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外国人人口や外国人比率は、前回ベースの約2倍に増加する見込み-新しい将来推計人口を読む(4) 外国人人口や外国人比率への影響

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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1 ―― 本稿の問題意識:複雑な将来推計人口を読み解く
本稿では、上記のうち、5月8日の社会保障審議会年金部会でも話題になり、今回の推計で最大の特徴とも言える外国人の入国超過、すなわち海外からの人口流入に着目し、前回と比べて仮定が倍増した背景と、仮定の変化に伴う外国人人口や外国人比率への影響を確認する。
2 ―― 推計の仮定と外国人の出入国の状況:長期的に流入増の傾向だが、今回は現状横ばいと仮定
別稿2で確認したように、今回の推計では前回と比べて海外からの人口流入(外国人の入国超過数)が倍増すると仮定された。今回の仮定は、直近5年間(2016~2020年)のうちコロナ禍の影響を受けた2020年を除いた外国人入国超過数の平均を求め、その値を2022~2040年の入国超過数の総数と設定している(2021年は実績値に基づく値を利用)。前回(2017年)や前々回(2012年)の推計では推計の起点から20年目までは過去の傾向を踏まえて少しずつ増加していたのに対し、これが一定値に据え置かれたのが今回の特徴である(図表1)。
2 少子化と長寿化については「新しい将来推計人口を読む(1) 少子化と長寿化の見通し」で、海外からの人口流入の設定方法のや総数(日本人と外国人の合計)に与える影響については「新しい将来推計人口を読む(2) 海外からの人口流入の影響」で、総人口や年齢構成については「新しい将来推計人口を読む(3) 総人口や年齢構成への影響」で確認した。併せて参照されたい。
前述した図表1の外国人の入国超過数の実績を見ると、2013年から急激に(一時的に)増加したように見える。しかし、2010年前後の出国超過や低水準の入国超過は2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災による一時的な変動と考えられる。この部分をならして見れば、コロナ禍の直前まで長期的には外国人の入国超過が増加する傾向を読み取れる。
また、外国人の入国超過数の背景にある入国者数と出国者数を見ると、両者ともコロナ禍直前まで増加基調にあり、特に2015年以降の増加が著しい(図表3)。また、入国者数に対する入国超過数の比率を見ると、極端な年や出国超過の年を除けば、概ね3~5%の間で推移している(図表4)。今後の状況について予断は禁物だが、入国者数がコロナ禍前のペースで上昇を続ければ、それに連動して入国超過数が増加していくことも考えられる。
このような潜在的な増加の可能性を考えれば、当面の20年間は近年の平均値で横ばいとした今回の仮定は、ある意味で控えめな設定、もしくは潜在的な上振れの可能性とコロナ禍で直面した下振れの可能性の間を取った設定、と考えることもできるだろう。
3 ―― 外国人人口や外国人比率への影響:人口は一定程度でピークを迎えるが、比率は上昇継続
今回の推計における海外からの人口流入(外国人の入国超過数)の仮定は、正式な推計(基本推計)では前回までと同様に1とおりに絞られているが、条件付推計として、外国人の入国超過数の仮定を変えた8とおりの推計が公開されている3。また、諸外国では、米国と英国の仮定は1とおりだが、ドイツ、カナダ、オーストラリア、フランスは高中低の3とおりの仮定を設定している4。
そこで本節は、今回の正式な推計に加え、条件付推計として公開されている8とおりのうち、前回推計の仮定に相当する年間6.9万人のパターン(以下では流入据置と呼ぶ)と、今回と前回の仮定の差(16万人-7万人=9万人)の分だけ今回の仮定(16万人)より上振れした場合に相当する年間25万人のパターン(以下では流入25万人と呼ぶ)をあわせた3とおりの推計について、外国人人口と外国人比率(日本人5と外国人の合計に占める外国人の比率)を見ていく6。
3 8とおりは、2040年の外国人の入国超過数を、0万人、5万人、6.9万人、10万人、25万人、50万人、75万人、100万人、と仮定している。外国人の入国超過数の仮定を変えた条件付推計は前回も公開されていたが、前回推計の仮定に相当するパターンが含まれているのが今回の特徴である。
4 社会保障審議会人口部会(2022.10.31)資料p.50。なお、自国民と外国人を区別していない国もある。
5 将来推計人口における日本人は、日本国籍を有する者を指す。
6 出生と死亡の仮定は中位である。外国人の入国超過数の仮定を変えると、推計期間中に外国人女性から生まれる子の一部が日本人として集計される影響で、日本人人口にも若干の影響が及ぶ。複雑になるため図には日本人人口を記載しなかったが、日本人人口と外国人人口の合計には日本人人口への影響分も含まれている。なお、外国人女性から生まれる子のうち日本人として集計される割合は、これまでの推計では近年の年齢別の平均(平滑化後)が使われた。今回の推計でも同様と考えられるが、詳細は後日公開される解説に記載されると思われる。
なお、本稿では、年金の将来見通しが約100年後までの人口を考慮して作成されることを考慮して、2070年までの基本推計の結果に、2071年以降の出生率や死亡率などを一定と仮定した長期参考推計の結果を結合して見ていく。
(2023年05月18日「基礎研レポート」)

03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
中嶋 邦夫のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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