧州大手保険Gの2022年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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